雑誌のコラム欄から転載
「小さな勇気」
未踏峰の山に登頂するとか、人を救うために危地に赴(おもむ)くといった行動には、けた外れの勇気がいる。けれども、そうした冒険とか責任が伴う場合を除けば、現代人とってこのご時世、豪遊蛮勇の類(たぐい)はほとんど無用なものと言えよう。
それより今の私達には、もっと求めるべき勇気がありはしないか。それは、ずっと身近で求められる小さな勇気。たとえば、引っ込み思案の自分を励ます勇気。悪いくせを反省し改められる勇気。間違ったら素直に人に謝れる勇気もそうであろう。
些細に見えるものの、それらは等身大の自分には切実で、確かに求めたいものである。気合を入れれば得られそうだが、いつも何かが足りなくて出てこない。
自分を信じきれない、何が正しいかが分からないなど、問題は心のどこかに潜む弱さにあるのであろう。しかし、素直な心で本当の自分と対話すれば、弱さを認識し、自分の殻を破る大きなヒントが得れれるかもしれない。
自分に真剣に向き合うこと。万人が試される最初の勇気はそこからである。