面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

アプネア

2008年06月18日 | Weblog
     
    アプネア  朝倉 薫

 寝返りをうった君の背中に
 海の匂いがした
 私は目を閉じて息を止めた
 苦しみは自分で作り出せる
 悲しみも君の所為じゃない

 少女の頃に戻してよ
 君は神様じゃないのにね
 夢を追いかける君に
 応援してるねって言ったけど
 いつ別れるか考えてた

 海が地球を飲みこむ日がくれば
 私は人魚になるんです
 君は深い海の底で眠るアンモナイト
 永遠に目覚めないでね

 目を閉じて息を止める
 苦しみは自分で作り出せる
 悲しみも君の所為じゃない

 目を閉じて息を止める
 海が地球を飲みこむ日がきたら
 私は人魚になれますか

  
 明日劇団恒例潮干狩りで海へ行くので熊手や網を準備していたら、こんな詞が浮かんだ。僕が少年の頃に戻れないように、この詞の主人公も少女時代には戻れない。だが、しかし、いつの日か、きっと人魚になれると、僕は思う。
*アプネア=ラテン語で、息を止める、の意。
 

    

女優の品格

2008年06月18日 | Weblog
 19時過ぎ、劇団の定例稽古をTに頼んで、W氏、H氏らと待ち合わせの六本木に急いだ。19時50分、喫茶店でそれぞれが別のテーブルで僕を待っていたので合流、名刺交換をして早速懸案の打ち合わせ。21時、F氏を紹介しようと電話をいれると、F氏、丁度六本木で食事中とか。10分ほどでF氏が駈け付け、それぞれを紹介する。中年、初老の男たちが5人、アイドルの話で盛りあがる。マネージャKくんに頼まれた新人女優に話題が移り、最近流行の「品格」について、それぞれの意見を拝聴する。W氏は初対面で彼女に向かって「上品なキャバ嬢」と評したらしいが、僕も初対面で確か「上品になりなさい」と、言った。

 国家だの女優だの、「品格」と一言で言い切るのは危険かも知れないが、便利な言葉ではある。彼女曰く「例えばどんな?」僕答える「やずやのニンニクのCMに出てくる少女」彼女「ええっ、あんな田舎臭いのがいいんですか?」僕、答えに窮する。

 難しい問題である。若い世代は、新しいもの、最新の流行に敏感である。僕にしたって高校時代は制服がむさくるしく思えて、平凡パンチのグラビアファッションに憧れたものだ。女子大一年生の彼女が「ええっ?」と驚く気持ちは充分理解出来る。田舎臭さと上品さは、本当に紙一重だ。それを見分けられる深さを彼女が身につけることが出来たら、誰からも「下品」とか「キャバ嬢」とか評されなくなるのだが、今は何を言っても通じるまい、と、僕は口をつぐんだ。広末、宮沢、今をときめく宮崎嬢の新人時代がいずれも田舎臭さと紙一重の「清楚」であったことを彼女は知らない年代なのだ。新人女優がハリウッドの大スターと競ってどうなるわけでもない。CMで量産されるファッションや化粧品で彩るより、仕立ての良いワンピースで「これ、おばあ様のお下がりなんです」と、嬉しそうに微笑む清楚な姿に大の大人が感動することを若い彼女は残念ながら思い至らないのである。そして、ドラマ、映画、CMのキャスティング権を握るのは、男女問わず、清楚も若さもとっくになくした「責任者」なのだ。人は失くしたものに憧れる生き物なのである。