Now+here Man's Blog

Surf, Run and Trails / Endurance For Fun

インスリンショック

2017-11-30 00:03:01 | ランニング

前回の湘南国際マラソン、35キロ地点で魔物が待っていて、
スロー→完全ストップ→ReStart→二宮折り返しで足もつれて大転倒
こんな醜態をさらしてしまい、ゴール後は感動どころじゃなく悔しさでいっぱいになった。

それでも前半の貯金のおかげで3時間29分59秒(自分の時計でね)
あと1秒とはなんとまあギリギリっす。

過去、100キロマラソンでも、トレイルレースでもびったり止まるってことはなかった。
なんで、湘南国際で止まっちゃったのか。。。

これ、原因は明確っす。
最近、いろいろ調べてわかった。 

原因は、インスリンショック。
スタート間際直前まで、チョコ食ったり、バナナ食ったり、
オニギリ頬張ったり、ついでにエナジードリンク飲んだり、
これで血糖値がMAXになったのだ。
血糖値がこうやって急激に慢性的に上がった状態では、
血糖値を下げるべくインスリンが大量分泌する。

この低血糖症状はスタートから延々に続き、
10キロの茅ヶ崎公園で疲れを感じ、
20キロの江ノ島折り返しでペースダウン、
そこから35キロ大磯までレロレロヘロヘロ。
そして戦意喪失、止まる、天を仰ぐ、転ぶ、最後の最後は力を振り絞り、、、

どうもこれがインスリンショックのいかにも的な例のようだ。

だからせっかく3日前からカーボローディングしたというのに、
活躍すべきグリコーゲンがインスリンのせいでぜーんぶパーになったのだ。

もうこうなるとエナジージェル摂っても無理。
棄権して完全に休息モードにしない限り復活しない。

これ、オレだけじゃないね。
こういうエネルギー摂取に関しては情報が錯綜している。
直前はバナナ食え!みたいな。
スポドリがっつり飲んどけ!なんてね。

だからみんな、30キロ、35キロでバタバタ倒れ始めるのだ。
ガードレールにしがみつき微動だしない選手。
体育座りしてる選手。
大の字で天を仰ぐ選手。
放心状態で立ちすくむ選手。
痙攣してピクピクしてる選手。
ストレッチャーやAEDまで出動。
意外と修羅場になってるのね~。

とにかくだ。
レース前は少なくとも3時間前に食事終了。
米、ウドン、餅ね。
玉子かけご飯はNG。玉子って消化悪いのだ。
スタート2時間前からは何も食ってはいけません。
でも水分は摂る。クエン酸入れたやつね。
Shotzエレクトロライトパウダ-とかね。

単糖類、多糖類いずれもダメ。
アミノバイタル パーフェクトエネルギーのようなドリンクもダメ。
思い切り血糖値が上がる。
スタート30分前にBCAAをぶち込んで、スタート号砲を待つ。

で、走り始めたらインスリンは分泌されなくなるのでジェルや甘いものを摂取してもOK。

今回は10キロまではノー摂取。
10キロからマルトデキストリンのみ摂取。
最後の最後にエナジージェルですな。

湘南国際では海鮮しらすユッケ丼、湘南海鮮クリームコロッケ、湘南バターどらやきなどなど
美味いものがエイドに仰山並んでおる。

そんなの食ってる時間はない!
ゴール後のビールまで我慢!!


エイジ グレード

2017-11-27 00:00:20 | ランニング

エイジグレード (Age Grade)という考え方がある。

これ何かというと、55歳のオレの場合、フルマラソンの記録が3時間25分だとする。
(今週末、せめてこのタイムは叩き出したい)

タイムは、一般的には、どんどん下降線を下る。
それはすごく寂しい。

でだ。
オレがもし40歳だったら、、、3時間0分42秒
全盛期30歳だったら、、、2時間55分43秒
さらには15年後70歳のになったときのタイムは、、、3時間57分18秒

