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観自在

身辺雑感を気ままに書き込んでいます。日記ではなく、随筆風にと心がけています。気になったら是非メールください!

栄光への4950キロ?

2015-12-06 16:21:47 | 映画
 週末、懐かしい映画をBS放送でやるというので、録画してすぐに見ました。
 石原裕次郎と浅丘ルリ子が共演していた「栄光への5000キロ」という映画です。
 裕次郎扮する五代はカードライバーで、浅丘ルリ子扮する優子とともにヨーロッパのレースを転戦しています。モンテカルロラリーで重傷を負ったときも、優子の献身があって命拾いしたのでしょうが、タフガイの面目躍如というところでした。
 日産のドライバーとして日本グランプリに参戦する直前、行動をともにしていたフランス人カップルに別れ話が持ち上がると、優子も将来に不安を感じ、フランス人の元彼の誘いでファッションデザイナーの仕事に戻る決心をし、五代のもとを去ります。
 やがて、サファリラリーのオファーがあり、五代はアフリカに旅立ちます。優子に見送られてスタートした後、90番スタートというハンデを負いながら、彼のブルーバードは順位を上げていき、遂にトップを走っていたライバルのフランス人の車を抜くのですが……。
 なんと、録画はそこで終わってしまいました。エッ?エッ?エッ?……一瞬CMかと思いましたが、録画自体が終わっていたのでした。内臓ハーデディスクの残量が0になっているのが、その証拠でした。たぶん、あと5、6分でゴールだったのではないかと思います……。
 実は、私は、この映画をロードショーで見ました。故郷の映画館で姉と一緒に見た記憶があります。あれから??年、初めて見ると同じように感動しながら見ていたのですが……。
 この映画、アフリカの大自然と「技術の日産」というメッセージは明瞭に伝わってきました。裕次郎氏はすでに体形的にちょっとダブついている感じで、そこだけが私との共通点を感じました。何と言っても浅丘ルリ子さんが美しい。国際女優と言った貫録はないかもしれませんが、フレッシュでオリエンタルな印象が新鮮でした。フランス人との絡みが多いので、セリフが少なく寡黙なところもミステリアスな雰囲気を出していました。シャワーシーンなどではもう少しだけサービスしてほしかったと思うのは私だけでしょうか。
 途中から急にナレーションが入るなど、不思議な映画ではありましたが、最後はハッピーエンドだったのか、それだけが気になります。知っている方は教えてください! ラストシーンは完走した車が並んでいる映像にナレーションが入るように記憶していますが、それも合っていますか?
 

STAND BY ME ドラえもん

2014-09-07 21:35:39 | 映画
 映画館で「STAND BY ME ドラえもん」を見てきました。なんで?とお思いでしょうが、マアマア、そこは深追いせずにいきましょう。
 「泣ける」「秀作」「興行成績もアナ雪に迫る」など、多少は耳に入っていましたが、ストーリーも知らず、ほぼ先入観なしで見ました。
 先日見てご報告した「夢は牛のお医者さん」にはかなり劣るものの、子供向け映画としてはよくできた作品だと思いました。ディズニーに勝るとも劣らない内容だったと思います。ジブリ作品のように日本のアニメの秀作として海外にも紹介してほしいと思います。日本のアニメの高い技術、日本の子供達の生活や心理を、伝えてくれると思いました。
 まず、丁寧に描きこまれた画面とキャラクターの表情の豊かさなどは出色でした。3Dバージョンもあるようですが、普通の作品でも十分に鮮やかで立体的な画面でした。実写やCGが使われているのでしょうか。ドラえもんが空想上のキャラクターである以上、実写よりはアニメがよいと思いますが、本のような漫画よりも、今回の映像はリアリティがあり、見事でした。空を飛ぶシーンや未来都市の交通網に入り込んだ場面など臨場感にあふれていました。
 内容は、ダメなのび太君がドラえもんに助けられながらも、自立しようと努力するという内容。周囲に気を配り、自分を卑下しつつも、何とか現状を打破しようと努力するのび太の姿は、典型的な日本人の子供かもしれないと思いました。ちょっとおっちょこちょいだけれど、まっすぐな性格は誰もが憎めないという感じです。
 結婚の決まったしずかちゃんにお父さんが言った言葉は印象的でした。「のび太君は頼りないが、他人の幸せを喜び、他人の不幸を悲しむことができる人間だ。そういう人を選んだ、選択は正しい。そんなしずかを誇りに思う」といった内容でした。人の幸福を喜び、不幸を悲しむことはなかなかできないことです。しずかちゃんのお父さんはさすがだと思いました。これからの時代、本当にそういう性格が大切でしょう。
 のび太やジャイアン、つねおほど、表情がはっきりしないしずかちゃんの表情は、とてもよくできていたと思います。
 「未来は変えられる」ということが、ストーリーの重要な要素だったと思いますが、のび太君は幸せです。ドラえもんのような人生の伴走者がいて、しずかちゃんのような女性とも結ばれるのですから、羨ましい限りです。
 私の敬愛する星野道夫氏は、親友がたまたま登山中に噴火にあって死んだという報に接し、そこで、一回きりの人生を悔いなく送ろうと覚悟を決めたと読んだことがあるような気がします。のび太は、一回きりの人生をドラえもんとともに切り開いていったわけです。
 私も一度きりの人生、もうそう長くはないですが、やはり幸せになりたいと思います。

