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日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

男の血

2008-10-17 08:09:20 | Weblog
 「てをあげろ!じゃないと、うつぞ」

 ASEの待合室で未就学男児が興奮してロレツのよく回らない舌でそう言い、いる人全てにピストルを向ける。銃を持つ子の仕草は、堂に入ったもの。脚を大きく開き、銃は両手で持ち、いや、それだけではない。目はすわっている。

 もちろん、手の銃はおもちゃだ。銃口から何かが飛び出てくるわけでもない。

 それでも、周りの子供や大人は、時に嬌声を上げて怖がる。男児の母親も、「○○ちゃん、人に向けてはだめよ」と言うが、ガンマンになりきった男児は聞く耳を持たない。

 ピストルは男児の親が買い与えたわけではない。同じクラスの女児の母親がディズニーランドに行った時、せがまれて買ったものだ。

 持ち主の女児も、カリブの海賊の格好をして悦に入ってASEに姿を見せたものの、ピストルにさして興味があるわけでもなく、男児に取られても気にする様子は見せなかった。

 男児の兄もピストルを見ると、異常な興奮を見せた。弟の手から取り上げると、撃つ真似をする。

 子を付き添ってきている母親たちと女性スタッフの間から、「○○ちゃんが…、ネエ?」と声が上がった。

 「やっぱり、男の子の血には何か違うものが流れているのかしら」と、声をそろえて言う。

 確かにそうかもしれない。私も、小さい頃は、チャンバラごっこに夢中になったり、小さな手の指を三本折ってピストルに見立て、「パン、パン、バキューン」と口で言いながら人に向けて撃つ真似をしたりしたものだ。

 全ての男の子にそういう面が見られるわけではないが、傾向的に言えば、武器を見て興奮するのは圧倒的に男児だ。

 件の男児は、普段から好戦的な態度を見せているわけではない。いつもはどちらかと言えば、声も小さくて静かな子だ。母親の育て方も私の見ている限りでは、とても良くて、好戦的な性格を生む環境には置かれていないように見える。

 その日も眠そうでけだるい雰囲気を漂わせて姿を現した。ところが、女児の手の銃を見たとたん、目は大きく見開かれ、態度を豹変させたのだ。その撃ち方も、昨日今日覚えたものではない。

 いずれにしても女性たちの言う「男の血」には、抗弁する術がなかった。そんな男の血が戦争に人を駆り立てていると言われるが、そんな短絡的なものではないにせよ、全面的に否定できるものではない。何か後味の悪いものが残った一日であった。