増税が一応決まった!だが、あくまで「一応」だ。「波乱」は、まだある!理由は、国民世論=要求に反する増税を国民無視で断行したのだからだ。大義と道理は、野田民主党政権と自公の側、増税派にないことは明らかだ。
だが、国民世論に反する暴挙=クーデターが簡単に断行できるのは何故か、だ。愛国者の邪論が注目しているのは、この点だ。
このようにクーデターが簡単に断行できる最大の要因は、メディアの流す「情報」、「論理」=イデオロギーだ。これを流すことによって国民世論のひとつを形成させるのだ。その「世論」を根拠にクーデターを断行する。
逆に言えば、そのイデオロギーに対するイデオロギーを対置させることで、圧倒的多数の世論を形成することで、クーデターを頓挫させ、国民のための政権を樹立、維持・発展させるのだ。
こうした視点は、いつの時代もあった。情報戦だ。ウソの情報も流すこともあるだろう。相手側をかく乱させるのだ。「近いうちに」とか、「怪文書」「怪情報」、ネガティブキャンペーンなどは、その最たるものだろう。
さて、まえがきはこれくらいにして、本題に入ろう。
昨日は増税派のプロパガンダである全国紙の社説を見てみた。その全国紙が、米倉経団連会長の発言を報道することで、応援と圧力をかけた。その発言の中身をみると、マスコミが垂れ流してきたもの(財界イデオロギー)と全く同じだった。以下、見てみる。
1.党利党略に走らず、国のために3党合意の通り、粛々と進むよう切望する。
2.仮に政権交代が起こったとしても政権与党はゼロからのスタートになる
3.将来を担う世代にも悪い影響を与えかねない。わが国の財政に対する(諸外国や投資家の)不信を招く。
4.こんな国会であれば、議員数を半減以下にするとか、国民運動が出てきてもいいのではないか
5.野田(佳彦)総理のほうから、成立した暁に国民の信頼を再度確認する選挙は十分考えておられると思う
これらの言葉は野田首相の言葉であり、全国紙の社説の言葉であった。彼らのなかで暗黙(以心伝心)の意思統一があったのか、或いは具体的な意思統一があったのか、使われている言葉は驚くほど似ているのだ。
このように彼らの言葉をみると、この間のマスコミが使ってきた「党利党略」「政争」「騒動」「混乱」の奥に何があるか、米倉経団連会長の発言をみると、そのイデオロギーが見えてくる。財界の意向を代弁したマスコミの扇動と恫喝にもとづく政治があることが判る。
だが、マスコミはそのことを何も語っていない。以下米倉会長と経済同友会長谷川代表幹事の言葉の意味を考えてみた。
1.非正規を増やしながら、大儲けし、さらに法人税を下げろという身勝手な財界。
2.国のためと言いながら、海外に工場を移転し、国内の雇用の確保を保障しない財界。
3.大企業のために国債を発行させ、「赤字」を作らせ、国民の貯蓄を使って購入させて大儲けしてきたのに、外国の信頼を失うなどと脅している。
4.自民党谷垣総裁を党利党略というが、自民党を使って大儲けしてきたのは、財界に他ならない。
5.自らの身勝手な要求を「改革」として押し付け、3党合意をそそのかしてきたのは、財界自身ではないのか。
6.野田首相をポチとして使ってきたのは、他ならぬ財界ではなかったのか。総選挙の時期をも、コントロールしているかのような発言を見れば明瞭だ。
7.財界のCM収入で食わせてもらうマスコミのジャーナリズム精神はすでになし!
8.己の身を削らず、国民の生活と権利を奪う身勝手さを告発すべきだろう!
こうした状況を踏まえ、国民を苦しめる、この手法を暴き、イデオロギー闘争を発展させなければならない。彼らの立場に立てば、生きる自由を奪われるぞ!と。切実な要求を掲げる正当性に確信を持って立ち上がろう!と。
財界と絆深めるポチ犬にアメを食べさせムチ叩きする
マスコミの振りまく財界イデオロギーについて、一覧してみた。
「国のため粛々と」経団連会長、増税法案の成立求める2012年8月8日15時23分
経団連の米倉弘昌会長は8日、消費増税関連法案をめぐって政局が緊迫化していることを受けて急きょ記者会見し、法案の早期成立を求めた。「党利党略に走らず、国のために3党合意の通り、粛々と進むよう切望する」と話した。法案の成立が遅れた場合について、米倉会長は「将来を担う世代にも悪い影響を与えかねない。わが国の財政に対する不信を招く」と懸念を表明した。 いまの政局については「こんな国会であれば、議員数を半減以下にするとか、国民運動が出てきてもいいのではないか」と述べた。
http://www.asahi.com/politics/update/0808/TKY201208080341.html
経団連会長:消費増税の混乱、3党合意推進を
毎日新聞 2012年08月08日 12時55分(最終更新 08月08日 13時27分)
経団連の米倉弘昌会長=小林努撮影
経団連の米倉弘昌会長は8日午前、消費増税法案の早期成立が政局の緊迫化で見通せなくなっている現状について、「党利党略に走らず、国の将来のために3党合意通り粛々と進めてほしい」と苦言を呈した。東京都内で記者団に述べた。 米倉会長は、自民党が衆院解散の確約を野田佳彦首相に求めていることに対し「それこそ党利党略。法律を成立させてから対応したらいい」と批判。その上で「(野田首相は)法案が成立した暁には国民の信頼を再度確認するための選挙は十分に考えていると思う」と述べた。【和田憲二】
http://mainichi.jp/select/news/20120808k0000e020247000c.html
「こんな国会、議員は半分でいい」米倉経団連会長が混迷政局に憤り2012.8.8 12:21 [国会]
経団連の米倉弘昌会長
消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案の参院採決を前に政局が混迷するなか、経団連の米倉弘昌会長は8日、「党利党略に走らず、国の将来のために3党合意に基づき法案を早期に成立させてほしい」と厳しく批判した。東京都内で記者団の質問に答えた。 米倉会長は法案が成立しなければ「わが国の財政に対する(諸外国や投資家の)不信を招く」と指摘。自民党が求める総選挙については「野田(佳彦)総理のほうから、成立した暁に国民の信頼を再度確認する選挙は十分考えておられると思う」と述べ、まずは法案成立を優先すべきだとの考えを示した。 また、「国会の先生方は行政改革とおっしゃるが、一番重要なのは立法府の改革だ。こんな国会なら議員の数は半分以下でいい」と“決められない政治”への憤りをあらわにしていた。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120808/biz12080812220002-n1.htm
経団連会長、一体改革「早期成立を切望」 解散要求「不可解」 2012/8/8 11:39
経団連の米倉弘昌会長は8日午前、記者団に対し、社会保障と税の一体改革関連法案を「(民主、自民、公明の)3党合意に従って早期に成立させることを切望する」と述べた。野党が衆院解散の確約を求めていることについて、「ここに来て急に政局化していることは残念だ。成立が遅れると次の世代にも悪い影響を与えかねない」と語った。
米倉氏は、自民党などが求める早期解散の動きを「不可解」としたうえで、「党利党略を捨てて、法律を成立させてほしい」と改めて強調。欧州債務問題がくすぶる中で「日本は改革に手を付けられないと見られれば、財政への不信にもつながりかねない」とも指摘した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL080E3_Y2A800C1000000/
消費税増税そっちのけの政局、長谷川同友会代表も「理解できない」2012.8.8 16:07 [消費税]
消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の参院採決をめぐり政局が混迷していることについて、長谷川閑史経済同友会代表幹事は8日、「(民主、自民、公明の)3党合意に基づいて決めた日本にとって最重要の法案を犠牲にしても解散を求めることが理解できない」と厳しく批判した。
関連法案不成立の場合は「市場では相当ネガティブなリアクションが起こる」と懸念。「仮に政権交代が起こったとしても政権与党はゼロからのスタートになる」と指摘し「国家の将来を考えるならどんなことがあっても法案を通すべきだ」と強調した。
これに先立ち米倉弘昌経団連会長も同日、「党利党略に走らず3党合意通り早期に成立させていただきたい」と要望。自民党などが求める早期解散の動きを「理解できない」と切って捨てた。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120808/biz12080816080010-n1.htm
「ようやくここまできた」と米倉経団連会長が評価 一体改革法案の修正協議で
2012.6.11 18:38 [財界]
米倉弘昌経団連会長は11日の会見で、税と社会保障の一体改革関連法案の修正協議の開始について「ようやくここまできた。持続可能な制度と財政の健全化を真剣に議論しなければ国際的な信任を得られない」と述べ「与野党とも国益を考えて一体改革の議論を進めてもらいたい」と強く要望した。
先週末、野田佳彦首相が関西電力の大飯原子力発電所の再稼働を表明したことには「日本の将来を見据えれば安全基準に基づいた原発の再稼働は国の最高責任者としてどうしてもやってもらねばならない。高く評価している」と歓迎。橋下徹大阪市長などが再稼働は今夏限定にすべきだと述べたことには「経済活動や事業を全然ご存じない方の発言だ」と切って捨てた。
さらに国内調整に手間取っている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加について「G20(20カ国・地域首脳会合)サミットの好機を逸することなく早急に参加表明をしてもらいたい」と主張。18、19日にメキシコで開催されるG20までに政府は交渉参加を決断して表明すべきとした。
経団連は11日、早期のTPP交渉参加を求める緊急提言をまとめ関係省庁に提出した。交渉参加は劣勢にある日本の経済連携交渉を挽回(ばんかい)し、アジア太平洋地域の安定に役立ち、日本国内の地域経済の活性化や雇用の拡大にもつながるとしている。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120611/biz12061118390018-n1.htm
昨日の社説で「増税を決めろ」と煽ったにもかかわらず、今日の全国紙には、呆れた!
