白神山地マタギ伝~鈴木忠勝の生涯 根深誠 七つ森書館
ヒマラヤ登山なども行い、探検家とも言えるような著者が、白神山地の伝承マタギと知り合い、折々に聞いた話から、自然と人間との関わり方について考察した本です。マタギとは山で狩猟を生業とするハンターだと思っていましたが、大自然と文化的に結びついた存在として再認識できました。故鈴木忠勝氏の発言が、かなり読みやすく改変されて、多数収録されていますが、方言による温かみのある語り口が、お人柄をよく表しています。筆者と鈴木氏の交流の深さが感じられます。
この本からマタギの「文化」を教えられました。例えば、獲物を射獲したあと、クマやカモシカなどの獲物別にそれぞれの祈りや儀式を行い、獲物の成仏を願い、自己の罪を浄罪を行ったこと。作法や呪文などが細かく決まっていました。過去の事故から6人では狩りをしない、4頭いるクマは3頭しか撃たない、囲炉裏などの火に頭を向けて寝ないなどといった迷信が生まれ伝承されてきましたが、それらも文化に含めてよいと思います。クマの絵馬が安産を祈って奉納されたことなどは意外でした。すべて自然への畏敬の念が感じられるものです。
白神山地と言えば、世界自然遺産として人気がありますが、道路建設反対運動がきっかけになって、その自然がクローズアップされ、世界遺産へと結びついたことを初めて知りました。
現在、白神山地は行政によって厳しく立ち入りが制限され、漁猟や山菜採取が禁止され、先人が切り拓いた道が失われようとしています。マタギの小屋も撤去され、木などに祈りや目印のために名前や日時を刻んだナタメも、落書きの類として罪悪視しています。手つかずの自然を標榜するあまり、人間と自然との結びつきを無視して、文化を消し去ろうとしているのではないか、筆者はそんな疑問を投げかけています。
鈴木氏の死によって伝承マタギがいなくなり、その文化が失われると同時に、自然と人間との関わりという一つの貴重な事例も終焉を迎えてしまうようです。
ヒマラヤ登山なども行い、探検家とも言えるような著者が、白神山地の伝承マタギと知り合い、折々に聞いた話から、自然と人間との関わり方について考察した本です。マタギとは山で狩猟を生業とするハンターだと思っていましたが、大自然と文化的に結びついた存在として再認識できました。故鈴木忠勝氏の発言が、かなり読みやすく改変されて、多数収録されていますが、方言による温かみのある語り口が、お人柄をよく表しています。筆者と鈴木氏の交流の深さが感じられます。
この本からマタギの「文化」を教えられました。例えば、獲物を射獲したあと、クマやカモシカなどの獲物別にそれぞれの祈りや儀式を行い、獲物の成仏を願い、自己の罪を浄罪を行ったこと。作法や呪文などが細かく決まっていました。過去の事故から6人では狩りをしない、4頭いるクマは3頭しか撃たない、囲炉裏などの火に頭を向けて寝ないなどといった迷信が生まれ伝承されてきましたが、それらも文化に含めてよいと思います。クマの絵馬が安産を祈って奉納されたことなどは意外でした。すべて自然への畏敬の念が感じられるものです。
白神山地と言えば、世界自然遺産として人気がありますが、道路建設反対運動がきっかけになって、その自然がクローズアップされ、世界遺産へと結びついたことを初めて知りました。
現在、白神山地は行政によって厳しく立ち入りが制限され、漁猟や山菜採取が禁止され、先人が切り拓いた道が失われようとしています。マタギの小屋も撤去され、木などに祈りや目印のために名前や日時を刻んだナタメも、落書きの類として罪悪視しています。手つかずの自然を標榜するあまり、人間と自然との結びつきを無視して、文化を消し去ろうとしているのではないか、筆者はそんな疑問を投げかけています。
鈴木氏の死によって伝承マタギがいなくなり、その文化が失われると同時に、自然と人間との関わりという一つの貴重な事例も終焉を迎えてしまうようです。