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観自在

身辺雑感を気ままに書き込んでいます。日記ではなく、随筆風にと心がけています。気になったら是非メールください!

アーツ前橋に行きました

2016-03-27 01:48:00 | 絵画
 「花に寄る少女」という作品をネットで偶然目にして調べてみるとアーツ前橋という美術館で開催中の田中青坪展に出品中の作品とわかりました。「たなかせいひょう」と読みます。明治36年、前橋生まれとあることから、アーツ前橋で展覧会が催されているのでしょう。
 「永遠のモダンボーイ」という副題がついた展覧会です。洋画から始め、18歳で日本画に転向、その後は院展などで活躍し、東京芸術大学名誉教授などを経て、平成6年に亡くなっています。
 伝統的な日本画もお描きですが、モダンな感じが新鮮な作品も多数ありました。観終わって、気持ちのよい展覧会です。大人500円は安いです。地元の画家の展示コーナーもあり、地方都市の美術館らしいと思いました。
 最近、美術館は郊外に建てられることが多いですが、このアーツ前橋は市の中心にあります。ユニークなビルの中にあり、地下を含めて縦方向の移動になりますが、スロープなどがうまく使われていて、楽しい気がしました。隣接する駐車場は2時間まで無料になります。サービスがよいです。
 お近くの方は見る価値あります。オススメします。

舟越保武の彫刻展を見て

2015-07-19 12:20:51 | 絵画
 練馬区立美術館へ舟越保武氏の彫刻を見に行ったのは先週の土曜日11日のことでした。ところが、よく調べずに行ったため、その日は内覧会で一般の入場はできずじまいでした。しかたがないので、いつも寄るカレー屋さんSagunでカレーを食べて帰宅しました。
 そこで満を持して昨日(19日)、再び練馬区立美術館に行きました。
 練馬区立美術館は、特色のある美術展を開く美術館として注目して来ました。今回も、小品から代表作と目される大型の作品まで、よく揃っていたと思います。練馬で暮らしていたころの初期の作品から、練馬区晩年の脳梗塞後に左手で制作された作品群まで、石彫やブロンズのほかに、デッサンなども素晴らしいものでした。
 私は来月、長崎に行きます。もう30年ほど前に行ったきりですが、軍艦島なども見る予定で予約をしました。以前行ったときに、西坂の日本二十六聖人殉教碑を見て感動しました。これは舟越保武氏の代表作と言うべき記念碑的な作品です。今回はデッサンやレプリカが展示され、再訪するのが楽しみになりました。『クアトロ・ラガッツィ』の読後なので、以前より多くのことを感じることができると期待しています。
 舟越保武氏の彫刻は横顔が素晴らしいと思います。高貴で静謐な美しさは何とも言えません。信仰の力も感じます。
 私は以前、氏の著書『巨石と花びら』も読みましたが、文章も深い味わいがあります。松本竣介との交流など、しみじみとした趣がありました。佐藤忠良氏との友情も有名ですね。息子さんの桂氏も活躍されています。
 お近くでない方も、ぜひご覧ください。
 昨日もSagunでカレーを食べて帰って来ました。私が持っているブロンズ像の写真を付けておきます。

ボッティチェリとルネサンス展

2015-05-24 16:24:30 | 絵画
 昨日は仕事が昼で終わったのを幸いに、美術展を見に渋谷に行きました。7~8年ぶりで、美術館へ行く道を忘れているほどでした。スクランブル交差点はすごい人で、海外の人が写真を撮っていました。本当に観光地になっているんですね。
 到着は2時過ぎでしたが、まず腹ごしらえに、美術館すぐ脇の沖縄豚をつかったハンバーグが有名なお店に入りました。地下の洋風居酒屋といった感じで、ビールを飲んでいる人もいましたし、カウンターには泡盛がいろいろありました。沖縄の歌がかかっていて、よいムードでした。一番スタンダードなハンバーグを注文しました。ジューシーで肉の味が濃く、美味だったと思います。満足しました。1500円で少しお釣りが来ました。
 渋谷のBunkamuraで開催中の美術展はボッティチェリとルネサンスというものでした。ただ絵画を展示するのでなく、絵画の背景となり需要を生み出したフィレンツェの冨というものがサブテーマになっていました。美術展の最初に金貨があり、金庫や金融業の展示などもかなりあって異色でした。
 ボッティチェリとその工房の作品も20点以上あったでしょうか。特に驚いたのは、ボッティチェリが描いた「受胎告知」でした。こんな大きな絵をよく持ってきたなあと感心しました。フレスコ画でかなり体色しているように見えましたが、大変整った素晴らしい絵だと思いました。
 その他、ボッティチェリがフィリッポ・リッピの影響を強く受けていた修業時代から、メディチ家のバックアップによって才能を開花させ、その後、サヴォナローラとの出会いから没落していくまで、よく絵を集め、持ってきていると思います。彼の絵の変化が大変よくわかる展示になっていました。今回は2時間以上かけてゆっくりと見ることができました。
 小品ながら、フラ・アンジェリコの作品が見れたのもうれしかったです。
 チケットは新宿の金券ショップで当日1500円のところ、750円の優待券を入手して喜んでいたのですが、帰りにセンター街を歩いていたら、ちとせ会館前のチケットショップで600円で売っていてショックでした。
 そのせいではないのですが、帰りは明治通りを歩いて新宿に出ました。1時間くらいかかり、よい汗を流すことができました。
 この展覧会はオススメです。ぜひご覧ください。
 