夢は牛のお医者さん

2014-08-02 11:24:42 | 映画
 夏休みをとって帰省しています。私の故郷は地方の中核都市です。10年以上はたつでしょう、町に名画座ができました。映画館自体が減少している中で、名画座を新設することは勇気が必要だったはずです。市民のバックアップがなければ、存続は難しいでしょう。私も、どうなるかと注目すると同時に、帰省した時にはできるだけ行くようにしていました。地味ながら、質の高い映画を選んでいるという印象を受けました。
 昨日は8月1日、映画の日ということで、1800円の料金が1000円とのこと。応援するという点からすると矛盾するようですが、2本見ようと考えて出かけました。
 最初の上映は「夢は牛のお医者さん」という作品。すでに入手していたチラシによると期待できそうなドキュメンタリー映画でした。
 この映画は、昭和62年、雪深い山里の小学校から始まります。入学児童がいなくなった小学校で、校長先生が3匹の牛を新入生として迎え、子供たちに世話をさせることにしました。酪農が盛んな地域だったことがあり、牛の飼育になったのでしょう。子供たちは牛を友達として接し、学校生活を送りました。しかし、ある体重になったら売るという約束。子供たちは卒業式をして、成長した牛たちを送り出しました。子供たちも号泣していましたが、観客も皆涙をぬぐっていました。
 その児童の中に、一人の少女がおり、自分の体験をもとにして、牛のお医者さんになろうと決心します。彼女は、猛勉強を始め、岩手大学を経て国家試験に合格、地元に戻って見事獣医になって、現在は牛舎を回っています。幼いころの夢をかなえた彼女と、それを温かく支えた家族の姿に感動しました。
 26年間、どうなるかもわからない1人の少女の成長を記録し続けた監督もすごいと思います。どうなるかもわからないフツーの女の子を主人公にして、これだけの長い時間をかけて1つの作品を作り上げるという作業に、何事も待てなくなってしまった社会の拙速ということが重なります。
 ナレーションを担当したAKB48の横山由依さんもよい味を出していたように感じました。
 最近はあまり映画を見ていませんでしたが、近年見た作品の中では文句なくナンバーワンです。簡単にみられない作品かもしれませんが、今年の作品ですし、ぜひご覧ください。多くの人、特に小学生から中高生くらいの若者にはぜひ見てほしい作品です。絶賛します。とてもよい映画を作っていただいたスタッフの方々にも敬意を表します。
 もう1本見る予定でしたが、すっかり満足してしまい、この作品が終わって迷わず帰ってしまいました。
 

ポケモン映画を見ました!