増税派の全国紙は、財界の要求イデオロギーを不問に付し、自民と民主の「党利党略」非難にスリカエ、自らを免罪しようというのだ。
そもそも、増税の「信を問う」というのであれば、全国紙は小泉劇場選挙の時のように法案提示の前に総選挙をすべきと書かなければならない。しかし、増税派の全国紙は、その様なスタンスは取らなかった。「法案が決定してから」という民主主義のイロハに反する手法に手を貸して、民自公3党合意に賛成してしまった。これはひとえに「消費税増税ありき」論に立っていたからに他ならない。そこが最大の過ちであった。
以下ポイントをまとめてみた。まず3党党首の合意について、各紙は、以下のように手放しで評価した。
産経 国益を優先する枠組みが構築されたことを高く評価したい。
読売 日本政治の危機は瀬戸際で回避された。民主、自民、公明3党の党首が良識をもって対処したことを評価したい。…消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法案の早期成立を期すことで一致した。「先送りしない政治」の実現を目指して3党が結束したことは、大きな意義がある。
日経 結果は良しとはいえ、土壇場で政局を混乱させ、有権者の政治への信頼を損なったことには猛省を促したい。
朝日 改革の頓挫という最悪の事態だけは避けられた。
毎日 「何も決められない政治」に再び戻る危機はどうにか回避された。自民党が強硬路線の矛を収めたことを、まずは歓迎したい。(引用ここまで)
次は、「玉虫色」と自らも評価した「近いうち」についてだ。この「玉虫色」論は、増税法案成立が合意されたことを評価しながら、その内容については、法案成立さえすれば、問題なしと不問に付していることを意味する。国民だまし、裏切りだろう。
産経 野田首相が「関連法案が成立した後、近いうちに国民の信を問う」と早期の衆院解散に言及し、谷垣、山口両氏がこれを受け入れて一体改革関連法案の早期成立を確認したことだ。首相は言葉通りに、早期解散で民主党政権に対する国民の審判を求め、国益や国民の利益を実現する政策を自公両党などと競い合うことが求められる。同時に、日本の危機克服に必要な内外の課題を解決するため、引き続き与野党協力の枠組みを生かしていくことが重要である。…一体改革関連法案が成立する運びとなった意義は大きい。
読売 玉虫色の表現であり、様々な解釈が可能だろうが、民主、自民両党がぎりぎりで歩み寄った。妥当な合意である。
日経 結局、「近いうちに信を問う」という玉虫色の表現で折り合った。どうすれば政治は国民の信頼を取り戻せるのか。国家国民のために必要なことを粛々と進める。それに尽きるだろう。一体改革法案の処理は手始めにすぎない。
朝日 3党首の合意にはあいまいな部分もあるが、解散・総選挙への流れは強まるだろう。
だが、その前に国会にはやるべき仕事がまだ残っている。
毎日 党首会談では、この「近いうちに」とは具体的にどの時期を指すのか、野田首相からは具体的な提示はなかったという。しかし、首相自身、以前から関連法案成立後、しかるべき時期に国民の信を問うと明言してきた。懸案にめどがついた際には、いずれ総選挙に踏み切らなくてはならない時期は来る。…自民党内にも、そうした無責任な姿勢に対する国民の批判が自民党に向かうという懸念があったのだろう。結局、谷垣氏も党首会談の開催を受け入れ、「近いうちに」という抽象的な表現でも受け入れざるを得なかったとみられる。(引用ここまで)
次は、増税反対派の少数6野党提出した野田内閣不信任案・問責決議案提出に対する民自公の対応を「政争」「騒動」としているが、提出された内閣不信任と問責決議を否定させ増税を成立させ、大いに評価したにもかかわらず、事の本質のスリカエ、増税決断の扇動を免罪している。民自公3党首の決断を評価しながら、批判するという手法で政治をわかりにくくさせている責任は重い。
産経 3党の新たな合意はまとまったものの、そこに行き着くまでに、民主、自民両党の党内事情や党利党略が絡んでいたことを指摘しておかねばならない。
読売 野田首相、谷垣氏とも、党内に一体改革や党首再選に反対する勢力を抱えている。権力基盤が弱体化している中、改革実現を改めて確認したことは評価できる。
日経 野党暮らしに飽き飽きした自民党が一日も早い衆院解散を願うのはわかる。だが、自分たちはこんな政策を掲げており、政権交代すれば国はこうよくなる、という大義名分がなければ単なる党利党略にすぎない。民主党の支持率低迷をみて、政権奪回は当たり前という気分が自民党内には広がっている。国民を甘くみてはいけない。自分本位の行動を続けていれば、第三極からの「既成政党をぶちこわせ」との批判にさらされ、思ったほどの支持は得られまい。
朝日 それにしても、ここ数日の衆院解散の時期をめぐる党利党略むき出しの政争にはうんざりさせられた。解散の判断は、首相の専権事項だ。重要法案を人質に取る形でその時期を確約させようという自民党のやり方は筋違いだが、両党の関係がここまでこじれてしまった以上、トップ会談での打開しかなかった。ここ数日の騒動で、この国の政治家が、いったい何のために胸にバッジをつけているのか、多くの国民は首をかしげたことだろう。そもそも、消費増税と社会保障の立て直しは、民主、自民、公明の3党がその必要性で一致し、合意したものだ。衆参両院で200時間を超える審議を重ね、成立目前だった。それなのに、法案の中身とは関係なく廃案の危機に陥ったのは、まったく理解に苦しむ。今回の騒動の本質は、「いま選挙をやれば勝てる」と踏んだ自民党と「負け」をおそれた民主党の利害のぶつかりあいだ。
毎日 ところが、ここにきての自民党の強硬姿勢への転換は、まったく理解に苦しむものだった。ともかく、ここが早期解散に追い込むチャンスとばかりに、3党合意の破棄もちらつかせながら、解散時期の明示を求める姿勢は、やはり党利党略というほかなかった。(引用ここまで)
今回の「政争」「騒動」について、「厳しく批判」しているのは「朝日」だろう。だが、この「政争」と「騒動」の奥深いところに、野田政権を信任するか否認するか、このことが鋭く問われている。それは消費税増税と社会保障の一体改悪がある。だがこのことを、どこの社説も書いていない。特に「朝日」は、そのことについては、何も触れていない。そればかりか「解散の前にやることがある」と「近いうちに信を問う」とした野田首相を弁護している。自民党谷垣総裁は、国民は舐められたということだ。
もう一度今回の局面を確認しておこう。増税派の全国紙が増税法案を早く「決めろ」と叫んで煽ったことが最大の原因なのだ。それに対して消費税増税反対派の中小政党の「団結」に怯えた自民・民主の議員の動向によって「政争」「騒動」化したのだ。だが、このことは書かないで、「支持率が低下した民主と野田政権に対して総選挙を要求する自民、選挙に怯える民主と野田政権、政局化を諌める公明」という構図を軸にあれこれの諸事実を垂れ流し、「政局」化と「党利党略」と批判しているのだ。
だから、解散か総辞職か、野田代表の降下か、谷垣総裁の交代か、などに目を向けさせ、国民不信を扇動・助長させる。確かにそのような側面があるのは事実だが、より本質的には、それらの根底には、増税か否か、どちらかを選択するのかという流れがあるのだ。国民にわかりやすい報道を目指すのであれば、この視点を軸に報道すべきだ。事実、増税派の全国紙の世論調査でさえも、増税反対世論は多数であるし、「今国会で決めるな」世論は多数であるにもかかわらず、社説は逆のことを言っているのだ。
したがって「信を問う」選挙の最大の争点は、野田政権に賛成か、反対か、増税に賛成か反対か、ということになる。自公は野田民主党政権を批判することはできないことは明らかだ。どうやって選挙をたたかうというのだろうか。
だが、このような矛盾に満ちた3党首の「近いうちの信を問う」合意だが、何故合意に達したか。それは、「増税やむなし」論を扇動する全国紙の「風」に期待しているのだろう。「日本の危機克服に必要な内外の課題を解決するため、引き続き与野党協力の枠組みを生かしていくことが重要」(産経)、「『先送りしない政治』の実現を目指して3党が結束したことは、大きな意義がある」(読売)などという「評価」がそのことを示している。
このようなマスコミの財界イデオロギーの延長線上にあるのは、3党の枠組みが多数派になれば、改革は断行できる、だから民主党の「分裂」「消滅」を既定路線として、また民主党、自民党の反対する議員を排除して新たな政界再編をつくりだすことを3党首は確認=「談合」「密約」したのではないか。
そうして多数派形成と一体的に増税反対・オスプレイ配備反対、TPP参加反対勢力を排除し、日米軍事同盟の深化、財界擁護の戦後の枠組み温存に向けて「玉虫色」のメガネを使って国民の「信を問う」というペテンの方策を選択したのだろう。
ところが、「産経」は今回の消費税増税と「政争」「騒動」の本質を、以下のように正直に吐露している。
「財政健全化の取り組みを内外に示すこともできた。3党合意が破棄される事態となっていれば、次期国会以降に一体改革の与野党協議を立て直すことは極めて困難で、日本は国際社会からの信頼を決定的に失う可能性があった。法案は、抜本改革について『社会保障制度改革国民会議』を設置し、1年以内に実施するとしているが、70~74歳の医療費窓口負担の2割への引き上げやデフレ下で年金額を下げる自動調整の仕組みの導入、年金支給開始年齢の引き上げなど国民に痛みを求める項目から逃げてはならない」
こうした事実を何ら国民に問うことなく、ウソとペテンの3党合意を煽り評価した全国紙も、国民から指弾されるであろうし、指弾されなければならない。
そういう点で、8日付の「東京」の社説は正しい。「朝日」が「東京」に負けているとする国民の声は正しい。以下ポイントとなる部分を掲載しておこう。
消費税を増税する社会保障と税の「一体」改革法案は、二〇〇九年衆院選の民主党マニフェストに反する。盛り込まれておらず、消費税増税はしないと公約して政権に就いたのではなかったか。消費税増税に転換するのなら、衆院を解散して国民にその是非を問うのが筋だ。公約違反と理解しながら強行するのは、国民に対するだまし討ちと言ってもよい。…しかし、消費税増税という民主党のマニフェスト違反に加担しながら、解散の確約がなければ「一体」改革法案の成立に協力しないというのは理解しがたい。社会保障改革を先送りし、政府や国会の無駄にも切り込まず、消費税だけが増税される、名ばかりの「一体」改革法案は本来、成立させるべきではない。…しかし、歳入の四割を占める赤字国債発行のための特例公債法案や、衆院「一票の格差」是正など緊急を要する案件も手付かずだ。そんな状況で、与野党は責任を果たしたと胸を張れるのだろうか。消費税増税前にやるべき改革、処理すべき案件は数多くある。それをやろうとしない首相にはもはや政権を委ねることはできない。(引用ここまで)
けふもまた五輪五輪の嵐なり政(まつり)の嵐逆風(さかかぜ)となり
産経 3党首会談 国益優先の合意評価する 残る懸案も早急に処理せよ 2012.8.9 03:21
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120809/stt12080903210002-n1.htm
読売 民自公党首合意 一体改革の再確認を評価する 8月9日01時28分
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120809-OYT1T00143.htm
日経 国益を見据えて「決める政治」を進めよ 2012/8/9付
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO44738030Z00C12A8EA1000/
朝日 一体改革成立へ―解散前にやるべきこと 2012年8月9日(木)
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1
毎日 党首会談合意 自民の譲歩を歓迎する 8月09日 02時32分
http://mainichi.jp/opinion/news/20120809k0000m070128000c.html
東京 消費税増税法案 国民に信を問う潮時だ 2012年8月8日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012080802000130.html
