goo blog サービス終了のお知らせ 

ものぐさ日記

ひとり遊びが好きな中年童女の日常

偉大なるムガル帝国

2008年11月09日 | 映画
 銀座のエルメスのル・ステュディオで「偉大なるムガル帝国 MUGHAL-E -AZAM を見てきました。タダの上に、キャンデーまで下さるなんて、エルメスって太っ腹!

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 ムガル帝国3代目の皇帝、アクバル(プリトヴィーラージ・カプール)は望むものはすべて手に入れ、領土も拡大してきたが、ただひとつ、跡継ぎに恵まれなかった。アクバルは、灼熱の砂漠を裸足で歩き、神に願い、とうとう待望の息子サリームを得る。しかし、後宮で甘やかされたサリームは、まだ年若いうちから酒におぼれるような自堕落な生活を送るようになる。サリームの将来を危ぶんだアクバルは、母親からサリームを引き離し、戦場で、武将として鍛える。十数年後、りっぱな武将に成長したサリーム(ディリープ・クマール)は、ようやく王宮に戻ることを許される。

 サリーム帰還を祝い、宮廷では盛大な祝宴が催される。そこで見事な枚を踊った女奴隷は、アクバルから、「アナールカリー(ザクロの蕾)」という名前を下賜される。アナールカリー(マドゥバーラー)の美しさに見とれるサリームと、そのサリームの熱い眼差しにときめくアナールカリー。ふたりは、身分の差を飛び越え、恋に落ちた。

 優秀な武将になったはずのサリームは、アナールカリーとの濃いに夢中で、すっかり職務を放棄してしまう。皇帝アクバルは、原因がアナールカリーとの恋にあると気づき、怒り狂い、アナールカリーを牢獄に閉じこめてしまう。牢獄から出たければ、サリームに対する恋心は全て嘘だったというように強要されたアナールカリーは、いったんは了承するが、別れる前に踊った舞で、「恋は罪じゃない。盗みを働いたさけでもないのに、恐れることはない」と歌い、自分の心を明かし、再び牢獄に戻されてしまう。

 二人を引き離そうとする皇帝に、このままでは自立することさえ難しいと思ったサリームは、反旗を翻す。親子であるアクバルとサリームの間で、剣を交える闘いが始まった。

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


 ムガル帝国は、1526年から1858年まで続いたインドのイスラム王朝です。始祖のバーブルが、インド亜大陸(ヒンドゥスターン)に住む原住民から見て、「モンゴルの血を引く王」と認識されていたことに由来します。日本の江戸時代(1603~1867)とほぼ同じ時期で、インドでの時代劇というと、神話を別にすれば、ムガル帝国時代のものが圧倒的に多いような気がします。

 我々が、家康や家光、吉宗、綱吉、慶喜を時代劇のエピソードを通じてイメージするように、アクバルやサリーム(のちの4代皇帝ジャハーンギール)や、その息子でタージマハルを建立したシャージャハーン、その息子で、シャージャハーンを幽閉した6代皇帝アウラングゼーブ、アウラングゼーブと戦って破れた兄のダーラー・シーコーに関するエピソードは庶民の間で知られています。

 映画を見ていても、
  ・ムスリムであるのに、他宗教にも寛大で名君のアクバル
  ・ムスリムのアクバルに嫁いだヒンドゥーの姫、ジョードバーイ(アーグラー近郊のファテープル・シークリー城の中に、「ジョードバーイ殿」という建物が残っています)。
  ・ジョードバーイがアクバルと結婚するときの条件として、ヒンドゥーを棄教しないことと、宮殿の一角にクリシュナ寺院を造ることを出した
  ・跡継ぎの誕生を祝って建造したファテープル・シークリーだが、水の確保が難しく、わずか10数年でアーグラーに遷都した
  ・アクバルは類まれなき名君だったが、文字は読めなかった
  ・アクバルがあれほど望んだ跡継ぎのジャハーンギール(サリーム)は、酒と麻薬に溺れる無能な王で、王妃となったヌール・ジャハーンの一族に政治を任せていた

 …などなどのエピソードが見えてきたり、思い出されます。ボリウッド映画でも名作という評価を得ている映画だそうですが、ストーリーは時代劇だし、台詞もムガル帝国風の?重々しいウルドゥーだし、娯楽映画とは言いにくい。

 価値があるのは、その制作経過。撮影が最初に始まったのは、1944年ですが、第二次世界大戦により中断し、1951年に再開されました。当初は白黒で撮影されましたが、1957年にテクニカルカラーの技術が入ってきて、まず歌1曲分をカレーで撮影。その後1959年にフィルム3巻分をカラーで撮影。資金がたりなくて、そのままになっていましたが、2004年にカラー着色されたそうです。当然、莫大な費用がかかったと思われますが、そのかいがあって、映像は非常にロマンチックです。特に、鏡やガラスに反射して、無数のアナールカリーが衣装の裾を広げながら踊るシーンや、ジョードバーイの侍女とアナールカリーが、それぞれのチームに分かれ、詩を競うシーンなどは、幻想的とも言えます。

 「栄光のムガル帝国 MUGHAL-E-AZAM 」の「E-AZAM」は、パキスタン建国の父、ジンナーの異称、「QAID-E-AZAM」(偉大な指導者)の「E-AZAM」と同じで、「偉大な」というアラビア語なんでしょうね?アクバルの妻(のひとり)ジョードバーイは、ヒンドゥー教徒なので、ジョードバーイのシンドゥール(夫が生存している妻の証である、髪の分け目の赤い粉)を、アクバルがぬぐいながら、「夫か息子がどちらかを選べ」と迫るシーンなどもありました。やっぱり史実とは異なるにしても、時代劇って見所がたくさんあって、おもしろいかも…。日本でも、あとひとつきほどすると、忠臣蔵の季節です。

 アクバルとジョードバーイについては、最近、「JODHAA AKBAR」という映画ができて話題です。アイシュワリヤー・ラーイが、ジョーダー(ジョードバーイ?)で、リティック・ローシャンがアクバルだとか。

 「栄光のムガル帝国」は、エルメスのル・ステュディオで、12月20日までの毎週土曜日に公開中。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
エルメス行ってみたい (ラビラビ)
2008-11-12 11:23:31
「MUGHAL-E-AZAM」は198分と充分長いですが、「JODHAA AKBAR」はその上をいく209分。DVDは本編2枚とおまけ1枚の3枚組で、うちの大関は途中でギブアップして寝てました~。私は今年の大晦日に、大河ドラマの総集編を見る気分で鑑賞したいと思っております。アイシュ演じるラージプートの姫君の衣装が豪華絢爛のようで、楽しみです。歴史ものの映画って、ファッションとか調度品とかも見どころですよね。
返信する
3時間半! (とーこ)
2008-11-12 14:29:23
ラビラビさん

209分!3時間半ですか!
ジョーダーは、ジョードーバーイのことだと思いますが、このお姫さまの実家は、アンベール城なんでしょうか?アーグラー城は山城じゃないはずなのに、「偉大なるムガル帝国」の中で、象のタクシーで上り下りする、アンベール城の周辺のような映像が出てきました。

大晦日、ゆっくりできるといいですね~。
返信する

コメントを投稿