これ、エイジグレード計算ツールからである。

WMA(世界マスターズ陸上競技連盟)が開発・作成した「年齢別テーブル(WMA Age-graded Table)」から引っ張ってこれるようにしてる。

男性の場合ピークは30歳で計算されている。
40歳のときと5分しか変わらないが、練習をちゃんとして体重増減なしであれば、10年たっても5分しか落ちない、ということだ。
しかし、40歳超えると急降下衰退していく。
40歳のときはほぼサブ3でも、50歳で3時間16分5秒となる。

グラフでは30歳を最下点として加齢とともに放物線状にタイムが増加していくのだろう。

これは恐ろしくも悲しくも現実である。
だからこそ、それなりの年齢でタイム更新していくというのは物凄いことなのだ。

とにかくオレは30歳で、サブ3 2時間55分だった。
それは、とくに何もせず、55歳の今と同じようなライフスタイルで、トレーニングスタイルで出したタイム。
ということは、もっと走り込み、筋トレして、努力を重ねれば2時間30分も夢ではない。
そういう資質を持っていたのだ。

そんな風に勝手に思い込む。

30歳の時、湘南国際マラソンでは優勝候補にいた。

それから25年、雲上人となりオレはまだ走っている。

まあIFの世界だけど、そう考えるとラン経験の少ないオレではあるけれど、
ポテンシャルとしてはレジェンドランナーっつうことだ!

なかなか夢がある、楽しいツールだよ。


Krishna cloudflash

2017-11-22 19:22:04 | ランニング

 

5時50分。
目覚めるも部屋の中が冷え切っていて起きれない。
布団の中でFBチェック。
ラン友がすでに朝陽を浴びて走っている。
先を越された気分になる。

起きてまずお湯を沸かす。
お湯にマルトデキストリン溶かして、それだけ胃に入れる。
全く味がない。甘さも感じない。ただのお湯飲んでるみたい。

(あとで分かったけど、多糖類でも直前摂取はダメ)

ジャージを履くが考え直して脱いで、短パンに履き替える。

長袖、短パン、クラウドフラッシュ。
レース10日前。
ワラーチからシューズに変える。
レース当日に向けて、こいつに血を流し込むのだ。

外に出る。気温4度。ピリッとした空気に目が覚める。
外気が余分な脂肪を削ぎ落としてるのではと思うほどシャープに冷え込んでいる。


iPodを再生する。
iPod shuffleなので走り出しに何がかかるのか、
再生ボタンを押すのは毎回のランのささやかな楽しみだ。
今朝はヴァン・ヘイレンのJUMPから始まった。

あのイントロで一気に気持ちに心臓に脳に腕に脚に血が勢い良く流れる。

海の方から陽が上る空はグレナデンシロップが底に沈んだカクテルみたいだ。
1日の希望などもはや何もないし、望まなくもなったが、
こういう朝の天気にJUMPのイントロで、生活や人生は捨てたものではないと思う。
それは錯覚でも思い過ごしであっても、そう思うこと自体がとても重要だし、
実際に、朝は、音楽は、ランはそうしてくれる。
そして本当のところ、捨てたものではない。

家を出てしばらくすると海に出る。

ビーチ沿いのサイクリングロード、エンジンが温まる。

ここでフォームや着地をチェックする。内向して身体の動きを感じ取る。

シューズを履いても無意識でミッドフットになってきた。
クラウドフラッシュはワラーチより、どの他のシューズよりケイデンスが伸びる。
スピードボードの反発なんだろうな。
それにとても軽い。アッパー素材が圧迫せずにホールドしてくれる。
ホールド感がありながらの開放感は何も履いていないようだ。

朝のラウンドコース8キロが終わりに近づく。
バス停で並ぶひとたち。
自転車を漕ぐ人たち。
通勤、通学する人でロードが活気づいてくる。

その人たちに逆行して走る。
オレは彼らより多少なりとも素晴らしい朝を迎えたはずだ。
眩しい朝陽を浴びてバンバン身体を動かしてJUMPを聴く素晴らしさってラン以外には思い付かない。
それが徳で、それを得ることは心にとってのBCAAでLグルタミンになっているということだ。