2日間にわたって「読売」「朝日」「毎日」「産経」が増税に向けて民自公を叱咤激励するし社説が掲載された。逆に言えば、増税反対派を恫喝する社説だ。
経団連など、財界の要求である増税に対して、国民の要求を代弁する勢力とのがっぷり四つの闘いが、国会内外で展開されている。
こうした時に、メディアをとおして全国紙がどのような立場で新聞を書くか、注目した。全国紙の社説は、その立ち居を浮き彫りにさせた。そこで再度確認しておこう。社会の変革にあたっては、世論、イデオロギーは重要な要素であると同時に、決定的だ。
このことはエンゲルスが、「ドイツ農民戦争」の「序文」中で以下のように述べていることが、こんにちの日本の政治のなかで検証されているということだ。
ドイツの労働者は、自分の地位の有利さをたぐいまれな理解力をもって利用したものといわずるをえない。労働運動がはじまってこのかたはじめて、闘争が三つの方面、―理論的方面、政治的方面、実際的・経済的方面(すなわち資本家にたいする反抗)-にわたって、調和と連関をたもちながら計画的に遂行されている。このいわば集中された攻撃にこそ、ドイツの運動の強さと不敗の力とが存するのである。(引用ここまで)
同時にマルクスの「経済学批判序言」のなかで、日本の現局面を予言している。
社会の物質的生産諸力は、その発展のある段階で、それらがそれまでその内部で運動してきた既存の生産諸関係と、あるいはそれの法律的表現にすぎないが、所有諸関係と矛盾するようになる。これらの諸関係は、生産諸力の発展諸形態からその桎梏に一変する。そのときに社会革命の時期が始まる。経済的基礎の変化とともに、巨大な上部構造全体が、あるいは徐々に、あるいは急激に変革される。…一つの社会構成は、それが十分包容しうる生産諸力がすべて発展しきるまでは、けっして没落するものではなく、新しい、さらに高度の生産諸関係は、その物質的存在条件が古い社会自体の胎内で孵化されおわるまでは、けっして古いものにとって代わることはない。それだから、人間はつねに、自分が解決しうる課題だけを自分に提起する。(引用ここまで)
もう一つ紹介しておこう。「朝日」という新聞社を代表する「社説」と異なる見解を一般の記事で述べることはあると表明された昨日の記事の一つの元になった「教えて!消費税」の今日の以下の記事に注目した。
政府の税収(一般会計)は、消費増税した97年度の53・9兆円から伸び悩む。その後はデフレや低成長が続き、給与などにかかる「所得税」や企業のもうけにかかる「法人税」の税収が増えないからだ。「デフレ下で増税すれば、景気が悪くなって失業対策などの費用がかさむ。財政再建という目的は達成できない」。駒沢大の飯田泰之准教授(経済学)は消費増税の効果を疑問視する。(大日向寛文)(引用ここまで)
この記事をみると、以下の述べる「社説」とは異なる視点から増税に「反対」「疑問」を呈しているかのような記事だ。しかし、落とし穴がある。
それは「法人税」に対する視点だ。消費税3%導入前の89年には42%だった法人税は、その後40%、37.5%へ、そうして消費税5%増税後には、34.5%から30%に引下げられている。こうした経過の中で、非正規雇用が増やされ、賃金が低下され、所得税収入減となり、同時に内部留保が142兆円(97年)から266兆円(10年)へと増やされていったことを意図に隠している。「朝日」の視点は、誰の立場に立って記事が書かれているか、明瞭だ。
以上のように国民生活優先か、大企業の儲け優先か、真っ向から対立する政治がまかり通ってきたのだが、これが政権交代によって実現できるかのように思われたのだが、マスコミを使った財界の反撃によって、もともと雑多集団である民主党と野田政権の自民党化というシナリオの具体化である3党合意としてスリカエラレた。だが、社会保障と財政再建のための消費税増税が、実はデタラメであることが国会質疑などで明らかにされてきた。「財政危機」を作り出してきた旧自公政権時代の大型公共事業復活のためであることが浮き彫りになり、そのゴマカシから逃れられないところまで追い詰められ、原発再稼動、オスプレイ配備問題、TRR参加問題も加わり、今崖っぷちに立たされているのだ。
今まさに、旧来の政治の枠組み、悪弊、陋習では、政治や外交、経済、そして暮らしが成り立ち得ないところまで来たということだ。金属疲労から金属破壊にまで、現在の日本がきたということだ。
だが、これが一挙に変革にまで行き着くかといえば、そうはならないだろう。「徐々に」、ある時には「急激に」変革されるだろう。徳川政権から薩長政権へ、ソ連東欧の変革などを見れば明瞭だ。確実に日本は、これまでとは違った変革期に差し掛かったといえる。
だからこそ、エンゲルスのいう変革を作り出す「理論」と運動(政治的・経済的)が求められているのだ。まさに職場と地域で具体的に目に見える形で運動が展開されなければならない。
以下、全国紙の社説を見てみよう。「政権交代可能」と二大政党政治を煽ってきたマスコミ、全国紙が、二大政党政治の違いが判らず、一致してきているなか、政権奪取と政権保守の争いをしている民自公に対して、脅しているのだ!この脅しこそ、イデオロギー攻撃といえる。議員各位を脅しているのだ。だが、議員が寄って立つべきスタンスは何か。国民の意向だ。地元の有権者、国民世論から遊離下議員は、確実に落選、議席を得ることはできない。
国民に対して「痛み」を強制する増税、大型公共事業の復活など、その増税の根拠が崩れてきたにもかかわらず、増税の「根拠」を振りかざしているのだ。三党合意は国民の要望に反しているのに、公明党の支持者の意向を、国民の要求であるかのようにウソをふりまいているのだ。
さらには欧州危機を持ち出し、情の違う欧州と日本を単純に比較し、脅すなど、実に情けない限りだ!
などなど、様々な「脅し」が繰り広げられている。最大のポイント・手法は、増税に対する国民の意向だ。その意向をどちらが掴むか、そこにかかっている。脅しに屈するか、跳ね除けるか、それだ!
今民自公三党首が会談したというニュースが入った。「増税を決めてから、近いうちに国民の信を問う」というものだ。
呆れる!決める前に信を問え!あの酷い小泉元首相より後退している!酷い小泉首相の手法以下ということは、最悪最低、末期ということだ。
恐らく民自公(民主党の分裂が分裂しても国会で多数派を握れと、彼らは判断したのだろう)が消費税を決めて、選挙をしても、国会で多数派になると情勢分析をしたからこそ、「増税を決めて近いうちに国民の信を問う」と「合意」したのだろう!
国民を見くびった判断だ!
さぁ!マスコミがどう報道するか、楽しみだ!!
政権を誰が握るかと目の前に迫りつつあるとなりにけるかも
以下、各社の社説を掲載しておこう。国民目線など、どこ吹く風か!よく判る!
一体改革法案 党首会談で事態を打開せよ(8月7日付・読売社説)(2012年8月7日01時52分 読売新聞)
社会保障・税一体改革関連法案の成立が危ぶまれる状況である。
自民党が、野田首相から衆院解散の確約を得られなければ法案の成立を認めない、という強硬路線へ強引に舵(かじ)を切ったからだ。
民主、自民、公明3党が財政再建の重要性を確認し、修正合意の末に衆院を通過させた法案だ。今になって蔑(ないがし)ろにすることは到底許されない。参院で速やかに採決し、成立させるのが筋である。
自民党の谷垣総裁は「一体改革を成し遂げるには国民に信を問い、態勢を立て直すことが必要だ」と述べた。解散要求が通らない場合、内閣不信任決議案や首相問責決議案を7日にも提出する。
法案成立と引き換えに早期の衆院選に持ち込もうとするのは、一体改革という国益を“人質”に取るような手法ではないか。
問責決議案や内閣不信任案が出されれば、国会は混乱し、法案は廃案になりかねない。
その場合、3党合意の瓦解どころか、日本の政治そのものが内外の信用を失うだろう。
自民党の強硬姿勢について、公明党の山口代表が「どういう結果を招くか、慎重に考えるべきだ」と指摘したのはもっともだ。多くの国民の理解は得られまい。
自民党は内閣不信任案の提出を再考すべきだ。法的拘束力のない問責決議案を倒閣に使うのも悪(あ)しき前例を残すことになる。
野田首相は、「3党合意は大変重たい。法案を成立させることに全力を尽くす」と語った。それなら、谷垣氏との会談で事態の打開を図るしかないだろう。
そもそも、こうした状況を招いた一因は、首相と民主党執行部の不誠実さにある。
首相は、連合の古賀伸明会長との会談で来年度予算編成に意欲を示し、法案成立後の解散を求める自民党の神経を逆なでした。
民主党執行部は、離党者がさらに出ることを恐れ、法案の早期採決には及び腰だった。当初、赤字国債発行を可能とする特例公債法案の成立や衆院選挙制度の「1票の格差」是正との同時決着を主張し、20日の採決を唱えていた。
これらが大事なのは言うまでもないが、一体改革関連法案の参院採決を先送りする口実ではないか、と疑われても仕方がない。
ようやく民主党は自民党に8日の委員会採決を提案したが、対応が後手に回ったのは確かだ。
民主、自民両党の駆け引きの揚げ句に、法案を葬り去ることだけは回避しなければならない。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120806-OYT1T01656.htm
内閣不信任案 一体改革を党利党略で弄ぶな(8月8日付・読売社説)
社会保障と税の一体改革は、日本の将来を左右する重要案件だ。与野党が党利党略で弄ぶことがあってはならない。
国民の生活が第一、共産、社民などの中小野党が、衆院に野田内閣不信任決議案を、参院に野田首相問責決議案を、それぞれ共同提出した。
消費税率引き上げに反対する立場から、「消費増税は民主党の政権公約違反であり、野田内閣は信任できない」と主張している。
一体改革関連法案に修正合意した民主、自民、公明の3党は、不信任案と問責決議案を粛々と否決すべきである。
問題なのは、自民党が、野田首相から衆院解散の確約が得られない限り、内閣不信任案や問責決議案を独自に提出する、という強硬姿勢を再確認したことだ。自民党が提出に踏み切れば、3党合意は崩壊の危機に直面する。
衆院で不信任案は否決される見通しだが、参院では問責決議案が可決される公算が大きい。法的拘束力はないが、野党が参院審議を拒否すれば、一体改革法案の成立が極めて困難になる。
実現目前の一体改革を白紙に戻すのは、愚の骨頂である。さらに、9月に発足する予定の原子力規制委員会の人事も宙に浮くなど、多大な悪影響が出るだろう。
衆参ねじれ国会で政治が停滞する中、一体改革の3党合意は「決められる政治」に立ち返る一歩となるはずだった。合意が崩れ、法案が成立しなければ、既成政党への国民の評価は失墜しよう。
一体改革を犠牲にすることも辞さずに、早期解散を求める自民党の姿勢は、身勝手すぎる。
谷垣総裁が今国会での解散に固執していることにも、それが実現できなければ、9月の総裁選で自らの再選が困難になるためではないか、との見方が出ている。
自民党が参院特別委員会での8日採決の日程に同意しながら、問責決議案の提出の用意をしているのは、筋が通らない。
3党合意は、一体改革法案について「今国会で成立を図る」と明記している。民主党の国会運営に問題があったにせよ、自民党が一方的に反故(ほご)にするなら、政党間の合意や信頼は成り立たない。
仮に自民党が政権に復帰した場合、消費増税について野党の協力を一体どう得るつもりなのか。
公明党が「一体改革を政局の道具にすべきでない」として自民党と一線を画し、法案成立を優先しているのは、妥当な姿勢だ。今の方針を堅持してもらいたい。
(2012年8月8日01時41分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120808-OYT1T00130.htm
民主と自民―改革潰しは許されない2012年8月7日(火)付
社会保障と税の一体改革の行方に、暗雲が垂れこめてきた。
自民党の谷垣総裁が野田首相に対し、関連法案成立後の衆院解散を、参院での採決前に確約するよう迫っている。
応じなければ、7日にも衆院に内閣不信任決議案、参院に首相の問責決議案を出すという。
不信任案はいまのところ可決の可能性は低いが、問責決議案が提出されれば可決される公算が大きい。そうなれば民主、自民、公明の3党合意は空中分解し、法案成立は難しくなる。
だが、ここで改革を頓挫させることは許されない。将来世代に負担をつけ回しする政治を続けるわけにはいかないからだ。
