Now+here Man's Blog

Surf, Run and Trails / Endurance For Fun

キノBeerがやってきた! ヤアヤアヤア!

2013-05-31 22:41:38 | ThinkAbout..


ファロスの中島さんから、キノさんからビール届いたよ~って連絡があった。
なんと!10ケース! 240本!

あの事故の日からわずか3週間。
キノさんは、ビールを10箱、台車に乗せて運んで来れるほど回復した!
いや、宅配便か。。。

いや~、嬉しいではないか!!!

事故の夜に、友人と電話でこんな会話をした。
「生きてたら、回復なんかしちゃったらビールを大量に差し入れしてもらおう!
 でもなあ、無理かもしれないな、、、、」

ビール差し入れはせめてものジョークで、無理かも、、というのは本当にそう思ったからなんだ。

キノさんは、オイラの想像通り、やはりフォワードループで首をやっちゃって、脳シントウで溺れたようだ。
直接の原因はアタマ、首。神経系だね。海で意識を失う事はイコール、グッバイフォーエバーなのだ。

しかし、キノさんはハローアゲイン、こにゃにゃちワン!をしてくれた。

今回、我々はとてもとても深い大きな重要な経験をした。
誰にでも起こり得る、そしてそれを目の当たりにする、何もなくウインドライフを続ける方が奇跡だ。

だからこそ、救命措置の講習会を開く事になった。6/15だね。地元で。
キノさんにモデルになってもらおうかな!
いやー!!!リアルすぎるぜ!!!!

さて、いただいたビール。一般に市販されているビールではない。
一般のビールは「神の水」という。 ウインド終わった後にキュイーンてやる。
今回のスペシャルビールは、キノさん失神したときのションベン、それと口から吹き出た泡からなる。
そう、神の水ではなく「命の水」なのだ。

これを、近く晴れた土曜に、波も風もない梅雨の晴れ間に太陽の下でみんなで飲もうと思う。
命の大切さ、友の大切さをノド越しスッキリで飲むのさ~

ビールはいいね! ビールのいいところは全部ションベンになって出る事だ。
ん? ションベン飲んだらビールでるのかな? いずれ泡は立ってるね!!


鉄人、地獄から這い上がる

2013-05-10 18:46:49 | windsurfin'

(今一度、自分自身の安全、そして仲間の命を救うため、記録に残します。
風化しないように。共有できるように。
そしてキノさんの強い生命力をリスペクトするために。)

5/6(mon)

GW最終日@茅ケ崎パーク

午後3時前後、南南西5.0前後の風が西に振れ、
自分の4.8では制御不能になるくらい吹き上がった。
あまりにも爽やか過ぎる青い空と、小波の海面から、あまり吹いてはいないだろうという錯覚に陥った。

確実に4.0で吹いている。
軽量な自分なら3.7でもプレーニングしたかもしれない。

前半に大きめのセイルを張った連中はビーチに上がり始めた。

海面の様子をビーチからしばらく眺めていると、
石井ちゃんがこちらに向かって下側から全速力で走ってきた。
彼は過去全日本のウエーブチャンプで、今はサーフィンを真剣にしている。

「誰かが溺れている!」と叫びながら走ってきた。

オレは無意識にその下側へ走り始めた。
と同時にビーチにいるウエーバーに向かって大きく手招きし、
こっちへ来い!となかば怒鳴り散らした。
一瞬にして異様な雰囲気になったのか、みんな一斉に走り始めた、と思う。

走りながら海を見ると、海上に5人だろうか、10人だろうか、、、はっきり覚えていない、
サーファー達がかたまって少しづつ沖からビーチに向かっている。
オレも海に飛び込んだ。潮が上げていて海面がギタギタでしかも猛烈な西風が吹いている。

一人のサーファーが、その人のアゴに手をかけ懸命に泳いでいる。
その人は牽引されながら、ほとんど水面下にいて、時折、顔が、上体が、腕が浮上した。
すぐわかった。キノさんだった。

足が海底に着くところで、キノさんの腕を持った。
オレ含む3人でビーチに引き上げ、砂の乾いたところまで運んだ。

そこでは、多くの人たちが待機をしていて、今考えると非常に迅速に手際よく、救命措置に取り掛かった。

キノさんは既に変わり果てていた、という表現が適切なほどで、
黒く健康的に日焼けしていた顔は真っ白になり、
唇は吹き出し続ける泡で見えなかった。
目は白目で半目になり、お化け屋敷で使われなくなり焼却場へ運ばれた化け物人形のようだった。

