鎌倉

大阪の会社に勤めていた時の事。結婚が決まり退職が決まっているというのに、その年の女子社員研修に選ばれた。研修を受けても還元できないと分かっていたのに。行ってらっしゃい。楽しんで見聞を広めてきなさいと。大先輩が推薦し送り出してくれた。北海道から九州まで各支店から女子社員が葉山の研修所で1週間の合宿をした。本社から、講師が来て講義やディスカッション。残念ながら肝心の内容は忘れてしまったけれど、全国にお仲間が出来たことが大きな収穫だった。独身最後のご褒美でした。

当時は鎌倉も江ノ電も知らず。葉山に御用邸があるくらいの知識しかなかった。研修の終わった夜、森ケ崎海岸を散策して皆で語り合った。夢のような時間だった。研修を終えて、ひとりで鎌倉を散策した。しっとりと落ち着いた風情。紫陽花寺に銭洗い弁天、切通し。人生で初めての知らない町のひとり歩きだった。今から半世紀も前の事です。鎌倉と聞くと、ひとりで歩いたあの日を懐かしく思い出す。今思えば何て世間知らずで未熟な22歳だったのだろう。あれでよく結婚しようと決断をしたものだと思う。でもいつしかここまで来ました。「椿ノ恋文」を読んでいたらこんなことを思い出した。