夫婦で新しい人生にトライしてます~日本編

15年ぶりにカナダから帰国。終の棲家と選んだ北海道美瑛町から日々の生活を綴ります。

映画「生きる Living」

2023-04-16 08:49:54 | 日記

昨夜は、先月末から日本で公開されているイギリス映画「生きる Living」を見てきました。北海道で見ようと思ったら旭川では上映されておらず札幌でしか見られないということだったので、水戸市内原のイオンモールで上映されていたのはラッキーでした。

ポスターにあるとおり「黒澤明×カズオ・イシグロ」です。黒澤明監督の傑作「生きる」は1952年公開ですから同時代で見たわけではないのですが、いつだったかオリジナル版を見ていました。志村喬演じる末期癌で余命6カ月を宣告された市役所の課長が、生きる意味を求めて住民の請願による小さな公園を完成させ、最後は雪の降る中ブランコに座り感慨にふけりながら「ゴンドラの歌」を口ずさむシーンはずっと記憶に残っています。「命短し恋せよ乙女 熱き血潮の枯れぬ間に」と当時歌詞まで覚えてしまいました。

イギリス版リメイクとなった今回の映画は、舞台を1953年のロンドンとしていますがほとんど内容を変えていません。それは脚本を書いたノーベル賞作家である日系イギリス人カズオ・イシグロの世界そのままだからだろうと思われます。彼もまた黒澤明の大ファンだそうです。

ただ、映画のハイライトとなる「ゴンドラの歌」はどのように扱われるのかと思っていたら、スコットランド民謡の「ナナカマドの木」という哀愁を帯びた曲に変わっていました。イシグロにとっては彼の妻がスコットランド出身であり、劇中の主人公もその亡くなった妻もスコットランド出身であるという設定でありこの曲がベストであると決めていたそうです。

若い頃は希望に満ちて家庭を作り仕事に励むが、次第に事なかれ主義に陥って行き、妻に先立たれてからは完全に生きる意味も見失ってしまっていた男が、癌で余命6か月と告げられたことから逆に生きる意味を見出そうとする姿は、どの時代、どの世界でも普遍的なテーマ足りうるのでしょう、オリジナル版は黒澤明が脚本を書いていますがその原作はトルストイだということからも分かります。

先月発表のあったアカデミー賞でこの作品は主演男優賞(ビル・ナイ)とイシグロが脚色賞にノミネートされていましたが、残念ながらどちらも受賞は逃しています。しかし、今年のアカデミー賞を総なめした「Everything Everywhere at all once(通称エブエブ)」があの斜め上を行くような破天荒なスタイルに興ざめした私たちには一服の清涼剤を飲むようにこの映画を見ることが出来ました。

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