文春オンラインで報じられていましたが、京都大学IPS研究所の山中教授は、橋本徹元大阪府知事との対談の中で、「日本の新型コロナ感染率や致死率が、欧米と比べて著しく低い事実には何か理由があるはず。そのファクターXを解明すべし」と強く主張しており、その解明には「抗体検査」が有効であると述べておられます。
確かに、各地域ごとに、統計上有効な数だけ抗体検査を行うと、その傾向値から、いろいろな仮説を立てることが可能になります。その仮説を一つ一つ試していくと、真実の「ファクターX」に行き当たることになり、このファクターXが全世界の新型コロナ予防に有効な手立てになるはず。
一方で、抗体検査の結果、別の結論が出て、他の国々には参考にならないケースもあります。例えば、すでに多くの日本人が抗体を保持しているケースです。それは、ここ数十年の間に、日本や朝鮮半島の東アジアで、新型コロナと近い性質の感染症が流行していて、その効果が残っているということ。
あるいは、遺伝子的な理由から、新型コロナへの抵抗力をあらかじめ保持しているケース。日本人をはじめとする東アジア人は、欧米人と比較すると、総じてお酒が弱いという特徴があります。お酒が弱くなるというとそれ自体は遺伝的退化に見えますが、実は、稲作が始まった頃、水田の周囲で発生しやすい感染症と対峙するために、肝臓内でのアルコール分解力を犠牲にして、感染症に強い抵抗力を持つに至ったという説が有力であるとのこと。この東アジア一帯と、今回の新型コロナの感染症に強い抵抗力を見せた地域(台湾・韓国・日本)が一致しています。
ファクターXとは、実は「お酒に弱い遺伝子」だった? そんな研究論文がそのうち出てくるかもしれません。