本日、快晴。

映画中心雑記。後ろ向きなポジティブが売りです。

人類滅亡計画書【映画】

2013年11月01日 | 【映画】
去年の東京フィルメックスで上映されており、
すごーく観たかったんですが、日程が合わず断念。
その後、日本公開を待ちわびていたものの、海外版のDVDしか出てなくて、
もう観れないかな。。。と思っていた矢先に
アフターショック』キッカケで知ったのが、「シッチェス映画祭セレクション」!!!
これはもう運命だと思い、会社帰りにダッシュしました。

余談ですが、"運命だ!!!"と観に行った映画で失敗した経験があるので、
当日直前までは、ちょっとした疑心暗鬼状態ではあったんですが。
いまだに言われるぜ・・・。

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「ゾンビ」「アンドロイド」「隕石」の要素で構成されたオムニバス作品。
監督はキム・ジウンとイム・ピルソン。
「第1話 素晴らしい新世界」
――街に謎のウィルスが発生し、人々が次々にゾンビ化していく。
マスコミは原因となったウィルスの感染源を探すが…。
「第2話 天上の被造物」
――寺のロボットが悟りを開き説法の境地にまで達する。
メーカーは脅威的な意志を持ったロボットを解体しようとするが
僧侶たちが反発、争いが始まり…。
「第3話 ハッピー・バースデイ」
――父親が大切にしていたビリヤードのボールを壊してしまった少女は、
怪しげな通販サイトで新しいボールを注文。
2年後に謎の惑星が地球に接近するが・・・。
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観に行った甲斐あり。面白かったです。
こういうのがあるから、韓国映画は侮れないんだよなあ。

コレ、今後の公開は未定なので、完全ネタバレで書きます。
もっかい言うよ。完全に、ネタバレますので4649。

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まず、1本目の『素晴らしい新世界』。
ゾンビウイルスのパンデミックものです。
個人的にいいな、と思ったのは、コメディ要素にアメリカ的なガハハ感がなく、
かと言って、パニックにありがちな不自然な阿鼻叫喚やハイテンションさもなく、
ウイルスが進行する過程に重きをおいて、パンデミック後の描写はわりとあっさりしてること。

ここでは、ゾンビウイルスは生ゴミの中の化学反応で偶然発生し、
保菌状態の生ゴミは、処理されて家畜のエサ(粉末状なので飛散もするよね。これもウマイ。)となり、
それを食べた家畜の肉が出荷され、焼肉店へと移動。
言わずもがな、食べた客が感染するわけです。

余談ですが、焼肉の食事シーンで、ああ、食べたいなあ・・・と空腹を感じた直後に、、
ダメだ、恐ろしくて肉なんて食べれない・・・と落とされました(笑)。生肉は恐ろしいよ。
その後は、唾液とか、一般的な噛み付きからの感染で、人から人へと広がってゆくわけですよ。
感染の過程で映る汚い生ゴミと美味しそうな肉の対比も、
表裏一体感を表す、いい暗喩だと思いました。

基本コメディなので、アホかという展開もありますが、
最後のリンゴでのまとめ方は納得。
アダムとイブが食べた禁断の果実になぞらえることで、
物語をうまく着地させているなと思いました。
禁断の果実によって滅亡に追い込まれた人類の、禁断の果実による幕引き。
そしてそれを自ら記録する、人間たるアダムとイブ。
目新しくはないけども、丁寧な演出だと思いました。


2本目の『天上の被造物』。

アンドロイドの利用が一般的になった未来社会において、
あろうことか、お寺のファシリティであるアンドロイドが悟りを開いてしまう、という話。
アンドロイドが感情を持ってしまう、というお話はわりとよく見ますが、
説法できるまでに悟りを開く、という発想が新しい。
僧侶達は、悟りを開いたロボットのことを仏と崇め、
メーカーの人間は、あくまでもイレギュラーなロボットのことを不良品として処分しようとする。
あらすじには『争い』とありますが、そんなに激しいものでもなく、
基本的には、双方説得による話し合いが行われるわけです。
(1人だけやたらと激しい人もいますが。)

どちらの言い分も、理に適っているというか、
立場の違いくらいのものなので、
善悪が明確にはっきりしているわけではないです。
武力行使に出ようとするメーカーはちょっと悪者風かなというくらい。
会話劇なので、ちょっと飽きる人はいるかもしれません。
私には、すごく興味深い内容だったけれど、
字幕を読み、頭で理解するスピードが、ちょっとしんどかったので。
(出来れば、本で読みたい。)

また、退屈ながらも飽きずに見れたのは、
理論戦の決着のつけ方が非常に気になったからでした。
『涅槃(ねはん)』という言葉を使い、うまく『人類滅亡』の末路を描いていると思います。