52歳からランを始め3年。
でも、今日まで、満足行くまで走り込めただろうか。
何かと理由をつけてサボったりしたなあ。
食事管理などした試しもない。
オレはストイックな性格なので追い込みは出来るのだが、
気持ちと年齢が相反していて怪我に悩んだ。
たった3年だけどこれだけは言える。
何かを始めるのに遅いことはない。
熱い情熱さえあれば誰でもできる。

走りながらいつもこういうことを思う。まだ走れると。

とは言いながら不安もよぎる。いつまで走れるのかと。

そんなことわからないので走れるときに走る。走れるところは走る。


サブ4  30%
サブ3.5  12%
サブ3  3%

フルマラソン完走者の統計データである。
サブ4である4時間切りがいかに大変なことか。。
サブ3はもはや超エリートである。

3時間20分が10日後の湘南国際マラソンの目標。
3時間20分で走りきろうと思わない。
3時間20分の間、耐え続ける。
山を忍耐で登り続けてきた。
3時間20分の耐久レースに臨むのだ。
3時間20分、静かにその場で足踏みをする。
景色は勝手に流れる。
心を無にして身体そのものがマントラを唱える。

ハレークリシュナ ハレークリシュナ
クリシュナ クリシュナ ハレー ハレー
ハレーラーマ ハレーラーマ

忍耐強く、堅忍不抜の精神で、本当に謙虚な気持ちで唱える時、
純粋な神への感謝の気持ちが目覚め、法悦感の渦に浸れると言われている。

都度のレースが人生の集大成。
いつもそう思ってる。
しかもまだ終わらない。


Appleのそば屋

2017-11-16 00:22:30 | ThinkAbout..

仕事の話だ。
顧客の顧客、そのまた顧客はAppleだったりする。
iPhoneは世界中、どの工場で作っても、どのiPhoneも寸分違わず同じでなくてはならない。
そのために、中に入っている部品も然り、部品を作る製造装置も同じことだ。

これをAppleは1次サプライヤーへ教育するのだが、
2次、3次サプライヤーにも教育しなさいと言ってくる。当然だ。

で、オレはそれを自分の会社のサプライヤーへ教育する。
まあ、教育と言っても誰かが講師になるのではなく、web上で受講し、最後にテストをするのだ。
今時なんだね。まあそんなんで効果あるのかなって思うけど。

これ、サプライヤーの対応が意外とおもしろい。
受講依頼をして、承知の旨をすぐ連絡してくれる人。
受講済みを電話で報告してくれる人。
来社の際に、口頭報告してくれる人。

対応がいいところは、実務で納期回答もいいし品質もいい。
そういうものだ。

ところが、その受講依頼をしてもナシノツブテの人がいる。
税金の督促電話は個人問題なので対応できなくとも、
ビジネスではちゃんと対応した方がいい。

で、期限が過ぎたので、株式会社ナシノツブテに電話した。

「お世話になります。web受講の件ですが進捗どうでしょうか?」
「はっ?え~っと、なんのことでしょうか???」
「11/1に開封確認添付して送ってますよ。開封されてますよ。」
「えへへ、そうでしたっけ。。」
「えへへじゃないでしょう。期限は昨日なんですけど、お忙しいでしょうから、、今週末までできますか?」
「はい、わかりました。で、どうやって受講するんすかね?」
「どうやってって、、、、メールにちゃんと書いてますよ。まずメール読んで下さいよ。
その上で不明点あれば聞いてくれたらいいでしょう。」
「ですよね。ですよね~。」

電話で話してて、とてもいい加減な人なんだろうなと思った。
いい加減な人は声の質もトーンもいい加減に聞こえる。
実際会ったことはないのだが、絶対ザキヤマに似た人であることを祈った。
その方が、オレもそんなにカリカリせず、いい加減=愛嬌にできるからだ。

「で、いつやってくれるんですか?週末までだいじょうぶ?」
「今やります。今!今すぐやりますよ!」
「いやいやいや、そば屋じゃないんだから!」

思わず、本当に思わず言ってしまった。
その担当者はそば屋か!実家がそば屋か!