2013-08-14 21:09:08 | 映画
 「劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ 神速(しんそく)のゲノセクト ミュウツー覚醒」というのを見ました。もちろん、いろいろなしがらみがあってのことですが、まさかこんなのを見ることになるとは思いませんでした。
 夏休みに入ってだいぶたつせいか、郊外の映画館は既に空いていました。
 私はポケモンの何たるかを知らず、興味も全くありません。どのポケモンを見ていても、可愛いと思えるようなものは1つもないくらいです。ピカチュウだって、どこが愛らしいのか全く理解できません。
 今回は、そのピカチュウは全く脇役で、ほとんど存在感はありません。主人公(サトシでしたっけ?)も脇役でした。主人公は、あくまでミュウツーというポケモン?で、彼女(彼?)の活躍が描かれていました。敵役は、ゲノセクトというポケモン。彼らは太古から蘇り?、現代のすべてを敵とみなして攻撃してきます。
 ストーリーとしては短絡的で拙速なところもありましたが、教えられたのは、その話し合い重視路線というか、平和主義です。相手が、こちらの言い分に聞く耳を持たず、一方的に攻撃してくるなら、それは正当防衛という観点からも反撃して許されるでしょうし、場合によっては相手を殺してもしかたがないということになるでしょう。しかし、この映画はあくまでも対話路線を貫き、最後は話し合いで和解するといった感じでした。「僕たちは仲間なんだ」という一貫した理念が、相手の心を打ち、心を開かせる結果になったのです。竹島問題も尖閣問題もこうやって解決しようというメッセージが読み取れました?
 私は不覚にも2回泣いてしまいました。さすがにポケモンを見て泣いたというのは、我ながら情けなく、自分もその程度の人間だったかと反省しきりです。
 劇場版のクレヨンしんちゃんは、大人でも感動する作品としてマークされていますが、私のような人間はポケモンでもあっさり感動してしまいます。クレヨンしんちゃんだけは見ないようにしようと思いました。

名作タクシードライバーを見る

2013-08-09 20:09:34 | 映画
 今日は平日ですが、週末にも休みがとれていなかったため、久しぶりに完全オフとしました。昨日は、どこかに出かけようなどと思ってもいたのですが、ニュースなどで報じられているような猛暑。結局、家から一歩も出ずに1日を過ごしてしまいました。
 何をするでもなく休養してしまったのですが、レコーダーに撮っていた「タクシードライバー」を見ました。
 昔の映画ですから若い方はご存じないのかな。名作の誉れ高い作品でしたので、いつか見たいと思い、テレビで放送されたときに録画していたのですが、見ないままに今日まで来ていました。
 ロバートデニーロは、男の私が見ても本当にセクシーだなあと思いました。私生活や社会に対する憤りや、野心といった、一般庶民が持っている感情を、タクシードライバーであった主人公はどんどん狂気へとエスカレートさせていくのですが、その過程が実に見事に描かれていました。孤独な人間の悲劇を見ていて、私も気をつけないと危ないかもしれないと真剣に思いました。それほどリアリティーがあったと思います。
 この映画、クライマックスはやけに長くくどいほどに描かれていると思っていたら、とんだどんでん返しが用意されていたのですね。このあたりも評価の高い理由なのだろうと思いました。アメリカの病める部分をえぐりだしているのだろうと思います。こういう部分では決して古くないのではないでしょうか。ボディーブローのようにズシンと腹に響く映画だったと思います。
 明日は今日より暑いようですね。仕事なので、頑張ります。

