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列車に乗った男 L' HOMME DU TRAIN

2007-02-04 07:22:34 | ヨーロッパ映画/イギリス・フランス (2

05042802

監督:パトリス・ルコント
脚本:クロード・クロッツ
出演:ジャン・ロシュフォール(マネスキエ) 
    ジョニー・アリディー(ミラン) 
    ジャン=フランソワ・ステブナン(ルイジ)
2002年 フランス

その列車は、あなたを、叶わなかった人生の終着駅へと旅立たせてくれる。

>>列車に一人乗る寡黙な中年の男、ミラン。シーズン外れのリゾート地駅で降りた彼は、そこで初老の男マネスキエと出逢い、その男の暮らす古い屋敷へと招かれる。マネスキエのおしゃべりに少しうんざりしながらも、ミランはその静かな暮らしにどこか惹かれていた・・・。
生まれてこのかた街から出たことのない孤独なマネスキエもまた・・

久しぶりのフランス映画。
フランス語の響きはやはりいいなあと思う。
パトリス・ルコント監督と言えば私にとっては「官能」のイメージが強いのだけど、年齢的にこういうテーマの映画を撮るようになったのかなと思う。

元教師のマネスキエのとめどないおしゃべりは、どんなに彼が孤独かを表している。
ミランは人には言えない稼業の旅ガラス。

マネスキエはふと、自分とは違う人種のミランの様子に惹かれ、古い屋敷の一部屋を提供する。

4日間だけ、正反対の生き方をするふたりの男の人生が交差し、ふたりはもうひとつの果たせなかった人生について思いを巡らす。

ジャン・ロシュフォールと言えば『髪結いの亭主』の印象が強い。
この映画では少年のまま、老いてしまったかのような初老の男だ。

少し哀れで、愛嬌があってかわいくもある。

人生の傍観者でいたかった。。

映画を見ていて、ジョニー・アリディーが出てこないと思ったら、ミランが彼だった。

そう、髪を黒くしていたせいもあるけど、彼ももう中年(初老?)になっているのを忘れてた。。
当時のアイドル、シルビィ・バルタンと結婚!のニュースは結構電撃的だったが。
彼のその後は知らなかったから。

渋いアウトローが似合う俳優になっていた。

ミランは室内ばきに憧れていた。
マネスキエは自由で刺激的な外の世界に。

マネスキエ:「僕は刺繍以外の良家の子女の教養は備えているんだ」笑える。
ミランが降りた駅、フランスの小さなどこかの街が素敵。
寂れていて、でも、静かでこじんまり、可愛らしくて綺麗。

フランスに行くなら、パリよりもこんな小さな郊外の街がいい。

30年、通ったレストランで、マネスキエは勇気を振り絞って騒ぐ男たちに注意をするが、なんのことはない彼の教え子だった。

人生を変えるのは先になった。

時間が止まったような、美しい骨董品のような屋敷に住み、教師を勤め上げ、結婚するチャンスも逸した誠実なマネスキエ。

ミランは彼にもっと自信を持てと言う。

ふたりの心は急速に近づいていく。
互いのなかに老いた自分が見えるのだろう。
合わせ鏡。

マネスキエは心臓の手術を控えていた。
手術の朝、ミランはマネスキエの朝食を作った。

その日はミランにとっても人生の分岐点、重要な日だった。

ここから結末に触れています。
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こういうかたちの終わりになるとは想像しなかった。

観客はマネスキエがミランに家の鍵を渡すのを見る。

あれはふたりが末期に見ただったのか。

ミランのピアノを弾く嬉しそうな顔。
マネスキエは颯爽と列車に乗り込む。

私は思う。
ふたりは死んで、もうひとつの人生を生きるんだろう。

悲しくはない、不思議に穏やかなラストだった。