「網膜芽細胞腫」
2001年3月、熊本市のMさん(44)は出産後1か月で、長男、K君(9)が自分と同じ病気と知った。
1万5000人に1人とまれな子どもの目のがんだ。親が患者だと確率は高まる。
10年間悩んだ末の出産だった。美保さんは、幼児期に両目を摘出している。
国立がん研究センター中央病院(東京・築地)を拠点に活動する網膜芽細胞腫の子どもをもつ家族の会「すくすく」を友人から紹介されて相談すると、「少しでも早く東京の専門医に」と強く勧められた。
眼球摘出と思い込んでいたが、上京して受診した同病院の医師は「まだ大丈夫」と予想外の診断。抗がん剤や放射線でがんをたたく眼球温存療法を受けた。
そして小学4年生の現在の視力は、右1・2、左0・04。近所の小学校に通い、キャッチボールが大好きな少年に育った。父親のHさん(42)は「あの時、相談しなければ、地元で眼球摘出をしていたかもしれない。情報交換がいかに大切かを実感しました」と振り返る。
会では同病院で毎月定例会を開く。気軽に話ができる場で、会員でなくても参加できる。年1度の勉強会には、全国から130人以上の親子が集まる。専門医の講演に加え、テーマごとに患者や親が語り合う分科会を設ける充実ぶりだ。
国内での発症は年80人という珍しい病気だけに、孤立してしまいがちな地方の家族にとって貴重な情報交換の機会になっている。
代表の池田小霧さん(40)は「子育てや日常生活の悩みは、医師には聞けない問題。会員同士で体験を話し合って悩みの答えを探したり、話を聞いてもらって救われたりする場になればうれしい」と話す。
◇がんの親を持つ子どもを支える活動もある。08年に発足した「Hope Tree~パパやママががんになったら~」。子どもに自分の病気をどう伝えるか悩む親に、ウェブサイト(http://www.hope-tree.jp/)や講演会を通じ助言している。
日本では、子どもの心への影響を気遣い、がんを知らせるかどうか、どう伝えるかにとまどう親も多い。また、子どもの口から周囲にどう伝わるかも気になる。
代表の大沢かおりさん(43)は「発達段階に応じた適切な伝え方があると知ってもらうことで、子どもとよいコミュニケーションをとるお手伝いができれば」と話している。
(読売・医療大全記事より)
◆ガンにもさまざまありますが、私としては、とても貴重な情報を読ませていただきました。
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