「剣岳~撮影の記」

2009-12-11 22:38:07 | 映画
「剣岳~点の記」に続いて「剣岳~撮影の記」を見ました。前者は、カメラマン木村大作氏が初めて監督した映画、後者はそのメイキング映像を集めて制作した映画ということになります。前者を映画館で見たときにも、撮影は大変だったろうと思いましたが、後者を見ると、「ああ、やっぱり、そうだろうなあ」と納得させられるしくみです。
「剣岳~点の記」は監督が新田次郎氏の原作から制作を思い立ち、自ら現地に赴いて撮影を決意したといいます。過酷な自然が相手ということで、撮影が難しい映画になると予測されましたが、監督はあえて制作に取り組んだばかりか、CGを一切用いず、ストーリーの進行に従って撮っていくという手法をとりました。それは役者が役に馴染んでいくために絶対に必要だと考えられたようです。香川照之氏は「山が撮らせてくれた(映画だ)」と言いましたが、よい天候をもたらしてくれた自然への感謝と、自然に鍛えられ成長できたことに対する感謝も感じられる言葉でした。浅野忠信氏が「登頂したときの感動ははかりしれないだろう」と言っていたのは、撮影隊がチームを組んで本当に剣岳の初登頂に挑んだような感じになっていた雰囲気を伝えています。
途中、スタッフが落石で重傷を負い、皆が山を下りて映画撮影を続けるかどうか考えた時期がありました。そこで、浅野氏が面白いことを言っていました。「自分はもう嫌だと思ったが、自分の中にいる幼い頃の自分に訊くと『お前ならやれる』とアドバイスしてくれた」と言うのです。浅野氏の心の中には、大人の現在の自分と、幼いころの自分がいて、ときどき会話を交わしているようです。彼のキャラクターの秘密の一端を知った気がします。
映画作りの過程が、それ自体ドラマになっているすごい映画、それが「剣岳~点の記」です。監督の「最後まで撮りきれるか」「これが完成したら俺は死ぬな」という悲壮な思いとスタッフの気持ちが見事に1つになっていました。12月11日にDVDが発売になりましたので、私は予約しました。もう一度、ゆっくり見たいと思います。そして、「剣岳~撮影の記」のことをもう一度思い出してみようと思います。


がっかりした「火天の城」

2009-10-02 00:48:12 | 映画
 昨日あれだけ語ったこともあり、今日は映画の日を利用して「火天の城」を見てきました。感想を一言で言えば「?」。一昨日に見た「幸せはシャンソニア劇場から」に比べると、比較にならない作品と言うしかありませんでした。あのフランス映画の人生を見つめる冷徹なまでの視点は感じられず、押しつけがましいエンターテイメントを目指す意図だけが露骨に伝わってきて、物語に没頭することができませんでした。唯一感動したのは、最後のスタッフロールで流れた中孝介氏の歌声でした。この人の歌には、以前から「魂」を感じていましたが、今回、誰かもわからないまま聞いていて、その素晴らしさに絶句しました。
 この映画には、そもそも家族愛のようなテーマが必要だったのでしょうか。安土城の建築棟梁になった又右衛門(西田敏行)が木曽へ檜を探しに行っている間、安土では戦闘のために大工5名が招集され戦地へ赴くことになったのですが、又右衛門の一人娘・凛(福田沙紀)は、恋人を戦に送られ、やり場のない怒りと悲しみを築城と父にぶつけます。このあたりから、なぜそんな短絡的な考え方をするのか描かれていません。したがって、夫をかばう母の田鶴(大竹しのぶ)の行動や言葉も、おりこうさんの答えにしか聞こえません。あとはステレオタイプの親子の対立と和解。説教じみた、教訓じみた話についていけませんでした。福田沙紀嬢は、新人のせいか、演技がどうかなといった感じでした。「お父さん」「お母さん」という呼称は、時代考証大丈夫なのでしょうか。イメージのせいか、違和感がありました。
 一方、敵地である木曾へ乗り込んだ又右衛門は、杣頭(そまがしら)の甚兵衛(緒形直人)に導かれてなんとか檜探しを始めます。何日も道なき道を歩くうち、二人に友情が生まれるのですが、それが丁寧に描かれていません。この檜が贈られてくることが作品の中では非常に大きな意味を持っているのに、二人の信頼関係が構築される過程がわからず、感動が薄れてしまいました。
 石工の清兵衛(夏八木勲)と共に、三万貫もの蛇石の運搬の指揮をとっていたところ、信長の命を狙う暗殺未遂事件が起こります。これも、エンターテイメントの要素が強く、無理にスペクタクルシーンを作ったようで興ざめでした。お話を軽薄にする効果しかなかったように感じます。
 大雨の夜、又右衛門が意を決し、親柱の根元を4寸ほど切ることになります。そのためには梁と親柱が支える城全体の信じられない重さを人力で持ち上げなければなりません。そこへ、全ての職人たち、女たちが集まって力を合わせます。この図式は「幸せはシャンソニア劇場から」と同じなのに、どうしてこうもわざとらしいのでしょうか。「感動しなさい!感動しなさい!」と焚き付けられるほど、見ている側の気持ちは離れてしまいます。
 あれだけ入れ込んで見た映画なのに、正直がっかりしました。あとは10月23日から上映される「沈まぬ太陽」に賭けましょう。邦画の実力はこんなものではないはずです。

明日は映画の日「火天の城」見れるかな?