オレも相当いい加減な男だ、と言われるが
オレがいい加減と思う男はかなりいい加減に違わない。


科野の国ラウンドトレイル ドMバンザイ参戦記

2017-11-13 00:08:35 | ランニング



2017/11/11 晩秋の長野県千曲市で行われた第3回科野(しなの)の国ラウンドトレイル
ロングコース32キロに参戦。 今回でトレイルレース2回目である。

白馬では足の甲を痛めていたので下りで速度を稼げず、悔しいフィニッシュとなった。
白馬の素晴らしい光景、心温まる応援があっただけに、余計に悔しかった。

良く走りきった!、と両手を強く握りしめ、高く上げて栄光のフィニッシュを切りたい。
フィニッシュしても本当に満足ってなかなかない。
エイドで長い時間休んでしまったり、思わずも歩く距離が長くなってしまったり、反省すべき点は必ずある。
それが多ければ多いほどフィニッシュの感動は薄れるし、腕を高く挙げる勢いも弱くなる。
だから、白馬が終わり、それから2ヶ月の間、その悔しさを忘れずに、逆に大切に育んだ。

育んだ悔しさを次のレースにぶつけるために練習しなくちゃいけない。
でもトレイルの経験がまだまだ少ないので、練習方法などわからない。
だから、こうするしかない。
エイドでは休まない。
下りではとにかくぶっ飛ばす。
登りでは絶対立ち止まらない。
とにかく前へ、前へ、前へ、前へ。
走ってゴールできるというこは、まだまだ余力があるわけだからね。

そして11/11レース朝を迎える。
当初は日本海低気圧により雨、強風予報。
予報が変わったのは前日。
低気圧通過が速まったのだ。
雨は未明だけで、寝起きに窓から見る雲の切れ目からは青空が覗いてきた。

8時に会場に入る。

(スタート前のアップはちゃんとね、1。)

(2。)

(3,はい!)

会場には科野歴史館がある。そこには萌えるような山々に囲まれ弥生時代の再現住居や古墳がある。
数時間後には走っているだろう稜線がスタートゲートから遥か遠くにクッキリと見える。
稜線はとても遠い。そしてとても高いところにある。

あそこに辿り着くのに何日かかるのだろうか、、、そんな距離感がある。
もし1年前ならそう思った。あんな遠くへ行くなんて時間がいくらあっても無理。
今は違う。あの遥か遠くに見える稜線の頂き、鏡台山までは2時間半だ。
あそこまで自分の足で。2時間半で辿り着く。
できるのか? わからない。でもやってみる。やる。

歴史を巡る古代トレイル。
スポンサーのモントレイルのフラッグが立ち並び、
フーファイターズがBGMでガンガン鳴っている。
トレイルのスタートはたまらない高揚感で包まれる。これが大好きだ。

(茅ヶ崎ファロス陸上部3名、スタート準備ヨシ!右後ろの遠くの稜線を右から左に走る。)

これからすべてのランナーが痛みと辛さを思う存分味わいに行くのだ。
それなのになんなんだろう、選手の笑顔、盛り上がり。
ドMバンザイ、まさに変態祭り。
カウントダウンが始まり、Ready Set、ホーンとともに一斉スタート。

出走は400人くらいいたと思う。
レースはみんなのレース、一人ひとりのレース、でオレ様のレースでもある。
だから最初から飛ばせ! GO GO!!!
、、、、とは言ってもこの勢いを維持するのは難しい。
もう息切れが、、、、苦しい。。
呼吸は心肺が温まってくると落ち着く。でもその前に登りがあったらアウトだな。
と思ってた矢先に登りが現れる。そういうものだ。
トレイルはそういうふうに出来ている。
でもトップは登りもどんどん走っている。きっとそのままフィニッシュするんだろう。