ベスト・オブ・ザ・ベスト

2015-04-05 09:23:46 | 絵画
 ブリヂストン美術館で開催中の「ベスト・オブ・ザ・ベスト」という展覧会を見てきました。
 まず、驚いたのは、ブリヂストン美術館へ向かう途中、八重洲の地下街を歩いていたときでした。大丸の地下などで、会う人の半分くらいが中国からの旅行者だと感じられました。家族連れが多かったものの、若い女性のグループなども目立ちました。以前にはあまり見られなかったと思います。海外からの旅行者が増えているとは聞いていましたが、予想以上でした。
 さて、「ベスト・オブ・ザ・ベスト」という展覧会は大変結構なものでした。これはブリヂストン美術館が保有する作品だけで構成されています。改めてブリヂストン美術館のすごさが理解できました。青木繁の「海の幸」も里帰りしていました。藤島武二の「黒扇」、モローの「化粧」、ピカソの「道化師」、セザンヌの自画像など、1点を見に行くのもアリでしょう。ルオーの作品はどれも傑作でした。
 日本屈指の美術館ですから、ここでも外国からの旅行者が多数見られました。もともと展示室が狭い美術館なので、鑑賞者が多いと見にくいのはしかたがないでしょう。
 たまたま昨日は土曜でした。土曜講座はまだやっていたのですね。私ははるか昔に参加したことがあります。また、リピーター割引というのがあるのですね。チケットをとっておくと、2回目以降は半額でよいというものです。いろいろサービスがあるのもうれしい限りです。時間がなくて展覧会は小一時間しかみられなかったので、5月17日までにもう一度行けたらよいと思います。
 展覧会を見てから、上野へ行きました。不忍池の桜を見ながら、友人と花見をしました。5時からは数軒梯子して10時ころに帰宅。ポケットには1000円札が何枚も入っていましたが、どうしてなのかは不明です。友人と割り勘にしているうちに、細かくなったのでしょう。今朝は頭が痛いです。花見にも外国人旅行者が多かったことは言うまでもありません。
 日本の国際化?はすごい速度で進行していることが実感できました。びっくりです。
 今日もお花見です。雨ですけど。誘ってもらえるだけでありがたいです。まだまだ花見できますよ。ご一緒しませんか?

不思議な因縁

2015-03-12 05:41:10 | 絵画
 先日、オークションで一枚の絵を落札しました。大きなパステル画です。最初、パソコン画面で見たときには、きれいだな程度の関心しか持ちませんでした。オークションに参加しようとも思いませんでした。しかし、何度か見ているうちに欲しいという気持ちが強くなり、価格も予想以上に低かったので入札を決めました。
 その絵を描いた画家は、あるグループの主要なメンバーであり、重厚で写実的な画風には定評があります。私が購入した絵も、静寂と艶やかさの両方が感じられる美しい絵でした。
 届けられた絵は、某有名画廊の包装紙が付いたままの状態で、かえって偽物なのではないかと疑われるほどでした。しかし、満足しながら眺めているうちに、記憶の底から浮かび上がってくる思いがありました。私は、その絵を昔見たことがあると感じたのです。その思いはだんだん強くなり、確信に変わりました。
 その絵の絵ハガキを買ったことを確かに思い出したのです。私は絵ハガキを額に入れたりして飾ることはまれなので、そうした記憶はありません。飾って見ていた記憶ではなく、鮮烈なのは絵ハガキを買った時の記憶でした。私はケチなので、よほど気に入った絵ハガキしか買わず、買うときにはかなり悩んでから買うのです。そこで、絵ハガキを買うという行為が記憶に残ったわけです。絵ハガキを買ったことから考えると、画廊ではなく、美術展で見たのかもしれません。おそらく30年以上前のことだと思います。こんな形で、昔気に入った絵に再会できるとは思ってもいませんでした。
 冷静に考えれば、画家が気に入って何枚も描いたモチーフと構図だったのかもしれません。また、私がかつて見たのは油絵で、今回の絵は下絵のパステルだったとも考えられます。調べてもわかることではないでしょう。
 絵を見ながら、突然の過去との邂逅に不思議な気がしています。