2009-09-30 23:35:42 | 映画
 映画ってヤツは一度見始めると止まりませんね。ブログを見ていただいてもわかるとおり、1年ほどまったく見ていなかったのが、行き出すと続けてまた行きたくなるという魔力を持っています。
 さて、明日は映画の日ですね。仕事を早めに切り上げて、見に行くことができるでしょうか。実は、昨日、私が本当に見たかった映画は、邦画の「火天の城」なんです。でも、時間が合わずに、というよりも、たぶん、より面白いと考えて見たのが「幸せはシャンソニア劇場から」でした。そして、その選択は正解だったと思います。
 でも、やっぱり「火天の城」も見たいんです。それは、私の尊敬する世界的な建築家、安藤忠雄氏が「日刊ゲンダイ」の「火天の城」の特集で、熱く建築を語り、この映画にも触れているからです。
 1992年、スペインのセビリアで開催された万博に、日本パビリオンを作ったのが安藤氏でした。そのパビリオンは安土城の天守閣最上部を復元したものがメインでした。安藤氏は信長の独創性や先進性を語り、それが建築に投影されたモノが安土城であると考えているようです。その世界にも例のない大胆な建築には、ピラミッドより巨大な建造物「仁徳天皇陵」を作った日本人の独創性が受け継がれていると氏は述べます。数寄屋造りの繊細さも日本人の感性なら、三十三間堂や大仏殿といった壮大なスケールの建物を建てたのも日本人のエネルギーだと言うのでしょう。
 安藤氏は建築とは平和的な行為ではなく、相当な覚悟と人間力が必要だと述べています。安土城は信長というエネルギッシュな指導者がいて初めて完成するわけです。それに比べれば、現代日本にそんなリーダーはいません。建築が、技術ではなく、作った人物の個性や「思い」によるとすれば、現代日本の元気のなさという現実も、うなずけるように感じます。だからといって、ファシズムは困りますが、もう少し強い使命感や責任感のある政治家に登場してほしいものです。
 そんなふうに読んでいると、見たくなるんですねえ、「火天の城」。

幸せはシャンソニア劇場から

2009-09-29 22:33:58 | 映画
 今日は遅い夏休みをもらい、どうしようかと思案していましたが、いろいろ考えた揚げ句、映画を見に行きました。「幸せはシャンソニア劇場から」です。フランスで大ヒットした『コーラス』の監督、クリストフ・バラティエとプロデューサー、ジャック・ペランが組んだ作品です。
 1936年、パリの下町にあるミュージックホールのシャンソニア劇場は、経営不振のため閉鎖となります。30年以上この劇場で幕引きを務めたピゴワルは妻にも逃げられ、息子のジョジョとも引き離されて失意の日々を送ります。ですが、息子を引き取るためには定職に就くことが条件。ピゴワルは、芸人仲間のジャッキーとミルーと一緒に、再度営業を始めようと劇場を占拠してしまいます。そこに、歌手志望の美しい娘・ドゥースがやって来る。ドゥースはそこで歌の才能を開花させ、皆とともに劇場再建のために歌い出します。歌手志望の娘・ドゥースを演じたノラ・アルネゼデール。明るく華やかな美貌と伸びやかな歌声に魅了されました。最近は個性的な美人が多いように感じますが、彼女は久しぶりの正統派美人という気がしました。今後の活躍が期待されます。
 一言で言ってしまえば「人間讃歌」ということになるでしょう。フランス映画はうまいなあと唸ってしまう作品です。貧しい中年芸人達は、決して幸せではないけれど、一途に芸に打ち込み、それぞれの弱さ、悲しさを共有しあって生きている。現実という壁は厚く、希望がかなうことは少ないけれども、助け合うことによって道は開けていく。そういうことを感じさせてくれる作品でした。
 海外の映画はストーリーに奇をてらうところや破綻がほとんどなく、淡々と展開していきます。邦画にはない点だと思います。邦画は思い入れやサービス精神が横溢してしまい、かえって観客がしらけたり、どうしても納得できない不合理な展開があったり、説明不足や説明過多があったりと、どうもバランスが悪い気がしてしまいます。もちろん、邦画にもよい作品はありますが、人生を透徹した目で見る視点や態度は、まだまだ洋画の方に優れた作品が多い気がします。  
 平日の午前の回と言うことで、観客は十人ちょっとでした。もうロードショーも終盤のようですが、見る価値は十分にある映画です。