トップ集団はすでに遥か前方。しかもまだ1キロ、2キロなのにどんどん後続に抜かれる。
小さなアップダウンを繰り返しながら登り基調のコースに入っていく。
そして全て登りのコースになる。
さあ、修行僧ならぬ修行走の始まりである。

急斜面は落ち葉に覆われ、そして未明の雨でスリッピー。
何度か足を滑らす。地面に手を付く。その度にリズムを崩す。いらつく。

最初のエイドにやっと着く。
スタートから10キロ。
コーラを2杯がぶ飲みして休まずに再スタート。
目の前には戦意を喪失させる先程より更に急な斜面が。
丹沢のヤビツコースが一番きついと思っていたけど、
あんなのは楽勝だな、と思わせるくらいエゲツない。
しっかり目の前の岩を手でホールドしないと足が上に上がらない。
この登りでの順位が恐らく最後まで続くだろう。

(忍耐、根性、気合、3種類バランスよい斜面仕上げになっております)


100m進むのに何分もかかる。脚は震え始め、汗が滴り落ち、頭がぼーっとしてくる。
這った体勢のまま動かない者、大木を背に放心してる者を横目に登り続ける。
意識が一瞬遠のいてもいいように、歩調だけは脳の管轄外にする。
脚はマシーンなので痛みとか辛さに関係なく動かせるようにする。

なんてクールなことを言ってるが、
この調子で果たして1時間持つだろうか、いや数分だろうか、、、
ただただそういうことを考える。
つらいことだけを考える。
この上り坂にいるランナー達はきっと同じことを考えている。
辛さだけを考えている。
ツライツライをマントラのように唱えて登る。

白馬では、なんでこんな事やってるんだ??と登りながら考えたものだ。
でも今回は少し違っていた。
このツライツライ、自分にとってはいつものツライと少し違った。
ツラ楽しいのだ。こんな辛いこと一般の人は味わえない。
いやーたまんねー!最高!って思ったのだ。
M度ではオレは少し成長したのかもしれないね。



やがてピークに到着する。12時ジャスト。スタートから2時間半。
目標通りだ。なんだできるじゃねえか。

激登終わり下りのパートに入る。
登りで使った筋肉はそこから休憩に入る。
下り用の筋肉にスイッチ。
両頬を両手でパンパンと叩き、気持ちを入れ替えてダウンヒル開始。
紅い落ち葉で埋め尽くされたトレイルを走る。
ここから真のトレイルランニングだ。
下りを楽しむために登る。下りには、辛かった分と同じ絶対量の幸せが待っていた。
天国のようなフカフカ絨毯。明るい陽が差しこむトレイル。
遠くには真っ赤に萌える山々。
思わず声が出る。吠える。野生に帰る瞬間、それがダウンヒル。
一人抜き、二人抜き、三人四人、勢いはその次の登りでも変わらない。
ここでやっと調子が上がってきた。
シングルトレイルで前方に選手がいたら道を逸れて前に出る。
とにかく走れるところは走る。
必要なのは、今オレは選手だということだ。
参加者ではない。選手だ。

後半になると同じレベル同士での凌ぎ合いになる。
下りで抜くが登りで抜かれる。登りで抜いても下りで抜かれる。

やがてV字の深い急下りが目の前に現れる。
Vにはぎっしり落ち葉がたまり、腐葉が始まっている。
落葉はこうやって土になっていくんだろうな、という自然の製造工程だ。
下り始めると、膝まで埋まる落ち葉が衝撃的だった。
このようなコンディションは初めてだ。
この急斜面を足元に躊躇して止まっている選手が数人いる。
数キロ前の登りでオレを思い切りぶち抜いた選手もそこで止まっていた。
相当急だったし、根があったり石があったりで落ち葉の底が予測できないのだ。

でもそういうところは根も石もない。
根拠は一切ないが、何も無いようにできているのだ。そういうものなのだ。
だから滑り降りれば良い。
急斜面パウダースノースキイングで。
水が長るるが如し。走ってはいけない。自ら滑り落ちるのだ。
そこでオレは水を得た魚になった。
波を得たウインドサーファー。
雪を得たスキーヤー。
落ち葉を得たトレイルランナー。