ヤフオク奮戦記

2015-02-09 22:58:57 | 絵画
 今までの絵画購入はすべて専門店からネットで行っていましたが、この半年近くはよい出物がなく、あってもタッチの差で購入機会を逃すなど、うまくいっていませんでした。
 そこで、オークションにはどんな出物があるのかと興味を持って見ていたところ、先週、なかなかよい出物が複数あって、思わず参加してしまいました。
 以前のヤフオクは、登録料金を払わないと利用できなかったと思います。私は特別に登録もしていませんし、料金も払っていないので、今回も参加することは無理なのだろうと思いつつ、どうしても欲しくなってやってみたところ、何と、参加することができたのです。しかし、自分の審美眼に対する自信のなさと、偽物なのではないかという疑念が払拭できず、最後まで競ることができませんでした。一時は最高落札者になったものの、最後で私以上の高値がつき、落札されてしまいました。今、思えば、どうして最後まで競らなかったのかと後悔しています。オークションはその場の判断、決断力のない私にはなかなか厳しいと痛感しました。
 しかし、懲りずに、一昨日から、再び機会を狙っていました。同じ時間帯でタイムアウトとなる3つの商品がターゲットでした。さすがに、財布と相談して2つに絞り、落札価格の検討をすませて、締め切りの今日に臨みました。
 今日はすべて順調で、それほど競うほどの相手もないまま、2つとも落札できました。とても素晴らしいもので、前から気になっていた作家のものでした。しかし、どう考えても安すぎるため、落札したとはいえ、購入できるのかどうかわかりません。明日、ショップからの連絡次第ということになると思います。偽物をつかまされるリスクもあると思います。ネットの宿命で、商品を見ないうちはわかりません。商品を見てもわからないかもしれません。ですから、今は落札できてもあまりうれしい気はしません。
 とはいえ、オークションというのはスリルがあって面白いものでした。終了直前の緊張感や、値段をつけるときのスリルは、病み付きになりそうで怖いです。あまりハマらないように注意したいと思います。
 今日の最終結果は、後日掲載します。
 オークションの経験者がいらっしゃれば、アドバイスください。値段を入れるときは、「ここまでなら出せる」という金額を最初から入れた方がよいのでしょうか? 健康にはその方がよいのでしょうが……。
 

再びの天空の音楽

2015-02-01 10:14:19 | 絵画
 車のナビが壊れた先週の日曜日、実は再び高崎市美術館で「有元利夫展」を見てきました。前回は、時間がなくて、さっとしか見られなかったので、もう一度ゆっくり見ようと出かけたのでした。
 音楽を聴くときの浮遊感、それがもとになって、有元の絵には、舞い散る花弁やたなびく布片、空にぽっかりと浮かぶ雲、人が空中に浮いているものが描かれています。
また、彼の絵は、わざと絵具を削り取り、キャンパスの生地を出して「風化」を表現しています。風化とは、時間がものを覆うことであり、時間に覆われることで、その存在感が増すと考えられていたようです。西洋の静物画で、五線紙に書かれた音符がモチーフに描かれているのを目にしますが、音楽が暗示するのは時間だそうです。つまり、音楽は今だけ存在するもので、終わってしまえば消えてしまいます。そうした無常を表現するのが音楽らしいのですが、有元の絵やコラムを見ていて、そんなことを思い出しました。
 さらに、有元は様式というものを大切にしていました。その時代その時代で、ものを作る人々を支えてきたのが様式だというのです。彼はバロック音楽が好きでしたが、反リアリズム性、様式性、シンメトリカルな点が大きな魅力だと述べています。特に好きな作曲家はヴィバルディーだそうですが、マンネリに磨きがかかっていると述べています。様式美というものにこだわっていたのでしょう。
 まだやっています。お近くの方はぜひご覧ください。
 1900円で販売されている画集はいいですよ。有元の文章も収録されています。

