監督 霍建起・フォ・ジェンチイ
原作 莫言・モォ・イエン「白い犬とブランコ」
出演 郭小冬(ジンハー)李佳(ヌアン)
香川照之(ヤーバ)
成るほど、フォ・ジェンチイ監督は「山の郵便配達」「ションヤンの酒家」を撮った人なのですね。
「ションヤンの酒家」はとても好きな映画です。
今回、また一つ美しい映画を見ました。
やはり私はこういう暖かい映画が一番好きだし、性に合ってると改めて思いました。
少女は二度待ちわびた。
一人は憧れの人を、一人は幼馴染の男を。
北京の大学へ勉強に行って、そこで働く青年、ジンハーは10年ぶりに故郷に帰って来た。
テレビがどの家庭にも普及して、でも、まだまだ広々とした山や川、青々とした畑地が美しい中国南部、江西省のある村。
川は清らかに澄み、水がめに浮かぶ取れたての野菜の鮮やかな色に見とれてしまう。
日本も50年前にはこんな景色はまだ珍しくなかったでしょうけど。
ジンハーとヌアンは幼馴染、二人の思い出はいつの時も村にあるたった一つのブランコにあった。
ヌアンは旅の京劇役者に恋をしたが、叶わなかった。
その若い俳優に京劇の化粧をして貰う場面は耽美で艶かしい。
ヌアンは京劇役者を見るような目でジンハーを見たことはなかった。
ヌアンは失恋し、ジンハーもまた彼女に失恋した。
ジンハーがヌアンに与えた赤いスカーフが風に舞って美しい。
ふとヌアンの花嫁姿を想った。
が、ある事件をきっかけに、ヌアンの運命は変わってしまう。
ジンハーは彼女をきっと迎えにくると約束して都会に出たが。
耳が聞こえず、口も利けないヤーバと結婚したヌアンに、ジーハは「誰か他に相応しい人はいなかったの?」と聞く。
見ている私も、初めは粗野なヤーバを見てそう思ったが、次第に三人の関係が明かされていく。
台詞のいらないヤーバには香川照之は打ってつけだと思った。
まだ少年の頃から雨ガッパに麦わら帽子をかぶってポツンと一人、日がな一日、アヒルの番をするヤーバの後姿がスナフキンみたい。
可愛いらしいと同時に哀れでもある。
アヒルだけが彼の子分みたいでユーモラス。
見終わった後、暖かいものが心に溢れてゆきました。
ジンハーの故郷への旅は贖罪の旅でもあった。
ここから、結末に触れています。
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中国版「木綿のハンカチーフ」です。
大切なものを見つけた時、人は残してきたものを忘れる。。?
でも、彼女は心底、ジンハーを待っていたのかしら。
自分を時間の止まったような村から”連れ出してくれる人”ならジンハーで良かったのか、
夢破れた最後の灯火だったのか。
気持ちのすれ違い。。
ジンハーの心の声。
ヤーバはずっと一途な愛をヌアンに捧げた。
そんなヤーバに愛されたヌアンは幸せだったのだ。
雨の中、足の悪いヌアンを慌てて負ぶってやるヤーバの姿に胸を打たれた。
そして、更に、ヤーバはジンハーにヌアンと娘を連れて行けと激しい身振りで訴える。
粗野なヤーバの心の奥の奥の清らかな暖かいもの。
夫婦互いに泣きながら相手の心を思いやる姿を見て、心の動かない人がいるだろうか。
多分、ヌアンと娘のために片時も休まず働くヤーバ。
ヌアンはこれで幸せなんだと思った。
文明は生活を豊かにするけど、また、失うものも大きいのではないのかな。
ジンハーはヌアンの娘を抱きしめ、大きくなったら北京の自分の家に来て、学校へ行こうね。
きっと迎えに来ると言う。
今度は必ず約束を守って欲しいと、密かに思ったのでした。
TB送信:cococo、お気に入りの映画、見なきゃ死ねるか!聴かなきゃ死ねるか!、any's cinediary、