民主、自民両党は互いに譲るべきは譲りあい、法案成立を最優先にすべきである。
まず理不尽なのは自民党の姿勢だ。
「民主党が公約にない消費増税をやれば、国民に信を問うのが筋だ」。谷垣氏ら自民党執行部の指摘には、一定の理があると私たちも思う。
だとしても、いま解散を約束しなければ法案が潰れてもいいということにはなるまい。
衆院議員の任期満了まであと1年。いずれにせよ総選挙はそんなに先の話ではない。
自民党は2年前の参院選で10%への消費増税を公約した。3党合意は、それに基づいての決断だったはずだ。
これを実らせてからの解散・総選挙ではなぜだめなのか。
野田内閣の支持率が低迷している間に総選挙をやれば、自民党に有利だ。9月の党総裁選前に解散を勝ち取らなければ谷垣総裁の続投は難しい。
自民党内ではそんな声が聞こえる。
もしそれで解散を迫っているのなら、まさに党利党略、私利私略ではないか。
公明党が自民党の姿勢に「説得力がない」と自制を求めているのは当然のことだ。
民主党の言動も不可解だ。
党執行部は、一体改革法案の参院採決より前に、赤字国債発行法案や衆院の「一票の格差」是正法案を衆院通過させるべきだと主張してきた。
きのうになってやっと一体改革法案の先行処理を受け入れたが、参院採決でさらなる離党者が出るのを恐れて先送りを図っていたとしたら、これもまた党利党略というほかない。
私たちは、一体改革をめぐる3党合意を「決められる政治」への第一歩に、と期待した。
首相と谷垣氏は党首会談も含めあらゆる手立てを尽くし、すみやかに事態を打開すべきだ。
http://www.asahi.com/paper/editorial20120807.html#Edit1
民・自対立―3党合意に立ちかえれ2012年8月8日(水)付
社会保障と税の一体改革関連法案の参院採決を目前に、与野党の対立が続いている。
国民の生活が第一やみんなの党などがきのう、衆院に内閣不信任決議案を、参院に野田首相に対する問責決議案を出した。
これとは別に、自民党も首相に衆院解散の確約を求め、両決議案の提出を検討している。
自民党の姿勢によっては、関連法案の成立が危うくなりかねない。
首相と谷垣自民党総裁にあらためて求める。
ここは一体改革の実行が最優先だ。両党首が先頭にたって事態を打開し、関連法案の成立を確実にすべきだ。
両党首に聞いておきたい。
一体改革に合意したのはなぜなのか。1千兆円を超す借金を放置しては、社会保障などが立ちゆかない。そう信じたからこそ決断したのではなかったか。
両党対立の背景には解散時期をめぐる思惑の違いがある。
だが、一体改革を潰してしまったら、両党は次の総選挙で国民に何を訴えるのか。葬ったばかりの「10%への消費増税」を再び掲げるのか。それでは何のための、誰のための選挙なのかわからないではないか。
そもそも、最高裁から違憲状態と指弾された衆院の「一票の格差」が1年以上放置されている。このまま総選挙をすれば無効の選挙区が相次ぐことになる。憲法違反を恐れる感覚が麻痺(まひ)しているのではないか。
それだけではない。法案が不成立なら「改革できない日本」という危険なメッセージを世界の市場に送ることになる。
日本が市場から不信任を突き付けられたらどう対処するのか。両党首にはっきりした方針があるようには見えない。
経済のグローバル化、巨額の財政赤字、少子高齢化のなか、どの政党が政権をになうにせよ政策の選択の幅は狭い。
衆参の「ねじれ」を超え、政党の枠を超えて政治を前に進める。そうした知恵と力、度量こそが必要な時代だ。
政権交代から3年、やっと実るかに見えた民主、自民、公明の3党合意を反故(ほご)にしてしまったらどうなるか。
かりに自民党が次の総選挙で第1党に返り咲いても、参院では公明党と合わせても半数に満たない。「ねじれ」は続き、2大政党の不毛な足の引っ張り合いがまた繰り返される。
首相と谷垣氏に念を押しておこう。
政治の仕事は問題を解決することである。問題をつくることではない。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1
社説:消費増税法案緊迫 合意の破棄は許されぬ毎日新聞 2012年08月07日 02時30分
国会の状況がにわかに緊迫している。税と社会保障の一体改革関連法案が参院で採決される前に消費増税反対派の野党7党が野田内閣に対する不信任決議案を提出する方針を固め、自民党にも強硬論が台頭しているためだ。
増税決着後に野田内閣を衆院解散に追い込もうとしていた自民の目算は狂い、7野党と別の名目で内閣不信任決議案や参院で野田佳彦首相への問責決議案を独自に提出する動きが出ている。一体改革に関する民自公3党合意の重みを忘れてはいないか。合意の破棄は政党の責任放棄に等しく、断じて許されない。
2大政党の動揺ぶりに、不信任案提出に踏み切る7野党の方が驚いているのではないか。
自民は責任放棄するな
自民党は内閣不信任決議案を、野田内閣を衆院解散に追い込むカードのひとつとして増税法案の成立後まで温存しようとしてきた。決議案は他のすべての案件に先立ち採決され、同じ国会での再議は行われないのが原則だ。
ところが7野党の不信任案提出方針で自民党は増税法案の採決前に野田内閣と全面対決するか、当面は信任するかの判断を迫られる。これを境に自民党には首相が衆院解散を確約しない限り3党合意を破棄し、独自の不信任決議案などで対決すべきだとする強硬論が強まり、谷垣禎一総裁もこうした方針に言及した。
衆院では民主党議員15人程度が造反しない限り不信任案は否決される。だが、自公が不信任案を提出すれば政権との対決色は一気に強まり、参院で問責決議案が提出されれば採決を目前に審議は相当期間、停止する公算が大きい。3党合意がほごになりかねないという危うい状況である。
衆院で合計51議席を超す増税反対派の会派が協力して不信任案を提出する展開はある程度、予想されたはずだ。にもかかわらず、この動きに影響され合意破棄をちらつかせる自民党内の議論は党利党略と言わざるを得ない。
合意したはずの重要法案の審議のさなか、最初は採決を早期に行うよう求め、今度は「衆院解散を約束しないなら不信任」と言いだすようではあまりに無原則だ。秋の総裁選に向けた谷垣総裁の露骨な生き残り戦術とのそしりを免れまい。
民主党政権の運営が低迷し、ねじれ国会の下で今国会での一体改革関連法案成立に3党が歩み寄った原点に立ち返る必要がある。国の歳入の半分以上を借金でまかない、費用が増大する社会保障の底割れを防ぐ緊急かつ不可欠の措置として危機感を共有しての合意だったはずだ。
欧州金融危機にみられるように、財政再建への歩みが頓挫しかねないというシグナルを世界に送る危険をどこまで認識しているのか。自民党には今日の危機的な財政状況を招いた主な責任が自党にあるという自覚がなお、足りないのではないか。
今国会での増税実現に政治生命を懸ける首相にとっても正念場だ。3党合意が崩れれば、ゴール寸前まで来ていた法整備が水泡に帰す。
自民党の今回の一連の対応について、首相や民主党も責めを負うべきだ。もともと3党合意は衆院解散を優先する自民と法成立後の「話し合い解散」の余地を持たせつつ成立したガラス細工だった。
ばらまき論議は猛省を
ところが民主党は参院での審議について引き延ばしが主眼ととられかねない日程を示したり、首相にも衆院解散の先送りを探るような言動が目立ったりしている。衆院議員の任期満了はいずれにせよ、来年訪れる。衆院の「1票の格差」是正に向け法的措置を講じたうえで、消費増税法案の成立後はすみやかに民意を問う覚悟を示すべきだ。党内の解散慎重論にばかり配慮しているようでは自民の不信を募らせる。
一方で、増税関連法案が衆院を通過して以来の緊張感のゆるみについても指摘しなければならない。
3党合意に伴い財政にゆとりができた分を公共事業に回すことへの容認ととられかねない表現が付則で加えられた。自民党は防災対策などで10年間に200兆円規模を集中投資する国土強靱(きょうじん)化基本法案を国会に提出しており、次期衆院選に向け旧態依然たるばらまきの再現を求めるような動きが出ている。あぜんとしてしまう。
軽減税率の導入など低所得者対策も積み残されたままだ。毎日新聞の最近の世論調査では消費増税法案の今国会成立を望まない人は61%で、望む人の33%を大きく上回っている。軽減税率は81%もが「導入すべきだ」と答えている。国民に一層の理解を得るため、できる限りの方策を具体化することこそ3党に本来、今、課せられた役割ではないか。
7野党による決議案提出という今回の第三極的な行動は、増税実施を織り込み政局の駆け引きや財源の分捕り合戦に関心が移りがちだった2大政党のゆるみも突いた。
なぜ、3党合意が必要と決断したのかを民主、自民両党は冷静に考え直すべきだ。そして野田首相、谷垣総裁両党首が先頭に立って、事態の収拾に努めなければならない。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120807k0000m070087000c.html
社説:混迷する国会 政争の愚を党首は悟れ毎日新聞 2012年08月08日 02時31分
税と社会保障の一体改革関連法案は参院審議の大詰め段階で民主、自民両党の駆け引きが続いている。増税反対派の中小の野党は法案成立の阻止に向け、野田内閣に対する不信任決議案を提出した。
自民党は野田佳彦首相に今国会での衆院解散を確約するよう求めており、独自に不信任案や問責決議案を提出する構えをなお崩していない。民主、自民両党は政策不在の政争を演じる愚を悟るべきだ。首相と谷垣禎一自民党総裁の党首会談で民自公3党合意の崩壊を阻止しなければならない。
ふたつの光景が何とも対照的に映ってしまう。ロンドン五輪は6日、日本女子サッカーがついに決勝進出を決めた。メダル数ですでに前回北京五輪を上回るなど選手団の健闘は東日本大震災の被災地をはじめ多くの人を元気づけているはずだ。
それに引き換えここ数日、演じられる政争は何としたことか。消費増税の是非とは別に「とにかく解散をさせたい」自民党の党利と、「とにかく解散がこわい」民主党の党略ばかりが先立つ。これではほとんどの人は「またか」と幻滅し、うんざりするばかりではないか。政治の劣化こそ、今回の騒動の本質であろう。
とりわけ、国民の目を意識してほしいのは自民党だ。
民主党に度重なる譲歩を強い、合意に至りながら「衆院解散を確約しなければ合意破棄」とエスカレートした対応はあまりに唐突だった。7日の自民党独自の不信任案、問責決議案提出を見送ったのは世論の反応がさすがに気になったためではないか。公明党が強硬路線への同調に難色を示しているのも無理はない。
そもそも3党合意が崩壊すれば首相が衆院解散ではなく、退陣に追い込まれる可能性も否定できまい。要求した衆院解散も実現せず、一体改革も頓挫した場合、谷垣総裁はどう責任を取るのか。理屈に合わないうえ、極めて危ういカケに出ていると言わざるを得ない。
首相にも改めて言いたい。政治生命を懸ける消費増税法案の行方が政権の命運に直結することは自明だ。にもかかわらず、谷垣総裁との党首会談で局面を打開しようとする執念があまり伝わってこない。
衆院解散の先送り論が党内で支配的なことから身動きが取れなくなっているのではないか。だとすれば、自民党の理不尽な強硬姿勢を決して批判などできまい。
不信任案提出で今後の国会はこの議案の処理が優先される。採決を待たずに自民が不信任案や問責決議案を独自に提出すれば、混乱の収拾は難しくなる公算が大きい。日本の政治を左右する判断が問われる。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120808k0000m070149000c.html
最優先すべきは消費増税法案の成立だ 2012/8/7付
消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の先行きが不透明になってきた。
野党第1党の自民党が野田佳彦首相に衆院解散の確約を求め、それを法案成立の条件にする姿勢を鮮明にしたためだ。
しかし一体改革関連法案は民主、自民、公明3党による修正合意で、衆院を通過した経緯がある。自民党も法案成立に重い責任を負っているはずだ。衆院解散時期をめぐる駆け引きよりも、3党は一体改革関連法案の成立を最優先すべきである。
関連法案を審議している参院の特別委員会は7日に中央公聴会を終えると、採決する環境が整う。8日の法案成立を求めていた自民党は、解散の言質がない限り、採決に応じない方針に転じた。