有元利夫展 天空の音楽

2015-01-18 22:04:19 | 絵画
 高崎市美術館で開催中の「有元利夫展 天空の音楽」を見てきました。有元ファンの私は、わざわざ高崎まで出かけました。高崎市美術館はJR高崎駅下車徒歩3分といった至近距離にあり、交通の便はグッドです。建物は現代的で野心的な建築です。こじんまりとしていますが、そこが親近感をもてる感じで、小品をじっくりと見るには落ち着いていてよいと思います。
 今回は、有元の作品の中でも小さい作品が多く、そういう意味では、とてもよい雰囲気で鑑賞できました。
 12月から始まっていますが、奥様の容子氏によるギャラリートークが実施されてことをインターネットで知り、残念でした。それを知ったのは、すでにイベントの後だったのです。それでも、めげずに今日行って来ましたが、とても満足できる内容だったと思います。奥様の撮影した、在りし日の有元の姿が展示されていて、アトリエの姿を初めて知りました。こんなところで、こんな感じで作品を作っていたのだなと、納得できました。
 今回は「天空の音楽」と銘打っただけのことはあり、音楽にまつわる作品が展示されていました。改めて並べられると、有元と音楽の関係がよくわかって面白く見ることができました。静謐な画面から聴こえてくる音楽は、耳ではなく、目から感じられるという、実に不思議なもので、我々の五感(五官)とはどういうものなのかと、問題提起されたように思いました。そう思うと、有元の絵は哲学的です。
 前回、有元の展覧会を見たのは、東京都庭園美術館だったと思います(宇都宮美術館とどちらが先だったでしょうか)。今回は、小さな絵が多かったですが、粒ぞろいだったと感じます。2月15日まで開催しています。オススメします。

あっぱれ!歌麿の反骨精神

2014-11-09 10:06:41 | 絵画
 NHK教育で久しぶりに「日曜美術館」を見ました。今日の特集では、世紀の大発見と銘打って、去年発見されたという歌麿筆「深川の雪」が紹介されていました。横3.5メートルもある肉筆の大作です。驚いたことに、これは栃木で描かれた3部作で、他に「品川の月」「吉原の花」という、やはり3メートルの絵があるということでした。栃木は水運で栄えた商人の町で、歌麿のスポンサーだった善野喜兵衛という人物がいたようです。
 3部作のうち、「品川の月」「吉原の花」は先に描かれ、その後、江戸に戻ると蔦屋重三郎と組んで、美人大首絵で大ヒットを飛ばします。これは幕府の華美を禁じる政策を逆手にとって、色数を減らしてシックに描いたところが受けたようです。
 しかし、蔦屋重三郎が亡くなると、歌麿自身も幕府の取り締まりを受け、再び栃木へ向かいます。そして描かれたのが「深川の雪」でした。幕府認可の遊郭は吉原のみで、品川はたびたび取り締まりを受けた場所とのこと。歌魔はあえて品川を舞台として最後の大作に挑みます。それまでの2作に比べると、「深川の月」は大きいだけでなく、遊女の表情が生き生きと描かれ、風俗なども描き込まれています。笹色紅という化粧法を私は初めて知りましたが、歌麿晩年に流行したものだそうで、下唇だけを緑色に染めるという面白いものでした。それにしても、まさに歌麿の画業の集大成といってよい作品でしょう。歌麿が反骨精神を最後まで貫いたこともわかります。
 「雪月花」の3部作は栃木から海外に渡り、先に描かれた2作はアメリカに落ち着きます。「深川の雪」は昭和23年に銀座に現れ、松坂屋に展示され、敗戦で極貧状態にあった人々を勇気づけたといいます。あとは、どこで誰が秘蔵していたものか、興味の尽きないところです。
 箱根の岡田美術館で展示されていたらしいですね。今度はいつどこで見られるのでしょうか。ぜひ見たいと思いました。