剣岳~点の記

2009-09-05 15:40:15 | 映画
 先日の余勢をかって、今日も映画館へ行ってきました。「剣岳~点の記」という地味な映画です。浅野忠信、香川照之という好きな俳優の共演であること、剣岳が舞台であることを知って見る気になりました。
 明治時代、国の威信をかけた地図作りが進められていましたが、地図の空白を埋めるため、剣岳の登頂が必要になります。頂に測量のため、基準点を作らなければならないのです。軍部は浅野忠信扮する主人公に白羽の矢を立てるのですが、その目的は測量から陸軍の威信をかけた初登頂へと移っていきます。剣岳は未踏峰であり、できたばかりの山岳協会と競争になって、マスコミの関心を集めていました。香川扮する案内人と剣岳に挑むわけですが、いろいろな障害や苦労があり、やがて陸軍の測量隊は剣岳の頂に立つのですが・・・・・・という感じのストーリーでした。
 浅野忠信の演技は、本当に自然ですね。役者っぽいところがぜんぜんありません。彼の台詞と他の人の台詞を聞いていると、その差ははっきりとします。それに、彼の目は静かに澄んでいますね。同性ながら惹かれます。香川照之も、大変な演技派ですが、今回は抑えた演技で新境地を開いたのではないでしょうか。彼は、故川谷拓三や西田敏行のような俳優になりそうで楽しみです
 他の出演者では、いつもながら役所広司、宮崎あおいさんは登場時間は少なくても存在感がありました。それに、松田龍平君は大きくなったんですね。松田優作そっくりで驚きました。将来が期待されます。夏八木勲が演じた行者は、ラストの伏線にもなっているのでしょうが、いない方が話が自然だったと思います。また、仲村トオルが演じる登山家達と心の交流が生まれるのですが、その過程が十分には描かれていないと思いました。
 それにしても、立山連峰、剣岳の自然の雄大さ、美しさが見事に描かれていました。この映画は映画館で見る価値と必然性があります。あの雄大な風景は映画館のスクリーンでしか再現できないものだからです。壮絶な登山の様子が続き、2時間半、見ていて疲れるくらいでした。この夏、尾瀬に行って燧が岳に登ってきましたが、あの程度でフウフウ言っている人間には、測量士は無理だと痛感されました。人生とは、だんだん可能性を失っていくことなのだと改めて思いました。

ディズニー映画「ボルト」

2009-09-01 00:11:40 | 映画
 久しぶりに映画館で映画を見ました。ディズニー映画の「ボルト」です。今、ボルトと言えば陸上選手が話題ですね。私が見た映画の内容は、陸上競技とはまったく関係ありません。
 ボルトは白い犬ですが、悪の組織に追われる飼い主の女の子を守るヒーローです。科学者である女の子の父が、ボルトを改造したため、彼には超能力が具わっていて、襲ってくる敵を次々に撃退して、女の子を守ります。これだけなら、なんてこともない子供映画に過ぎませんが、この映画はさらに奧があります。実は、ボルトの活躍は逐一テレビ局によって撮影されていて、人気番組になっていたのです。超能力も、膨大なスタッフがボルトの動きに合わせて作り出しているトリックに過ぎませんが、ボルト自身だけが、その裏話を知りません。つまり、ボルトだけが、常に命がけで女の子を守っているというわけです。 ところがある日、ボルトはひょんなことから荷物にまぎれ、遠くの街まで運ばれてしまう。女の子の元に帰ろうと旅を始めますが、その途上で、自分がただの犬であり、すべてやらせだったと知ってしまいます。彼はそれでも、飼い主の元へと帰るのですが、そこには既に次の犬がいてボルトを演じているのでした。絶望するボルトでしたが、撮影所で火事が起こり、女の子は取り残されてしまいます。その窮地を救ったのは、ボルトでした。女の子も新しいボルトではなく、本当のボルトを忘れられずにいたことから、再会した女の子とボルトは映画界を引退、郊外の家で楽しく暮らします。旅の途中で知り合って、ボルトを励ましてきた猫とハムスター、それに女の子のお母さんと一緒に。
 子供向けの映画なのにエンターテイメントに富み、ヒーローの絶望や孤独、過ぎ去った栄光などが題材になっていて、すごいと思いました。コンピュータグラフィックスを駆使した映像は、ジブリとはまた違った趣があります。微妙な表情などは、西洋と東洋の差はあるのでしょうが、「ボルト」の方がよく描けていたように感じます。
 子供映画と侮るなかれ。大人が見ても面白い映画でした。