大和尚様がアンドロイドに対し、『お前は死ねないだろう』的な説法を行い、
メーカーは『大和尚様が言っている!やっぱりお前は仏にはなり得ない』と主張する。
でも、"無"を悟っているアンドロイドは、
自分が原因で起こっている目の前の諍いを解決すべく、
自ら自身の全機能を停止させる訳です。
それを見た教徒達が、出来ないと思われていた『涅槃』を成し得たアンドロイド和尚を更に崇める、という流れです。

大和尚、という人がどれほどの人かは知りませんが、
少なくとも信仰におけるヒエラルキーの頂点に居る人が認めなかったことを、
いとも簡単に、人間ではないアンドロイドがやってのけてしまう。
うーん、いよいよ人間超えか?という意味での『滅亡』の描き方は、上手いです。

エピローグ的な小さなオチも、悪くないです。
ロボ・ペットを助けるためのICチップを、自らの肉体を切って取り出したエンジニア。
彼自身もまた、アンドロイドであった、というオチ。
考えてみればこのシーンも、人間にとってはある意味絶望的なんですよね。
"情"の概念でさえ、機械に劣ってしまうなんて、悲しい『滅亡』ですね。


3本目の『ハッピー・バースデー』。
このタイトルはなんだか皮肉。。。

ペ・ドゥナが全面的にクローズアップされていますが、
本編ではホントにちょっとしか出てきません。
なので、ペ・ドゥナ目当てに行った人ご愁傷様、という感じ。
いや、可愛いは可愛いんだけどね。

12時間後に衝突する隕石を待つ人々のお話ですが、
前の2本と比較すると、コメディ色が非常に強いです。確かに笑えます。
特に、キャスターの下りはベタなコントみたいで、最高でした。

地球に衝突する隕石の正体が、
娘が2年前に、宇宙人の通販サイトに注文したビリヤードの玉だった、というのがオチですが、
そんなわけあるかーーーーい!!というトンデモ展開が、逆に気持ちいいです。
『返品できないの??』とか、もっと早く気づこうぜ!!とかね。
セリフもそうですが、家族4人の表情が、いちいちコントっぽくて非常に面白い。
質の高いコメディ作品だと思います。

でもさ、よく考えたらこの娘、地球滅亡危機の戦犯ですよ?
『ハッピー・バースデー』じゃねえよ!!て話ですが、そのツッコミも含めて、まあ面白いです。

ラスト。
色々とあがいてはみたものの、ビリヤードボール(=隕石)は結局、衝突してしまいます。
運よく被害に合わなかったので、その後地下で生活をしていた家族4人の元に、10年越しの来訪者。
それは、受取のサインを貰うための配達人です。
「銀河鉄道999」を彷彿とさせるらしいですよ、あの姿。(私は知らないのだけれど。)
お前、10年間も待ってたんかい!!!とここでもツッコミたくなるのですが、
ここもご愛嬌かな。でも死んじゃってたらどうするつもりだったのかなあ。

この作品での『人類滅亡』は、もう見たまんまですよ。だって隕石衝突してるもんね。
とはいえ、ラストシーン。
「きっと誰か生きてるよね。」からの、前向きな家族の姿は、わりと気持ちの良いハッピーエンドです。
ペ・ドゥナの笑顔も可愛いしね。

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フィルメックスでの上映時の題名は『人類滅亡報告書』だったそうです。
正直、鑑賞後の私にとってはこっちの方がしっくりくるなあ。
『計画』よりも『報告』の方が、救いがあるし前向きな印象。これは完全に好みですが。

3話を通して、"人格的"・"概念的"・"物質的"に、描かれた『人類滅亡』の物語は、
フィクションだし、時には笑えるけれど、最後はちょっと考えさせられるような、
全体通しての展開・演出が非常に上手いと思いました。

あと。これ本当に余談というか、正直な感想として1つ。
この映画で描かれている、所謂"イヤな奴"描写がすごく秀逸で、非常に胸糞悪いです。
具体的には、1話の主人公の父母姉、2話のケバイお姉ちゃん。
本っっ当にサイアク!!!超嫌い!!!ざまあ!!!とまで思ってました。大人げないぜ。
これも、リアリティという側面から見ての、映画に対する褒め言葉ではあるのですが…。



本作を共作した2人の監督のうち、
キム・ジウンは『悪魔を見た』(私の数年前のベスト1)の監督です。
彼の作品、ということで気になったのがキッカケだったのですが、
もう1人のイム・ピルソン監督にも非常に興味が沸きました。過去作見てみようと思います。

地味なオムニバスだし、あんまり明るい話じゃないし、
そもそもタイトルが・・・という不利な状況下ではありますが、
せめて、日本でのソフト化(及びレンタル)を切望します。
・・・どこに訴えれば出来るのかなあ。割と本気です。

どこかで出会えたら、是非観てみてください。

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