世紀の日本画展

2014-03-09 06:36:43 | 絵画
 来年は日本美術院の再興から100年にあたるそうです。 これを記念して、東京美術学校設立以降、約130年にわたる活動を振り返る展覧会が、上野の東京都美術館で開かれています。この展覧会は前期と後期に分けて、作品の入れ替えを行って開催されていますが、既に後期に入り、会期も残り少なくなってきました。
 東京都美術館は改修工事のためにかなり長い間閉館していたと思います。新しくオープンしてからもう数年たったのではないでしょうか。私は今回、リニューアル後初めて館内に入りました。耐震工事が中心だったのか、見える部分ではあまり大きく変わっていないような気がしました。
 さて、火曜日に仕事を早く切り上げて出かけました。着いたのはお昼前でした。曜日や時間帯もあったかもしれませんが、シルバー世代の方々がほとんどで驚きました(私も他人のことは言えず、その中のひとりと言うことになるでしょうか)。日本の超高齢化社会を見る思いでした。意外に混んでいました。
 作品は巨匠の作品で、大型のものが多かったように思います。全部を見るのに2時間半くらいかかりました。見たあとの感想は、期待ほどではありませんでした。大きい絵がゆったりと並べられて、混んでいながら、余裕をもって鑑賞できましたが、それと同じように感想も濃密ではなかったように思います。120点ほどの作品を見たという気がしません。
 美術館を出てからはひたすら町を徘徊。昔からたまに行っていたカレー店に久しぶりに寄り、その後はいつも行く樽酒の店に行き、さらに先日行った串焼きの店で飲食し、途中下車の割烹に寄って帰宅しました。さすがに疲れた1日でした。

山口晃展を見ました

2013-12-29 08:54:51 | 絵画
 28日の土曜日、館林市の館林県立館林美術館で「画業ほぼ総覧 お絵かきから現在まで」と題した山口晃氏の展覧会をやっているのを見てきました。この美術館は群馬県2番目の美術館で平成13年に開館したようですが、水を取り入れたフラットで広大な外観にまず圧倒されました。山口氏はここで幼少期から高校卒業までを過ごしたそうで、ゆかりの土地での展覧会でした。
 氏の絵画は日本画的で、人間と自然、古今東西に加えて時代までも超越した不思議な世界を描いていました。きらりとセンスが輝く静謐な絵画という印象でした。ユーモアや遊び心も感じられる洗練された美でした。
 幼少のころの絵は興味深いものでした。消防車の迫力ある絵画にも驚きましたが、空想の世界を描いた絵もあり、その世界を今でも追っている姿がすばらしいと思いました。画家のルーツは幼少のころに作られるのだということを感じさせました。
 私も小さいころ、似たような絵を飽かずに描いていたことを思い出しました。才能の差ももちろんあるでしょうが、自分を磨かなければ凡人になるのは当然の帰結でしょう。
 1月13日までの開催です。ぜひご覧ください。


また違った楽しみ方

2013-11-12 23:49:36 | 絵画
 新しく購入した絵があります。初めて激しいタッチで描かれた油彩画を買いました。残念なことに額にはガラスがついておらず、仮縁のような感じで、絵画を保護しているだけでした。赤い背景に黒い縁でしたから、悪くはないのですが、このまま使うわけにはいかないと思っていました。
 少し前からネットで目星をつけていた額があり、先日の休みを利用してさらに検討しました。黒っぽい縁もよいのですが、思い切って白っぽい縁も悪くはないだろうと思って探していたところ、処分品でなかなか斬新なものが目に留まりました。白地に金が入ったもので、普通の絵にはどうかと思いますが、今回購入した絵にはむしろ合うのではないかと思われました。
 価格も手ごろだったので手続きをし、今日、届きました。思っていた以上に高級感があり、絵を入れてみるとなかなかよい感じに思えました。無難な選択をしないで正解だったような気がします。絵画のアバンギャルドな面が引き立ちました。
 今まで、額については、画廊等で選んでつけてくるのだから合っているのだろうくらいに軽く考えていました。正直なところ、それほど気にはしていませんでした。ついてくる無難な額に満足し、それ以上のものを期待していなかったのです。
 ところが、今回、自分で選んだ額をつけてみると、今までのように押し付けられていたのとは違って、自分の狙いも反映されて、絵が一段と引き立ったと思います。絵にはこういう楽しみ方もあるんだなあと気づきました。
 どんどん新しい絵を買っていくばかりでなく、自分の好みで額を替えて楽しむこともできるのです。また違った楽しみ方に気づいた経験でした。絵の奥深さを感じました。