一方、採決の際の造反などを危惧する輿石東幹事長ら民主党執行部は当初、月遅れ盆明けの採決を探っていた。採決を引き延ばす姿勢が自民党に不信感を与えたのは確かであり、いたずらに対立を深めることになった。解散問題が障害になり、採決日程を決められない状況に陥っている。
消費増税法案に反対している国民の生活が第一などの中小野党7党は採決前に内閣不信任決議案を提出する方針だ。首相が解散を約束しなければ、自民党は独自に内閣不信任案を提出する構えをみせ、参院での首相問責決議案提出も視野に入れている。
たとえ不信任案が否決されても、自民党が提出した段階で、3党合意は白紙になりかねない。参院では問責決議案が可決され、国会審議が空転する恐れがある。
増税に反対する生活の小沢一郎代表らと、自民党が結果的に手を組む形になる。有権者の理解は得られず、自民党の評判を落とすだけだろう。公明党の山口那津男代表は「民主も自民も責任を自覚してほしい」と訴え、法案採決前の不信任案提出などに慎重論を唱えている。これが正論である。
首相と自民党の谷垣禎一総裁は党首会談で、率直に意見交換し、関連法案の成立に万全を期してもらいたい。ここで頓挫することになれば、衆院選後にどのような枠組みの政権ができても、容易に消費増税法案を成立させることはできないだろう。
法案が不成立の場合、市場の混乱なども懸念される。「決められない政治」に戻ってしまえば、民自公3党はみな敗者である。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO44643600X00C12A8EA1000/
3党合意と自民党 法案成立の責任どうした2012.8.7 03:27 (1/2ページ)[主張]
自民党は、社会保障と税の一体改革に関する民主、自民、公明による3党合意を破棄してまで衆院解散を求めて、総選挙でいったい何を主張するのか。
消費税率のアップが民主党の公約違反だと指弾するのか。そして「消費税増税はやはり必要だ」と唱えるのか。いずれにしても説得力は持つまい。
「決められない政治」を打破するため、3党で合意した責任をどう考えるのか。
消費税増税関連法案に対する参院審議は、採決の前提となる中央公聴会の段階に入っており、3党の賛成で法案は成立する。
自民党が最優先すべきは、この法案成立だろう。
対応を一任された谷垣禎一総裁には、9月の総裁任期中までに解散・総選挙に持ち込みたいとの思惑が見え隠れしているが、責任ある判断を求めたい。
衆院では、「国民の生活が第一」やみんなの党などが、7日に内閣不信任案を共同提出する方針だ。自民党はこれに同調するのではなく、単独で内閣不信任案を出すことを検討している。
民主党の造反がなければ、内閣不信任案は否決される見通しだが、自民党による不信任案の提出によって民主、自民両党の対立は決定的なものになる。
また、自民党は解散の確約を求め、7日にも首相問責決議案を参院に出す構えだ。
首相問責決議案は、内閣不信任決議案が可決された場合に、解散か内閣総辞職を首相に迫るような法的効力はない。だが、可決されれば参院審議は困難となり、法案成立が厳しくなる。
問題は野田佳彦首相の対応である。民主党は自民党の要求に応じ、採決日程を20日から8日に前倒ししたが、これまでの執行部の対応をみると、法案を早期に成立させたくないようにみえる。
民主党は、政権交代時に無駄の削減などによって16・8兆円の財源を生み出せると訴えたマニフェスト(政権公約)が破綻したことなど、改めて国民の審判を仰ぐべき立場にある。
消費税増税をめぐり、政権与党内を一本化できないことが党分裂も招いた。
政権を担う正当性が問われ続けてきたのである。首相は法案の成立後、できるだけ早く解散すべきである。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120807/plc12080703270005-n1.htm
野田首相 政治生命かけ解散決めよ 問責前に党首会談で打開を2012.8.8 03:29 [主張]
政局が重大な局面を迎えている。野田佳彦首相は政治生命をかけて事態を打開すべきだ。
自民、公明両党を除く野党各党は7日夕、衆院に内閣不信任決議案、参院に首相問責決議案を提出した。自民党も両決議案を提出する構えだ。
参院では問責決議が可決されるとみられ、その場合には消費税増税法案は採決されない公算が大きい。今国会での成立はきわめて難しくなる。
≪増税法案成立が最優先≫
野田首相は、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革の実現を最優先すべきだ。
そのためには、問責決議案が採決される前に自民党の谷垣禎一総裁との党首会談を開き、解散・総選挙を決めて自民党の理解を求めるしか方策はない。
民主党執行部は、解散・総選挙により議席を大幅に失うことを恐れるためか、解散を先送りする動きをみせてきた。
だが、衆院議員の任期は来年8月までだ。民主党は政権公約(マニフェスト)に盛り込まなかった消費税増税を実行しようとする以上、いま一度、民意を問わなければならない。政権の正当性は既に失われている。
自民党が参院審議の大詰めの段階で、民主、自民、公明の3党合意の破棄も辞さない強硬姿勢に転じた背景には、早期解散要求に応じない首相の姿勢が顕著になったことがある。
首相は1日の古賀伸明連合会長との会談で、「来年度予算編成を政治主導でやり抜く」などと発言して、自民党の強い反発を招いている。
野田首相は「誤解しない方がいい」と述べて早期解散を否定したものではないとの見解を示し、法案採決の日程も、当初提案していた20日から10日、さらに8日に前倒しして自民党の理解を得ようとした。
だが、民主党はこれまで最重要法案である増税法案の採決も先延ばしする姿勢をとり続けた。
3党合意で棚上げされた民主党マニフェストの最低保障年金、後期高齢者医療制度廃止についても「撤回したわけではない」などと主張してきた。
こうした対応が「民主党は3党合意を順守していない」という反発や、民主党政権を手助けしているだけだという危機感を自民党内で広げてしまったといえる。
解散時期の判断は首相の専権事項とされる。本来なら確約すべきものではない。しかし、一体改革に関しては、党派を超えた課題として与野党協力の枠組みが生まれ、その実現に3党が責任を負っている特別な事情がある。
≪3党合意は今後も必要≫
自民党が8日の法案採決に応じる姿勢に転じたのも、3党合意の破棄に強い批判があったからだといえる。ましてや首相は、この課題に政治生命をかけている。実現のためには解散の決断を含め、あらゆる方策をとるのは当然だ。
今国会で関連法案を成立させなければならないのは、3党合意をまとめた民自公の枠組みが、国政の重要な問題を解決する上で不可欠と考えられるからだ。
その他の政党が消費税増税に反対している状況で、社会保障制度改革や安定財源の確保などの実現には、総選挙後もこの枠組みは有効なものとなりえる。
社会保障と税の一体改革だけでなく、行政改革や安全保障など幅広い分野で国益と国民の利益を実現する「決められる政治」の足がかりを失ってはなるまい。
また、今国会で一体改革を実現する機会を逃せば、財政健全化の取り組みを国内外に示せないことになる。仕切り直して、次に法案を成立させられる保証はない。日本が自らの危機を克服できない姿を、さらけ出すことにほかならないのだ。
改めて国民の審判を受けるにあたり、首相に問いたいのは、「原発ゼロ」を求める意見などに影響され、原発再稼働を決めた政策がぶれ始めていることだ。現実的なエネルギー政策への取り組みを弱めてはなるまい。
谷垣氏との党首会談では、9月に発足する原子力規制委員会の人事案、今年度予算の執行に欠かせない特例公債法案を成立させることなどについても、しっかり確認してもらいたい。解散・総選挙によって生じる混乱を最小限に抑えなくてはならない。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120808/stt12080803290002-n1.htm
昨日の「朝日」は面白い!
8面に「消費税『朝日新聞はどっちだ』読者からの声」というテーマだ。
ネットには掲載されていないので、以下要約をしながら、「朝日」の主張を考えてみた。
ポイントを以下のようにまとめてみた。
1.社説は「企業としての朝日新聞社の主張ではない」が「朝日新聞の意見と思っていただいて構わない」「日々の社説には…社長はかかわらない」(大野論説主幹)という。
2.社説は「今の日本にとって、こういう視点が大切だと思うことを自分たちなりに考え、読者に提供し」「日本の社会にとって何が良い選択かを論じる場」「新聞社の経営にとって良いかどうかとは別」「編集と経営は適切な距離を保つ必要」(大野論説主幹)と述べている。
3.社説は「自分たちの意見を出す」同時に「記事を書いている報道局(政治部や経済部、社会部など)は別の組織になっていて、社説の内容に沿った紙面づくりが強制されることはない」「読者には多様な視点を必ず提供しなければいけない」(大野論説主幹)という。
4.社説は「社としての主張であるが、個々の記者の取材や記事、論評をしばるものではない」「社説との整合性を優先させて考えることはあまりない」(杉浦GE兼東京本社編成局長)と述べ「多様な視点」を「提供」していると述べている。
5.「読者」の「混乱」に対しては、「社内の議論」の「可視化」や「少数意見を尊重しながら議論を積み重ねる」「選択肢を考える材料を提供する」「新聞の役割を果たす」(杉浦GE兼東京本社編成局長)ことで対応すると述べている。
以下は、愛国者の邪論の意見だ。
1.確かに「朝日」は、「声欄への投書、お客様オフィスへの電話やメール、そして紙面モニターによる紙面への意見」など、読売や産経などと違って多様な意見を掲載している。
2.だが、社説を書く論説委員は「朝日」という企業の一員だ。論説主幹や編成局長は会社経営にどのように参画しているか。社長とはどのような位置関係にあるか、不明だ。新聞が売れなけば経営は成り立たない。経営と編集の関係は不明だ。
3.社の意見を述べる社説と一般の記事は別で社内の少数意見は尊重するというが、記事内容を含めて記事選択によって、社の意見を述べ、社外の、すなわち国民の中にある少数意見を排除していないかどうかだ。
4.これについては、7月19日付けの「オピニオン」、政治を話そう インタビュー&ルポ 金曜の夜、官邸前で」は興味深い。この記事を掲載しなければならないほど、「朝日」を含めた「大手メディア」の国民との離反と「危機」は深刻だ。
早足に人混みをすり抜けていた小熊(英二)さんが突然、立ち止まった。外階段に座っていた人たちに「ここに朝日新聞の人がいます。何か言いたいことありますか」と大声で呼びかける。こちらは一瞬、硬直。あちらは一瞬、沈黙。「もっとしっかり報道してください」「東京新聞に負けてるよ―」と声が上がると、歓声と拍手が起きた。前回は全国紙の不買を呼びかけるビラも配られていた。「自分たちの思いを代弁してくれていない」。大手メディアへの不信を肌に感じる。(引用ここまで)
5.東電福島原発の事故後、「過去の原発報道や社説の検証、反省」を踏まえ「原発ゼロ社会」を目指すという「主張に大きくかじを切った」とあるが、そのような「反省」をしなければならない「朝日」の経営と編集の教訓は、「原発」だけだろうか。
6.企業としての「朝日」は新聞掲載の記事と広告収入によって、その経営が成り立っている。そこにいっさいの「タブー」を持ち込んでいないと言い切れるだろうか。一般論として「読者には多様な視点を必ず提供しなければいけない」「少数意見を尊重」を述べることはできる。しかし、具体的に、「タブー」を検証できるかどうか、さもなければ、その存在は官邸前の民衆によって乗り越えられるだろう。具体的に指摘するとすれば、「朝日」の反共・嫌共性の克服、大企業優遇、天皇制、日米同盟優先主義と憲法軽視克復は焦眉の課題だろう。
7.以上、朝日の最近の記事(社説を含めて)は、「朝日」の「危機感」を表明しているかのように見える。それほど深刻なのだろう。こうした状況は、ある意味チャンス到来といえる。もっと意見を突きつけていかなければならない。
8.政治の「停滞」「混迷」は、見解の違いを鮮明にした報道がなされていないことが最大の要因だ。このことを克服することで日本国憲法を生かした政治の実現をすすめていかなければならない。「朝日」の信頼は、国民目線ということに尽きる!