映像の恐ろしさ

2008-08-25 00:27:56 | 映画
 「泥の河」「伽倻子のために」「死の棘」「眠る男」「埋もれ木」を監督した小栗康平氏は寡作ですが、優れた作品を世に送っています。静謐な映像は、私もファンのひとりです。
 小栗氏が小学校で「映像」に関する次のような授業をしたそうです。氏は児童達にバラの花を見せ、五感でそれを認識させた後、花束を花瓶から抜き取り、床に投げ捨てる芝居をします。そして、自分が怒っていて、それを踏みつけたい、誰か代わりにやってくれないかと言う。皆、生きた花を踏むことに躊躇します。そこで、氏がバラを踏みつけると、児童達は緊張します。その模様はビデオに撮影してあって、児童を席につかせた後に、映像で見せる。それがどう違うかというのが、授業の核心になります。画像には痛みがなく、他人事のようであり、抜け落ちてしまったものがたくさんあるということに気づかせるのです。
 私達は映像の時代に生きていると言ってもよいと思いますが、大切なものが抜け落ちていることに気がつかないとしたら、恐ろしいことです。百聞は一見にしかずと言い、視覚は物事の認識に重要な地位を占めるでしょうが、万能ではないと改めて気づかされます。
 このように映像に対して鋭い感覚を持つ小栗氏が、次に何を描いて私達に問題を投げかけてくれるのか、次作が楽しみになりました。

久しぶりに映画館へ

2008-06-21 15:40:45 | 映画
5月24日
久しぶりに映画館へ
 本当に久しぶりで映画館へ行きました。ロードショーは1800円になっていたんですね。高いなあと思いつつ、はしごして2本見てしまいました。
 上映時間の関係で、「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」から。トム・ハンクス主演だから見たので、ジュリア・ロバーツは初めて映画で見たかも。アフガンを救った下院議員の物語ですが、男だったら誰でも憧れるような主人公をトム・ハンクスが好演していました。でも、ソ連の恐怖から人々を解放したアメリカの宣伝映画のような気もして、ちょっと複雑な気分でした。
 本命は「最高の人生の見つけ方」でした。テレビCMを見て、ぜひ映画館で見ようと思い立ったのです。大富豪のジャック・ニコルソンと、勤勉な工員モーガン・フリーマンが病棟で知り合い、病院を抜け出して、最後にやりたいことのリストを実行していく物語。オープニングのシーンがよくわからないまま、物語が展開していくのですが、ラストシーンでその意味が理解できるという趣向は凝っていました。陳腐なテーマのような気もしますが、老俳優の渋い演技と舞台のスケールの大きさが、妙な先入観を吹き飛ばしてくれました。大富豪でも一工員でも、人生の意味や重さは変わらないのだというメッセージを受け取りました。
 映画ではありませんが、NHKのTVドラマ「トップセールス」も久しぶりに楽しめたドラマです。高度成長期は自分の過去と重なるところもあるので、素直に共感できるのでしょう。現代とはまったく違って、誰もが明日に希望の持てる時代でした。あと2回で終わるのが残念です。