中之条ビエンナーレに行ってきました

2013-10-13 15:01:37 | 絵画

 14日の体育の日、群馬県中之条町で開催されていた「中之条ビエンナーレ」に行ってまいりました。この日は9月13日から1か月開催されていたビエンナーレの最終日。それもあってか、連休の最終日だからかわかりませんが、どこへ行ってもかなりの人出がありました。
 毎年ビエンナーレが開催されていることは数年前から知っていましたが、正直、大したことはないだろうとたかをくくっていました。町おこしのために、若手のゲイジュツ家を集めて、奇をてらった作品をあちらこちらに展示して、人を集めているのだろうくらいに思っていたのです。
 ところが、今回、初めて行ってみて、そんなものではないということがはっきりわかりました。もちろん、私が行けたのは、中之条の中心である伊勢町エリアと伊参エリアの2か所だけで、あとのエリアは行くことができず、一部しか見ていないわけですが、その一部であっても、レベルの高さは十分に感じられました。若手を中心とした芸術家たちの斬新な発想や大胆な演出は見ていて飽きない、楽しいものばかりでした。光と影、鮮やかな色彩を駆使した幻想的で夢のある作品が多いと感じました。
 例えば、かねんて倉庫です。錆びたブリキの質感と、木製の壁板の継ぎ目や木の節から差し込んでくる光の調和。ここに作品を置きたくなる芸術家の気持ちはすぐにわかります。古いものが持つ時間と歴史が、何とも言えない空間を作り出していました。幼いころ、製材所の廃墟で遊んだ記憶がよみがえりました。
 来年は何度か足を運びたい、もっと多くの作品を見たいと思いました。来年まで健康でいたい、そんな力を与えてくれたイベントでした。



森田りえ子「オンナマエ」を購入

2013-08-01 18:08:48 | 絵画
 2010年に出た画集です。少し前からほしいと思っていたのですが、なかなか書店へ行く機会がなく、延び延びになっていました。それが、ネットの古書店にあることを知り、これも少し前から気になっていたのですが「まあ、いいか」と思いつつ、買わずにいました。今回、意を決して注文、昨日、ゆうメールで届きました。これは、ポストに入れてくれるので、宅急便のように手渡しでなくてよく、料金も安価で済むので、書籍などにはちょうどよいですね。購入した古書店も感じがよく、よかったと思います。
 さて、森田氏は日本画の巨匠です。花の絵も素晴らしいですが、この画集は「男前」という言葉に張り合って「女前」としたようです。女性の絵ばかり古今東西といった感じで集めてあります。氏の絵は、日本画ゆえに穏やかできらびやかであり、オリエンタルでありエキゾチックでもあります。女性は端正に描かれており、文句なしに美しいですが、その美しさは芯の強さや女性特有のしたたかさを感じさせるもの。精神性があるからこそ、その美も深いのだと思います。知的でありながらなまめかしいと言ったらよいでしょうか、不思議な魅力にあふれた女性たちです。


故郷で見た佐伯祐三

2009-08-14 16:51:37 | 絵画
 友人に誘われて佐伯祐三の展覧会を見ました。今や地方も立派な美術館を持っている時代です。大量の作品がゆったり展示されており、空いているので東京の美術展より快適に鑑賞できたかもしれません。
 今回の展示では、佐伯の生涯と作品を5つの時代に区切って、時代順に作品が展示されていました。パリまで、第一次パリ時代、帰国時代、第二次パリ時代、最後の三ヶ月の5区分です。これは時間の進行順ですからわかりやすかった。特に、ブラマンクに「アカデミック」だと作品を罵倒された第一次パリ時代、電信柱に垂直の動線を見いだした帰国時代、ユトリロの影響の上に文字やクローズアップ、人物の配置など、独創性を身につけた第二次パリ時代は、うまく構成され、わかりやすい展示だったと思います。
 それにしても、「モランの寺」「郵便配達夫」「ロシアの少女」といった代表作が、最後の3ヶ月で描かれているのはすごいと思います。中でも「扉」と「黄色いレストラン」の2枚には、作者自身が「最高の自信」があると病床で述べたそうですが、2枚とも1928年なんですね。展示されていた「黄色いレストラン」は絶筆の可能性もあるようです。
 「黄色いレストラン」は大きな作品ではなく、レストランの入り口の扉がクローズアップで描かれていて、左手に女性が立っているだけの絵です。ガラスの窓ごしに見るレストランの内部は黒で塗りつぶされていて、死の世界ではないかと思われます。黄色い扉や柱の重厚さも、荘厳な死をイメージしたくなる作品です。最高の自信があるという作品を、人生の最後に描けるというのはすごいことですね。人生の最後と言っても、わずか30歳で逝ってしまったのですから未練はあったでしょう。
 佐伯のまとまった美術展を見たのは5~6年ぶりですが、改めて見ても、すばらしい絵ばかりでした。