毎朝の一面の文字眺むれば朝日の立ち居読み取るるなり
紙面モニターの以下の声が紹介されている。
「論調、矛盾していないか」(京都府・会社員・30代)
連載「教えて!消費税」シリーズでは、消費増税は(所得が少ない人ほど負担が重くなる)逆進性が強いこと、中小企業に負担がかかること、何より税収全体が増えないかもしれないということをたびたび伝えている。それにもかかわらず、社説では消費増税を肯定し続けている。社内の論調が一枚岩でなければならないとは言わないが、あまりにも矛盾していないか。(社説が言うように)「(政治が)決める」ことさえできれば、不公平な税制で国民が不利益をこうむってもよいということなのか。
「『記者有論』に説得力」(北海道・教職員・50代)
5月20日付の社説「消費増税と低所得層/軽減税率は将来の課題に」では、(食料品などへの)軽減税率の導入は消費税率を10%超に上げる必要が生じた時の課題とすべきだ、と記している。しかし、同23日付の小此木潔編集委員の「記者有論」は、「『基礎的な食料品は増税しない』との線で、与野党は合意すべきだ」と述べている。「増税と脱デフレの両立を図るには、消費を冷え込ませてはならず、そのためには食料品を増税しないことだ」とも言う。私は記者有論に説得力を感じるが、朝日新聞としてどちらの見解をとるのかがわからない。
「ハンタイの論客少ない」(埼玉県・大学生・20代)
5月25日付オピニオン面の「反消費増税の核心」で、竹中平蔵氏は、今、消費増税をすると起こり得る問題やその根拠をわかりやすく語っていた。だが、日ごろの紙面では、消費増税によって何が起きるかといった予測や分析が少ない。また、朝日新聞の方針に反するからなのか、増税反対の論客があまり登場していないと感じる。今後も、増税反対の意見を紹介してほしい。増税が引き起こす問題、逆に増税がもたらす恩恵を、それぞれくわしく解説してほしい。
これに対して杉浦信之ゼネラルディター(GE)兼東京本社編成局長・大野博人論説主幹・ジャーナリスト池上彰の各氏の討論が掲載された。
これに対して、
「社説と記事、相反するのでは?記者の意見、広く提示」という項目では、
(略)
大野 …社説は論説委員室でつくり、論説主幹の大野が責任を持つ。…いろいろなテーマについて毎日議論し、こう主張すべきだという結論を出す。…朝日新聞の意見と思っていただいて構わない。一方、記事を書いている報道局(政治部や経済部、社会部など)は別の組織になっていて、社説の内容に沿った紙面づくりが強制されることはない。
杉浦 私は得編成局長として各部が書く一般記事や紙面に責任をもっている。…朝日新聞では社説は社としての主張であるが、個々の記者の取材や記事、論評をしばるものではない。…消費税増税が必要だから問題点を取材しない、書かないということはあり得ない。
(略)
杉浦 …最初から社説との整合性を優先させて考えることはあまりない。「教えて!消費税」と違う結論になったことがあり、読者からは非常に勇気ある記者だという反応があった。だが、社説に反旗をひるがえすのが目的ではなく、現実をみるとこういう問題もあると指摘するためだった。
池上 論説委員は大所高所から国の行く末を考えた時、消費税が必要という結論を出したのだろう。一方個々の記者は経営が厳しい中小企業や、生活が苦しい人たちの声をすくい上げ、こんな問題があるんだよときちんと指摘する。役割分担として大事だ。
大野 社説はオピニオン面の中にある。米国の新聞では「OP-ED」(オポジット・エディトリアル)と呼ばれ、、一般的なスタイルだ。これは社説に対抗するという意味で、社説とは反対の意見を載せる役割を担う面であることを示す。朝日新聞もこの考え方を大事にしていて、しばしば社説と違う意見を載せる。また、社説の下には記者個人の意見を書く「記者有論」というコラムがあり、社説と違っても構わない。社説で自分たちの意見を出すとともに、読者には多様な視点を必ず提供しなければいけないと考えている。
池上 社説から記事まで論調が比較的一貫している新聞もある。確かに読者は混乱しないだろう。だが、自由闊達な議論が保障されてこそのメディアだ。朝日新聞は消費税増税でもほかのテーマでも「読者が判断できる材料、多様な論点、いろいろな意見を提供します」と訴える方がいい。国民一人一人が自ら考えて世論ができるのだから、その判断に役立つ記事、紙面を目指すということではないか。
「杉浦信之 考える材料を提供したい」という項目では
朝日新聞は様々な読者の皆さんの声を受け取るルートを持っています。声欄への投書、お客様オフィスへの電話やメール、そして紙面モニターによる紙面への意見などです。…朝日新聞社内の多様な意見とその議論の過程を読者の皆さんにお伝えすることにしたい。…少数意見を尊重しながら議論を積み重ねていき、読者の皆さんに選択肢を考える材料を提供する新聞の役割を果たして参ります。
「読者混乱 解消できる?社内の議論 もっと見せる」という項目では
杉浦 …いろいろな意見が載るのはいいが、読者の皆さんに説明もなく、ぽんぽんと違う記事や意見が唐突に出ていたということだ。ある日は社説で消費増税を訴え、ある日は一般記事で問題を指摘し、というのでは、読者の皆さんが混乱する。どうすればいいか。消費税報道をめぐる悩みだ。
池上、社説に反対する意見を載せていることが読者にわかるようにできないか。…
大野 …問題によっては、論説委員の中でも意見が違うこともある。それは、社説の下の「社説余滴」というコラムで、論説委員が顔や名前を出して自分の意見を書くようにしている。朝日新聞は論説委員の中でも意見を統一できていないのか、と見らるかもしれないが…。
池上 それは弱みではない。意見をまとめた社説が出ているわけで、それが出るまでにこんな議論があった、ということを読者に示せばいい。…
杉浦 社内の議論を読者に見せる「可視化」を進めたい。確かに、朝日新聞ではこういう議論があり、それぞれの認識には相当な幅があるというのをもっと見てもらうようにしなけれぱいけないと思う。…
池上 …テーマについて、月1度くらい、どういう議論をしているか紹介したらいいんじゃないか。…
大野 昨年3月11日の東日本大震災で東京電力福島第一原発が事故を起こした後、社説は「原発ゼロ社会」を目指すという主張に大きくかじを切った。人々の暮らしや経済への影響を考えると原発ゼロを打ち出していいのかといった意見もあったが、過去の原発報道や社説の検証、反省もしたうえでまとめた。消費増税ももちろん議論はしたのだが、法案を出すことが決まった時に改めて論説委員会室と各部の間でもっと議論をしてもよかったと思う。
「新聞社の経営との関係は? 編集は適切な距離を保つ」という項目では
池上 朝日新聞では、論説主幹が社説の責任者、編成局長が日々の紙面の責任者だとわかった。一方、株式会社朝日新聞社には経営トップとして社長もいる。消費増税したら新聞が売れなくなるのではないか、という経営面の心配があるはず。社長は紙面にまったくかかわらないのか。
大野 日々の社説は論説委員が議論し、最終的に主幹が判断する。そこには社長はかかわらない。社説は企業としての朝日新聞社の主張ではない。今の日本にとって、こういう視点が大切だと思うことを自分たちなりに考え、読者に提供している。日本の社会にとって何が良い選択かを論じる場であり、新聞社の経営にとって良いかどうかとは別だ。編集と経営は適切な距離を保つ必要があると考えている。
池上 今、日本新聞協会の会長には、朝日新聞社会長の秋山歌太郎氏が就いている。新聞協会は消費増税の際には軽減税率をとり入れ、その対象に新聞を含めるべきだと訴えている。
大野 軽減税率については5月20日付の社説で「将来の課題で、当面は見送る方がいい」と主張した。…新聞協会の方針や経営とは別の立場で考えると、結果として見解が異なる場合もある。
池上 私はNHKにいたが、放送局では論説委員と言わず、解説委員と言う。テレビと新聞の違いだ。放送局は放送法のもとで公共の電波を預かっているので、会社として特定の意見を主張できず、「解説」になっている。だが、新聞社は特定の意見を言える。インターネットで様々な情報が出ている中で、新聞が論を張るのは大きな役割だ。ただ、読者の信頼を得るために偏見や間違いがあってはいけない。そのためにも、論と記事をこうつくっている、ということを折に触れて読者に伝える必要がある。
(引用ここまで)
「東京」新聞の社説「リセットできない日本」を読んだ。
内容は、愛国者の邪論風に言えば、「日本の政治が変わる」という「期待感」に「盛り上が」った「政権交代から三年」を振り返って、自民党化した民主党野田政権の諸実態をみるにつけ、政権交代劇が「幻想の政権交代」に終わろうとしていることに対するマスコミの「反省」がある。
そもそも今回のような政権交代はマスコミの扇動があったことは言うまでもない。では何故扇動をしたか。コマーシャルに依存するマスコミの経済的基盤によるところが大きい。ジャーナリズム精神以上にカネの力は大きいというのが日本のマスコミの実態だ。原子力ムラと同じ構造だ。
その経済的基盤に大きな影響を与えていたのは、旧経団連、日経連、経済同友会、日本商工会議所など、いわゆる財界である。その財界は戦後の枠組みであるポツダム宣言路線と日本国憲法路線を否定し、日米安保体制とその枠組みによって巨大な利益を独占していた。その利益は財界の政治的代理人である自民党政治によって保障されていた。
だが、80年代後半のリクルート・消費税・コメ輸入「自由化」問題などによって、自民党政治への国民の不信が頂点に達した時、その政治体制と利益を死守するために取られたことは、自民党脱党組みに新たな政党をつくらること、さらには日本新党ブームを演出することで、自民党政治によって保障されていた枠組み=安保体制への批判と変革が及ばないように扇動することだった。
そのことは、以下の事実をみれば判る。
それは「政治改革」の名の下に、小選挙区制と二大政党政治づくりへと受け継がれていった。金権腐敗の構造である企業団体献金や政治家の資金集めパーティーなどは政党交付金を掠め取った後も一向になくなっていない。このことをみると、マスコミが煽った「政治改革」がウソとペテンの国民騙しであったことが判る。
また95年の沖縄米軍兵士による少女暴行事件の際にも「地位協定の改定」、普天間基地の「移設」に矮小化させ、国民の目が米軍基地撤去・日米安保条約廃棄に向かわないように躍起となった。むしろ、イラクのクウェート侵攻や「テロ」などを利用して日米安保共同宣言によって日米安保条約の適用範囲を「極東」から「中東」、「世界」に拡大させた。その際のキィーワードは「国際貢献」だった。その頂点は9.11とその対応だった。
その後自民党橋本政治の復活と消費税増税と小渕・森政権に対して、その矛盾が拡大し、国民の批判が増幅して行った時、「自民党をぶっ潰す」「備えあれば憂いなし」「改革には痛みをともなう」として劇場型政治を演出した小泉構造改革をマスコミは応援・煽った。そうして自公政権を延命させたのだ。
だが、それでも、小泉後の三大の自公政権の腐敗と無策は、小沢氏によって自民党政権路線の変更を演出させ、民主党政権を誕生させた。そうして今回の「東京」の社説となった。
だが80年代後半以後の「危機」を日米安保擁護派に乗り越えさせてきた諸事実に対して、マスコミ自身が演出したことに対する反省の言葉は見られない。何故か、再度強調しておこう。日米安保体制という枠組みから抜け出せないマスコミの限界と存在がある。
このことは、今日付けの「朝日」の社説を見れば明瞭だ。以下ポイントをまとめてみると、
1.多くの国民、とりわけ沖縄県民が配備に反発するのは、事故が続いたオスプレイの安全性への不安だけが原因ではない。普天間の返還が一向に進まないこと…に対する日本政府への不信が…が解消されない限り、いくら「安全だ」と太鼓判を押されても、納得できるわけがない。
