ものぐさ日記

ひとり遊びが好きな中年童女の日常

なくなることば

2009年06月02日 | 日本語・ことば
 朝日新聞に「生きている遺産」という企画記事があります。きのうは「言葉よ、よみがえれ」というシリーズの第1回目の「30歳、一人で伝える言語」で、リボニア語(リーブ語)の最後の話者、ユルギ・ステルテさんを取りあげていました。

 リボニア語というのは、聞いたこともありませんでしたが、ラトビアのバルト海で話されていたことばだそうです。ソ連支配下で、リボニア語は弾圧を受け、ラトビア語を話すように強制されたそうで、ユルギ・ステルテさんの両親も話すことはできないとか。リボニア語はウラル語族に属し、印欧語のラトビア語とは全く構造が違うそうです。


 消滅寸前言語が復活した例としては、ヘブライ語があります。古代ヘブライ語を使用していたユダヤ人は、国がなくなりディアスポラ(離散)の後、住みついた土地のことばを話すようになります。(古代)ヘブライ語は、ユダヤ教の聖典(≒旧約聖書?)にしか残らず、日常的には全く使われなくなりました。

 この古代ヘブライ語をもとに、現代ヘブライ語の辞書を編纂したのが、エリエゼル・ベン・イェフダ。生まれてきた自分の子供を、7歳になるまではヘブライ語だけで育て、新ヘブライ語を母語とする子供にしました。福武文庫の「ベン・イェフダ家に生まれて」を読んで、エリエゼルとその一家の格闘ぶりを知り、ことばを残すというのは、これほど覚悟がいるものなのかと、感銘を受けました。

 ヘブライ語の場合、ユダヤ教の聖典として古代ヘブライ語が残っていましたが、ヘブライ文字は母音表記をしないので、神を表すYHWHという表記を、エホバと読むのか、ヤハウェと読むのかなど、口語として導入するには難しい点も多かったのではないかと思われます。同じように母音表記をしないアラビア語で、イスラム聖典は書かれていますが、翻訳を禁じ、アラビア語で唱える(=たえず発音を確認する)ことによって、正確さを保っているようです。古代のインドのことばであるサンスクリット語は、いまだにサンスクリット語を母語とする話者が存在するそうですが、日常的に使っているということは、ウエブサイトやEメールといった、新しいことばも作り続けているということなんでしょうか。それとも外来語としてサンスクリット語に定着しているのかな?

 取り入れたことばを個々の言語のルールに沿って、語尾変化したり若干意味や音が変わったりすることで、外国語ではなく、新しいことばとして認識されるんでしょうね。多数決で、世界でたったひとつのことばが共通語になったりすると、各言語が持っていた特有の概念がいっぺんに消えてしまうような気がします。

 昔、「源氏物語の時代に話されていたことばはこういう発音だったのではないか」という音を聞かせてもらったことがありました。イントネーションは関西風、ハ行の音はph音、ヤ行、ワ行の半母音や鼻音がたくさん使われている不思議なことばでした。日本でも、アイヌ語や琉球語は話者が減り、消滅寸前言語とされていますが、耳にする機会があればなぁ…と思います。

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