その姿に、当然、まわりは騒然としたが、非常に運がよくサーファーの中に消防士が二人、
そしてウエーバーの中にも消防士が二人いた。

彼らは冷静沈着に手順通り対処した。
気道を確保し、脈を確認した。
わずかながら脈があるという。呼吸はしていない。

山ちゃんが心臓マッサージを数回した。
キノさんの口と鼻から大量の海水と泡が無音で溢れ出た。
しかし、消防士が止めた。
脈があるので気道確保が先決だということだ。

横にして水を自然に出す。
吐き出すわけではない。吐き出すような正常な機能はもうキノさんは持っていなかった。
あとで知ったが、それを回復体位というらしい。

山ちゃんは終始、キノさん!キノさん!と彼の耳元で叫び続けた。
江ノ島まで届くような大きな声で何度も何度も何度も。
胸が押しつぶされそうになるほど悲痛な叫び声だったよ。

その山ちゃんの懸命な呼び掛けがキノさんの魂に届いたのか、
ほんの一瞬目玉が動いたような気がした。
唯一の生体反応にみんなからドヨメキが起こる。

山ちゃんは呼ぶことを止めない。
山ちゃんの叫びはキノさんとこの世をつなぎとめておく糸なのだ。

石井ちゃんの知らせで我々がビーチを走り始めた時、
ただちにファロスに向かい119に連絡しに行ったのはノンピだった。
それとほぼ同時にファロスのさらに奥のスポーティフのビーチクラブにAEDを取りに行ったのは川島くんだった。
二人ともスラロームボードより速く全速力で対処した。アスファルトの上を裸足でフルプレーニングした。

浜に上げてから救急が来るまで一体何分かかったろうか。
とても長く感じた。でもきっと10分もかからなかったろう。

あの砂嵐の中、脈確認、呼吸確認はとても困難で多くの多くの人が風の壁になってくれた。
あとで引き上げられたセイルとボードも誰かがキレイに水洗いしキノさんの車に収納された。

本人は辻堂の救急病院に搬送された。

キノさんはそくICUに入った。
容態は家族以外には教えてくれなかったが、
脳に酸素が回ってなく、肺に大量の水が残っているということを聞いた。

非常に危険、重篤な状態であることは確かだった。

その夜、山ちゃんとこの事故についてキノさんの友人たちに知らせるべきかどうか相談した。
ご家族の了解を得てないし、容態を把握していない状態で知らせると情報が錯綜するからまずいよね、となった。

自分はそういう事故に遭遇したことがなく、とても重い不安を残しその日が終わった。

だからこそ夜中に目覚め考え直した。

結果が良きにつけ悪しきにつけ、遅かれ速かれ、そのことは知られることだし、
ましてや、仲の良い方々が知らなかったらとても寂しい思いをするだろう。
そう思い、朝から、知る限りの共通の友人に、できるだけ正確に伝えるようにメールをし、電話した。
またそこから伝わって行ったんだと思う。

その甲斐あって三島さんは奥さんやご家族を励ますことができ、
そして何より本当に多くの人が祈り始めた。

水曜日、奇跡的に、そして必然的に、鉄人は地獄の底から這い上がってきた。

担当医が、強固な心臓を持つビッグウエーバーから酸素マスクを外し、鎮静剤投与をやめた。
脳波がしっかりしていたのだろう。
その心臓で新鮮な酸素を自ら脳にぶち込んだ。

キノさんは事故からわずか2日足らずで目覚めた。
しっかりした口調で話し、脳に障害は認められず、もう大丈夫。

本当によかった。

週末、見舞いに行こうと思う。
元気な顔を見て、あのときのお化け顔を払拭しなくてはならない。
夢に出てきたんだよ!と文句を言わなければならない。
ファロスに缶ビール10ケース差し入れしてもらおう。
好きな時にショップでビールが飲めるように。

オレは今回のことがきっかけでいろいろ考える機会を得た。

自分の身は自分で守る、というのは当然でありながら基本でありながら、
ローカリズムという見地からは他人任せのような気がしてならない。
仲間が窮地に陥った時、救助救命するのは義務であり、
そのための知識を付けることがとても重要であると感じた。
なぜなら、その場にいたオレはなかばパニックになっていたからだ。

救助、救命がリレーのように行われたこと。
救急車、AEDの手配が同時に行われたこと。
運よく消防士が仲間にいたこと。
声をかけ続けたこと。
人垣で防風したこと。

ひとつ欠けていたら恐らく帰らぬ人となっていただろう。

それとサーファーがいなければキノさんは確実に死んでいた。
サーファーとウインドの共存はある意味、必要不可欠なのだね。

時同じくして、江の島でショップメンバーが恐らく同じ状態の中、亡くなられた。

心よりご冥福をお祈りいたします。
彼もまた、三途の川でキノさんの出艇を拒んだのかもしれない。

一人で海に入ってはダメだ。
まわりに多くの人がいても一匹狼でいてはダメだ。

キノさんは怒れし風の神、海の神の逆鱗に運悪く触れた。
しかし、仲間の行動、想い、祈りが自然の神々に勝利した。

重くとも感動的な、そういう数日間だったよ。