2.政府がオスプレイ配備を受け入れるしかないというなら、何よりも破綻した沖縄との信頼関係を立て直さねばならない。そのためには、まず、辺野古移設が困難であると率直に認めることである。日米両政府が普天間の新たな移設先を真剣に探り、将来の確実な返還への道筋を示す。それなくしては、どんなに安全を「確認」しようとも、不信と不安は消え去らない。
3.防衛白書が指摘しているように、沖縄が「戦略的要衝」にあるのは間違いない。
4.1995年の少女暴行事件で、日米両政府は住民の敵意に囲まれては同盟は円滑に機能しないことを思い知らされたはずだ。
以上の「朝日」の言い分を愛国者の邪論風に言えば、沖縄の「戦略的要衝」を「間違いない」とする日米同盟を「円滑に機能」させるためには「住民の敵意」に囲まれないようにすること、そのためには辺野古移設を困難と認めること、普天間の「新たな移設先を真剣に探」ることと「将来の確実な返還への道筋を示す」ことが大事だと述べている。
日米軍事同盟という枠組みを温存したままで国民の「安全」の確保、「不信と不安」の克服は可能か。国民の命と財産は守れるのか、だ。そのため対等の立場から普天間基地撤去・基地返還をアメリカに要求できるのか。
もう一つの側面をみてみよう。それは「リセットに失敗した」日本の事例として「東京」が指摘している「福島事故の反省はいったい、どこにあるのでしょうか」と、まるで他人事の言い分だ。今最も国民の立場から報道している「東京」にして、こうなのだ。何故他人事と言えるのか。
マスコミは、共産党の吉井議員の、東日本大震災前の追及について、さらには以下の記事に書かれている事実を、国民に報せてきたか、そのことが鋭く問われている。
マスコミは「原子力ムラ」に協力加担してきたのではないのか。
「原子力安全・保安院などの勉強会が大津波による原発の電源喪失などを想定しながら対策を怠り、福島原発事故を招いた」という事実の結果、世界に恥ずべきフクシマがあることを反省しているか。
確かに「東京」は、一定の「反省」と今後の「展望」を以下のように述べている。
1.いまマスコミ不信の声はあちこちで聞かれます。抗議行動はマスコミが「人々の声」を十分に伝えてこなかった裏返しでもあるでしょう。
2.私たち新聞はどう変わっていくか。そこをしっかりと考え、行動していきたい。
しかし、「どう変わっていくか」を「しっかり考え、行動」するというが、具体的には見えてこない。これでは抽象的だ。では戦後政治の枠組み=土俵の枠内で診るのか、それとも枠外=土俵の外から視るのか、そこを真剣に、「しっかり考え」ない限り、すなわち戦後の出発点であるポツダム宣言と日本国憲法の枠組みへの「リセット」して、そこからものを看ない限り、真の政権交代、原発の危機からの脱却・克服はできないだろう。
このことは1945年8月15日以前の歴史認識と以後の歴史認識に係わる問題だ。
何故こういうことを指摘するか。「朝日」の言うように沖縄の「戦略的要衝」論が平然と語られていることが最大の問題だからだ。この「沖縄戦略要衝」論は、ペリー来航時から沖縄戦に至るまで、アメリカの位置づけとしては一貫しているのだ。
同時に文部省唱歌「蛍の光」に見るように琉球処分以後の、そうして戦後の天皇発言に見るような沖縄の位置づけにも示されている。
「沖縄戦略要衝」論の歴史が沖縄県民と日本国民にどのような苦しみを与えてきたか、マスコミは検証すべきだろう。これを抜きに、真の独立も、平和な日本もあり得ないということだ。
沖縄を防人とせし天皇の政(まつり)に挑む闘ひ起こる
以下「東京」「朝日」の社説と「赤旗」を掲載しておこう。
【東京社説】週のはじめに考える リセットできない日本 2012年8月5日
政権交代から三年目の夏を迎えました。あれから日本はリセットできたでしょうか。原発再稼働や消費税問題をみると、何も変わっていないどころか…。
二〇〇九年八月の総選挙で長く続いた自民党政権から民主党政権に代わったとき、人々の間には「これで日本の政治が変わる」という期待感が盛り上がりました。
民主党が掲げた「脱官僚・政治主導」と「地域主権」の旗は、たしかに新鮮に輝いていた。
◆脱官僚に失敗した政権
ところが三年たって、期待感は見事なまでに裏切られたというほかありません。たとえば政治主導。国家戦略室を設けて担当大臣が官邸直結で国の大方針を詰めていくはずでした。
そのためには、まず官僚を動かす基盤となる根拠法を定める必要がありますが、いまに至るも法律がありません。国家戦略室は「内閣総理大臣決定」という紙切れ一枚が設置根拠なのです。
その結果、いまでも担当大臣がいて議論はしていますが、官僚からみれば「おしゃべり会議」同然です。役所の都合がいいように結論を誘導して閣議決定してしまえば、実際に予算を要求して政策を動かすのは相変わらず各省に委ねられています。
そもそも役所の方針と異なる政策が出てきません。最近の日本再生戦略が典型です。全部で百十九ページもありますが、具体的に記されたのは天下りの受け皿になる官民ファンドの強化や新設ばかり。残りはほぼ官僚の作文です。
地域主権はどうかといえば、国の出先機関改革一つとっても、目覚ましい進展がありません。たとえば雇用状況がこれだけ深刻なのに、国のハローワークを地方の実情に合わせて運用する特区は東西でわずか二カ所、埼玉県と佐賀県で始まっただけです。
◆原発事故の反省どこに
地方が自由に使える財源として一括交付金の導入も政権公約の一つでした。しかし、総額二十兆円といわれる各省庁のひもつき補助金のうち一括交付金化されたのは、一二年度予算で八千三百億円にとどまっています。
これも本をただせば、政権が既得権益を手放したくない官僚と本気で戦う姿勢がないからです。霞が関の本質とは何か。ひと言で言えば「中央集権・東京一極集中の維持」に尽きる。脱官僚・政治主導ができないから地域主権も進まないのです。
消費税引き上げをめぐる議論もあきれた展開です。野田佳彦政権は「社会保障と税の一体改革」と叫んでいたのに、自民、公明両党との三党合意を経て、いつのまにか増税の財源が公共事業に化けてしまいそうな雲行きです。
それは三党合意で「減災と事前防災」を大義名分にして公共事業に資金を重点配分する条項が盛り込まれたのがきっかけでした。
東日本大震災を経験したので一見、もっともらしいのですが、初めから「増税分は公共事業の財源に充てる」と掲げていたら、国民は納得したでしょうか。増税法案が衆院を通過したとたんに、北海道や北陸、九州・長崎の新幹線着工も決まりました。これでは、だまされたような気分です。
それに原発問題。関西電力大飯原発が再稼働された後、新たに設置される原子力規制委員会の顔ぶれが国会に提示されました。原子力安全・保安院が原発を推進する経済産業省の下に置かれていたことが安全規制が形骸化した理由です。
だから規制委は原発推進勢力である役所や業界、学会の「原子力ムラ」からの独立こそが重要なのに、提示された委員長や委員候補のうち二人は相変わらず原子力ムラの住人です。福島事故の反省はいったい、どこにあるのでしょうか。
こうしてみると、残念ながら「日本はリセットに失敗した」と言わざるをえません。原発再稼働に反対する抗議行動の底流には、変わることができない政治の現状に対する人々のいらだちが潜んでいるように思えます。
もう一つ。国会議事堂包囲デモがあった七月二十九日、日比谷公園でたまたま会った村井吉敬早稲田大学アジア研究機構研究員教授の言葉が耳に残っています。「三年前の政権交代でマスコミも変わるチャンスだったのに変われませんでしたね。なぜ変われないのか」
こう問われて「それは霞が関や永田町という取材源が変わらず、取材源との距離も取材方法も変わらないからです」と答えるのが精いっぱいでした。
◆「人々の声」を伝えねば
いまマスコミ不信の声はあちこちで聞かれます。抗議行動はマスコミが「人々の声」を十分に伝えてこなかった裏返しでもあるでしょう。私たち新聞はどう変わっていくか。そこをしっかりと考え、行動していきたい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012080502000103.html
「朝日社説」 オスプレイ―普天間移設の道筋示せ 2012年8月5日(日)付
日本に最大限の配慮はするが、10月の配備計画を変えるつもりは全くない。
米国防総省で森本防衛相と会ったパネッタ国防長官が示したのは、海兵隊の新型輸送機MV22オスプレイを予定通り沖縄・普天間飛行場に配備するという強い意志だった。
オスプレイ12機が山口県の岩国基地に陸揚げされてから2週間。この間、米軍は「安全性が確認されるまでは飛ばさない」という約束は守っている。
もちろん、安全の確保は極めて重要だ。だが、多くの国民、とりわけ沖縄県民が配備に反発するのは、事故が続いたオスプレイの安全性への不安だけが原因ではない。
普天間の返還が一向に進まないこと、それに対する日本政府への不信が根っこにある。これが解消されない限り、いくら「安全だ」と太鼓判を押されても、納得できるわけがない。
沖縄では、知事も県議会も名護市長も普天間の県外・国外移設を求めている。名護市辺野古への移設がもはや無理なことは明らかだ。
それをわかっていながら、政府は辺野古案を降ろそうとはしない。その結果、沖縄が最もおそれる「普天間の固定化」を招いているとの批判は強い。
政府がオスプレイ配備を受け入れるしかないというなら、何よりも破綻(はたん)した沖縄との信頼関係を立て直さねばならない。
そのためには、まず、辺野古移設が困難であると率直に認めることである。
中国の急速な台頭を受け、米軍は「アジア回帰」の姿勢を強める一方、軍事費の大幅削減にも直面している。
防衛白書が指摘しているように、沖縄が「戦略的要衝」にあるのは間違いない。ただ、太平洋地域の米軍全体の抑止力の中で、海兵隊の沖縄駐留をどう位置づけるかについては、再検討の余地はあるはずだ。
現行機に比べ速度や航続距離が格段に向上するオスプレイが海兵隊に配備されるなら、沖縄駐留にこだわる必要はないと指摘する専門家もいる。
沖縄では配備反対の大規模な県民大会が計画されている。やはり県民総決起大会が開かれた1995年の少女暴行事件で、日米両政府は住民の敵意に囲まれては同盟は円滑に機能しないことを思い知らされたはずだ。
日米両政府が普天間の新たな移設先を真剣に探り、将来の確実な返還への道筋を示す。
それなくしては、どんなに安全を「確認」しようとも、不信と不安は消え去らない。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
「赤旗」 津波で電源喪失想定 06年時点保安院勉強会 吉井氏に保安院長認める2012年8月4日(土)
(写真)質問する吉井英勝議員=3日、衆院経産委
日本共産党の吉井英勝議員は3日の衆院経済産業委員会で、原子力安全・保安院などの勉強会が大津波による原発の電源喪失などを想定しながら対策を怠り、福島原発事故を招いたと追及しました。
保安院と原子力安全基盤機構(JNES)は2006年に「溢水(いっすい)勉強会」を設置。東電、東北電力なども参加して07年4月までに10回以上の勉強会を開催し、大津波の可能性や影響などを検討していました。吉井氏の質問に、保安院の深野弘行院長は、06年5月11日の勉強会で東電が福島第1原発5号機で15・9メートルの津波を受けると報告していたほか、女川原発2号機が15・8メートルの津波を受け、「常用・非常用海水ポンプは総て機能喪失」「電源の機能喪失となり、安全系の電動機、電動弁の機能喪失となる」とする報告書を出していたことも認めました。
吉井氏は、国会や政府の事故調査委員会の報告書によって、東電が建設費などコストがかかることを理由に対策を取らなかったことは明白になったと指摘し、「どのような指示をしたのか」と質問。深野院長は「口頭で検討を促すような対応でとどまっていた」と認めました。
吉井氏は、想定しながら対策を怠った人災であり、東電と歴代政権の「不作為の責任が問われる」と強調しました。
