観自在

身辺雑感を気ままに書き込んでいます。日記ではなく、随筆風にと心がけています。気になったら是非メールください!

ブックリスト~『旅する力  深夜特急ノート』

2009-02-11 12:29:29 | 読書
『旅する力  深夜特急ノート』 沢木耕太郎  新潮社

 2008年11月に出た『深夜特急』関係の最終便となる本です。『深夜特急』は、著者が26歳のとき、香港からロンドンを目指したユーラシア大陸横断の路線バスの旅を描いた大作です。私も文庫本で読んでから、多くの人にも勧めています。今回の本は、著者が深夜特急の旅を振り返り、旅というものを再度考察するとともに、深夜特急の旅の裏話のような内容も入っていて興味深いです。ノンフィクションが好きな私は、沢木氏の大ファンで、ほとんどの作品は読んだつもりですが、今回も楽しく読むことができました。沢木氏は、あの旅を何度も反芻することによって、旅に対する解釈をどんどん深めていらっしゃると感じます。
 私が最も感動したのは、巻末近くでした。現代人は、予期しないことが起きるということを予期しないところに問題があるのではないかと述べています。氏がテーマとするスポーツでも、その場面場面で予期せぬ事態が起こり、瞬時にそれに対応するところが見所であり、醍醐味だと思います。旅も同じだというのです。なかなか予定通りに進まないのは、旅も人生も同じですね。そうした思いもよらぬ事に対処していくことによって、人は少しずつ成長していく。そして、旅の力が増していくというわけです。
 私は若いときから、がちがちにプランを立てて旅行するタイプでした。知人には、宿も決めずにふらりとインドへ行ってしまう人もいますが、私などにはとうてい考えられないことです。そうした勇気のなさが、人生に悔いを残すことになりました。私は、もう自由な旅をする年齢でもなくなってしまいました。淋しい気がしますが、それが、私の器だったのでしょう。
 この本を読んで、また一人で旅がしたくなりました。近くでよいから、そこへ行って、自分を見つめる時間がほしいと思います。