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相次ぐ大災害に想う

2005-10-11 00:15:11 | Weblog
 8日朝に発生したパキスタン北部を震源とする大地震は、時間の経過と共に被害の実態が明らかになり、これまでに分かっただけでも死者が2万人近くになった。
 被災地域は、カシミール地域に及んでおり、パキスタンだけでなくインドにも多くの犠牲者を含む被害が出ている。
 カシミールは、インド・パキスタン両国の独立の際、両国を植民地にしていた英国がずさんな形で独立を認めたために今も紛争が続く地域となっている。それらの地域の多くは山岳地帯で道路の寸断が各所で起きているため未だに被害状況が不明なところもあるという。また、治安維持面から外国救助隊や報道機関を入れたがらないことも考えられる。空撮映像を見る限りではそれらの地域の破壊がひどく、犠牲者の数は政府が言うように3万人近くになる恐れもある。
 今回、日本政府は比較的早く国際緊急援助隊の派遣を決め、今日午後には現地入りしたが、それでも英国やロシアなどの後塵を拝している。両国を始め、フランス、トルコ、アイルランド、米国などは地震発生当日又は翌9日朝までに救助隊を現地入りさせている。人命救助の世界では「発災後72時間」というのが目途とされているが、60時間を過ぎてからの現地入りでは、「早い」とは言えない。いつも他国より遅れるのは、政府の判断が遅いこともあるが、飛行機の空席探しに手間取ることもある。もういい加減に、専用機の採用を考えてもいいのではないだろうか。他国が早いのは専用機やチャーター機を使うためである。また、救助隊のメンバーが全国からの寄せ集めであることも問題のひとつと考えられる。
 今回マスコミがパキスタン大地震を迅速に、なおかつ大きく報道しているのは、日本人の犠牲があったためである。過去にこれより規模が大きく被害が甚大であった地震を小さく扱ってきたことを考えると、その差に怒りさえ覚える。かつて、その扱いがあまりにひどかったことから、ACTNOWのメンバーが大手新聞社まで抗議に出かけたことがあるが、イランで起きた大地震のいくつかは外報面の数段で扱われただけで、日本の読者にほとんど知られることはなかった。今後も邦人の被害があるなしにかかわらず今回程度の報道の仕方をしてもらいたいものだ。
 さて、パキスタン大地震の報道の陰に隠れたのが、中米を襲ったハリケーン被害だ。「ハリケーンの被害はずいぶん報道されたではないか」と思われるかもしれないが、それは、米国を中心に襲ったカトリーナとリタの話だ。
 4日に中米を襲ったハリケーン「スタン」は、各所で洪水や土砂崩れをもたらし、大きな被害を出している。現在までに分かっているだけで被害はグアテマラ、エル・サルヴァドル、メキシコなどに及び、少なくとも1,500の死体が発見されている。この数字は、カトリーナの1,242よりも多い。もちろん災害の規模や状況は死者の数だけで判断されるものではないが、今回の災害は大きく報道するに値すると私は考える。この地域への日本の救助隊の派遣は検討されておらず、グアテマラとエル・サルヴァドル両国に対してそれぞれ、1,200万円の緊急援助物資が送られるにとどまっている。
 それにつけても世界で大災害が続発している。今年の夏からだけでも、ハリケーン、地震、山火事、洪水による大規模な災害が世界の人たちを苦しめている。それも、多くの被災地が外国の力を借りているのが現状だ。このような現実を目の前にしてただ腕をこまぬいているのはいかがなものか。私が以前から提言していることだが、もうそろそろ日本は「使い物にならない」自衛隊を「世界から感謝される」救助隊に衣替えすることを真剣に考える時期に来ているのではないだろうか(筆者注:この考えについては、今年1月14日付のまぐまぐメルマガ「私の自衛隊解体論」をご覧ください)。