選手同士の抜きつ抜かれつはコップの中の粉が撹拌されて落ち着かない様子と同じだ。
やがてコップの水流はなくなり、粉は底に落ち着く。それが20キロ地点。
一旦林道に出る。だらだら緩やかなアップダウンを繰り返しながら最後の山に続く。
その20キロ地点から前後誰もいないままフィニッシュを迎えることになった。
(実際は3人しか越していない。抜かれてはいない。)
林道も、登りも下りもずーっとだ。

まさにコップの底に沈んだ粉のように時間の止まった信濃路を静かにコツコツ前へ進んだ。
あまりの静寂に、あまりの人気の無さに、
実はオレはもともとスタートしていないのでは?
レース自体に参加していないのでは?
ここは本当に信濃なのか??そんな錯覚に陥った。

走っていると筋肉だけではなく脳も相当疲れる。
回りに人気はないし、なんとも不思議な気分になった。
夢を見ているような気分だ。

それでもオレはそれなりに走っていたし、
道なき下りの斜面はコーステープを探しながら走った。

そう、コーステープがあったから、これは確かに大会なんだ。
沢の底へ行ってしまいそうな魂を引き摺り戻した。
下りスピードを上げる。

道なき道を、たぶんこっちだろう的な感覚で走る。これが楽しかった。
このパートは独りぼっちでも寂しくない。
アドベンチャーワールドへようこそ、みたいな感じで懐かしささえあった。
幼少期の家から幼稚園に通う道にこういうところがあった。
道を外れるとトレイルアドベンチャーがあったのだ。
昔はこういうところで鬼ごっこしたりしたんだ。

トレイルランニングは懐古主義でもある。古く懐かしい。山の景色がそうさせる。

これでもう終わりだろう。つづら折りを降りる。
ウオッチを見る。30キロだ。
あと2キロ。もすぐ下界。
その地点にこのレース運営団体「北信濃トレイルフリークス」のメッセージボードが立っていた。
「このレースに出てくれてありがとうございます。
コースはいかがでしたか?お疲れ様でした。
最後力振り絞ってください」
記憶が定かではないが、そんな内容だったと思う。
素直に感動した。胸が熱くなる。
とても素晴らしい運営団体で、あちこちのコースに努力した整備の跡があった。
彼らの熱い思いが伝わってくるコースなのだ。

トレイルの出口に神社があった。
そこで無事下山できたこと。
このレースに出れたこと。
健康な身体であることに鈴を鳴らし手を合わせ頭を下げた。
そしてラスト、ロードのパートに出た。
力走した。力走できた。でもとても長い2キロだったなあ。
会場に入る直前に後ろを振り返ると今降りてきた山が真っ赤な紅葉で萌えていた。

今回、一瞬たりとも諦めることはなかったよ。
もうダメだとか、もうやめたいとか、もう無理とか思わなかった。
思った時点で足が止まるからね。

フィニッシュゲートが見える。
ゼッケン№、名前が読み上げられる。
良く走りきった、と両手を強く握りしめ、高く上げて栄光のフィニッシュを切った。

レースディレクターが一人ひとりを迎えてくれた。
オレは、いいレースを開催してもらったことに礼を言い深々頭を下げた。
後半は一人で走ったけど、一人であって独りではない。
こうやって運営をして待ってくれてる人達がいるのだ。




4時間54分。32キロ。累積標高2120m。
本日のトレイルジャーニー終了。

 

オレはあらためて思ったよ。
トレイルはとてもいいね!

追記
・一緒に参戦したミドリちゃん、女子6位入賞。
卓越したトレイルテクニックで急成長。嬉しい!!


・フィニッシュしたら、そこにヤスオちゃん。
なんとスキースクール時代の後輩と30年ぶりに会う。
みんな身体動かしてるね。嬉しい!!