枝野幸男経産相は「安全神話」に縛られていたことを認め、「もっと対策をとっておけば、こうした重大な事故に至らなかったのではないかとの指摘は真摯(しんし)に受け止める」と答えました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-08-04/2012080402_04_1.html
今年度版「防衛白書」が発表され、必ずしも多くはないが、各紙が社説で論評した。今日現在で把握できた新聞を一覧してみると、立場が鮮明になった。その最大のポイントは憲法第9条の「国際紛争を非軍事的手段で解決する」という「日本の国家の戦略」を踏まえて論評がなされているかどうか、ここに大きな違いがあることが判る。
「防衛白書」をみると、日本国憲法第9条を使って紛争を解決するという立場は出てこない。自衛隊が憲法第9条の解釈に違反していることは当然だが、百歩譲って、9条の解釈に色々な意見を認めたとしても、防衛省、政府は、自らが寄って立つべき日本国憲法の立場に違反していることが、この防衛白書によって立証されたといえる。その根拠は何か。それは憲法第99条の憲法尊重擁護の義務条項に明確に違反しているからだ。
しかも、このことを指摘したマスコミは皆無だ。こうして防衛省・政府の土俵で、すなわち日米安保条約是認の枠組みで議論が、安全保障の論議が展開されているのだ。まさに日米政府の思う壺といえる。
だが、今回の防衛白書をめぐって展開された社説をみると、少し様相が違ってきている。最大の要因は、普天間基地の扱いとオスプレイ配備について、沖縄の闘いとオスプレイ配備に反対する全国各地の知事たちの姿勢がある。全国知事会は日米安保是認派であるが、オスプレイ配備を強行すると、日米安保体制が揺らぐというスタンスだ。
沖縄の知事や宜野湾市長のような姿勢の首長が各地に広がったといえる。これは日米安保条約の従属的本質、国民の命や安全、財産を守らないという本質的矛盾が噴出してきたといえる。これに葉沖縄県民の不屈の闘いがある。
こうした状況の中にあって新聞は何を主張したか、だ。新聞の論調は国民の中にある世論・ムードを一定反映しているのは事実だ。だが同時に、新聞が国民世論を扇動し、日米安保体制を擁護するためのイデオロギーをふりまくという側面もある。
もう一方では日米安保体制を否定するのではないが、国民目線から考えると日米安保体制の矛盾を突いた論戦を展開している側面と憲法9条の理念に即した論調を展開する側面もある。
こうしたイデオロギー状況が鍔迫り合いを行っているのが、現局面といえる。こうしたイデオロギー状況にあって、国連憲章と国際法にもとづく世論、日本国憲法第9条の理念にもとづく世論が多数派になるためのイデオロギー闘争と実際の運動の発展、これが今求められている。
そこで、ポイントを以下、4つにまとめてみた。
1.日米安保条約=日米軍事同盟深化論=動的防衛力の強化を強調する主張
(1)抑止力論を主張する論は、「財政危機」であっても軍事費減を認めない論であることを見ていく必要がある。
(2)こういう論に対しては軍事と財政・増税を強調する必要があるだろう。事実近代日本の侵略戦争は増税・増税で、国民の不満を国民同士を分断させる手法を取ったことを想い起こす必要がある。
(3)政府に反対する国民を「非国民・国賊」としてバッシングし、村八分に追いやった。現在は「自己責任」論、公務員バッシングに代表される足の引っ張り合いだ。
2.中国批判を中心に日本の役割を強調するが対応は抽象的
(1)確かに中国の大国主義的行動や国内の人権問題は批判されるべきことは多い。
(2)これに対しては歴史的側面・中国領土・地政学的問題も検討すべきだろう。
(3)中国の軍事費の拡大面を国民一人当たりで見ると、日本はどうか、中国批判の一面性は免れないだろう。
(4)だが中国の大国化が世界にどのような影響を与えるか、民族自決主義や国家対等平等論など社会主義を目指す国家としての自覚的行動が、社会主義の信頼を増幅していくことを中国政府は自覚すべきだろう。
(5)中国批判の目は、そのまま日本国政府批判に跳ね返ってくることを自覚すべきだろう。
3.不測の事態に備えて軍事交流・相互理解を強調する主張
(1)軍隊の役割を認めながら、軍事的「対話」によって解決しようとするものだが、「現実的対応」として強調することで、ズルズル軍事優先になっていく歴史を教訓にしなければならない。
(2)普天間基地の「負担軽減」論に象徴されている。「負担軽減」は基地温存の空手形、絵空事であることは、この間の経過が示している。
4.白書の姿勢批判を強調する主張
(1)これは、白書が現実に起きている国民の負担について記していないこと、ごまかしていることを批判している。
(2)具体的にどうすれば紛争の解決へのプロセスが見えてくるか、明らかにすべきだろう。
5.非軍事・平和的手段の強化を強調する主張
(1)冷戦構造にもとづく抑止力論にもとづく軍事的対応を批判しているが、国際法と日本国憲法9条にもとづく外交路線を、さらにイメージ化する努力が必要だろう。
(2)そのためには、外交だけではなく、文化・スポーツ・教育交流、経済交流、青年交流、歴史認識の交流など、相互理解を多面的な交流をとおして実現していく方策を提案していく必要がある。
(3)これこそが憲法9条の理念の具体化である。ダガ、こうした視点での批判はない。これが憲法9条改悪勢力の伸張を許している。
(4)日米安保=軍事同盟優先主義、日米安保=軍事同盟を前提にした「交流」から非軍事同盟の交流を具体的に提案し、国民への不安を克服していく必要がある。
(5)これが可能になれば「ギクシャク」論を排除していくことが可能になる。
日米のえにし深める方策は軍事の土俵抜け出でてこそ
では、以下一覧してみたので、検討をお願いしたい。
防衛白書の強調点は、森本防衛大臣の以下の言葉に象徴されている。
http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2012/2012/index.html
北朝鮮では、金正恩氏を中心とする新体制が短期間で整えられるとともに、本年4月には「人工衛星」と称するミサイルの発射が強行されました。また、中国は、国防費を継続的に増加し軍事力を広範かつ急速に近代化させるとともに、わが国の近海などにおいて活動を拡大・活発化させています。さらに、ロシアも極東地域において艦艇や航空機などの活動を活発化させています。
また、国際社会全体を概観すると、頻発する地域紛争やテロリズムなどの非対称脅威は人々に大きな恐怖を与え、さらに、核・生物・化学兵器などの大量破壊兵器やそれらを運搬するための弾道ミサイルの移転・拡散が問題となっています。防衛力整備については…厳しい財政状況の中にあっても着実に進展させ…動的防衛力の構築を進めるとともに…日米同盟を深化・拡大することにより、日米両国のみならず、地域の平和と安定のための役割を果たし…米国の抑止力を維持しつつ、戦略的観点から日米防衛協力のあるべき姿を模索し、これを実現し…国際社会の平和と安定への協力において、防衛省・自衛隊は大きな役割を果たし…海外におけるこうした自衛隊の活動…万全の態勢で取り組んで…危機管理態勢については迅速・的確に対応できる体制の整備などに努めて…(引用ここまで)
こうした視点で書かれた防衛白書に対して、以下各紙の特徴を一覧してみよう。以下分類してみた。
1.まず憲法を語らず日米安保体制擁護、日米軍事同盟深化を掲げる新聞からみてみる。
産経 防衛白書 尖閣の危機に守り固めよ 8.2
日本政府は防衛費を10年連続で削減…危機認識が決定的に足りない。財政事情などにとらわれて国家の安全確保を怠ってきたとしか言いようがない。動的防衛力…を裏付ける警戒監視活動の強化や突発的な事態に即応する装備の充実は不十分…着実かつ速やかに取り組むこと…しなければ、日米同盟の抑止力に不可欠な米軍普天間飛行場の移設問題の二の舞いになりかねない。
読売 防衛白書 中国軍の活動に警戒を怠るな 8月1日
「アジア重視」を鮮明にした米軍との「動的防衛協力」を強化するとともに、海空自の部隊配置や装備を充実させることが急務だ。防衛費の10年連続の減少にも、歯止めをかけるべきである。
…日本は、米韓両国との軍事情報の共有を拡大し、共同演習を通じて抑止力を高めねばならない。
2.中国批判を中心に日本の役割を強調するが対応は抽象的
岐阜 防衛白書 中国の国内情勢に注視を8月 2日
十分な情報公開がないことが、中国の軍事面での意思決定や行動に対して、国際社会が強い懸念を抱く一因になっていることは間違いない。…国際社会が大国に望む責任を、中国は果たしていないと言わざるを得ない。透明性が確保されていなければ信頼醸成はできず、意思決定や行動に疑念が生じる。無用な緊張を高めることにもつながりかねない。 国際社会は、中国で何が起きているのかを注視・警戒しつつ、粘り強く透明化を求め続けるべきであり、日本政府には中心的な役割を果たす努力を尽くしてもらいたい。東アジアの安定には不可欠なのだ。
山陰中央新報 防衛白書/求められる中国の透明性08/02
透明性が確保されていなければ信頼醸成はできず、意思決定や行動に疑念が生じる。その結果、無用な緊張を高めることにもつながりかねない。国際社会は中国で何が起きているかを注視しつつ、粘り強く透明化を求め続けるべきである。東アジアの安定は中国を抜きに語れない。日本政府も最大限の努力をしてもらいたい。
南日本 [防衛白書] 中国軍の動向に警戒を8/2
共産党の一党独裁下にある中国は、国政レベルの普通選挙制度がなく、国民の代表が軍事の最終決定権を持つという意味での「文民統制」は存在しない。そうした特殊な体制の国家で、政治の意思とは別に軍が行動する可能性が強まりつつあるのは見過ごせないし、警戒するのは当然である。情報公開が十分でなければ、中国の軍事面での意思決定や行動に国際社会が強い疑念を抱くのは当然だ。透明性が確保されなければ信頼醸成はできず、意思決定や行動にも疑念が生じて、無用な緊張を高めることにもなりかねない。 中国は大国としての責任を果たさなければならない。国際社会は中国で何が起きているのかを注視し、危機感と警戒心を緩めることなく、粘り強く透明化を求め続けるべきだ。日本政府はアジアの近隣諸国と連携して、その中心的な役割を果たす必要がある。
3.不測の事態に備えるためには軍の対話や交流を求める。
毎日 :防衛白書 懸念される中国軍動向 08月01日
習次期指導部の軍事戦略は流動的だ。軍の政治的影響力が拡大し、対外政策決定で大きな力をふるうような事態は、アジア太平洋地域の安定にとって大きな懸念である。今後の中国の対外戦略を見極めるため、軍の動向を注視する必要がある。そのためにも日中の防衛当局による対話、交流促進が重要だ。…不測の事態に備えた中国軍当局と海上自衛隊の「海上連絡メカニズム」構築を急ぐとともに、相互理解の増進に一層、力を入れるべきだ。
山陽 防衛白書 注視必要な中国軍の動向8/4
周囲との摩擦も辞さないこうした活発な動きや強硬姿勢をみれば、指摘は当然…引き続き警戒が必要…ただ、中国へのあからさまな対抗策は危機感をあおり、地域の不安定化につながる可能性がある。日米の緊密な連携とともに、不測の衝突を避けるため日中防衛当局の対話や交流促進が欠かせまい。…年次報告である白書は、日本の防衛力や安全保障について国民に情報を提供し、理解を得るのが重要な役割のはずである。誰に向けての白書なのか。いま一度考え直すことが必要だ。
4.防衛白書の姿勢そのものの批判を展開する
中国 防衛白書 民意の動向なぜ触れぬ 8月2日
書きたいことは書くが、都合の悪いことにはふたをしている。そんな印象を抱かざるを得ない。おとといの閣議で了承された防衛白書である。…ただ白書とは単なるプロパガンダではない。1年の動きを検証し、あるべき政策を国民にきちんと伝えていく。そんな役割があるはずだ。…これでは日米両政府が手を焼いている問題は、あえて無視していると言われても仕方あるまい。
防衛政策について丁寧に説明し、国民の理解を得る。そう期待しているのなら白書の作り方から見直してもらいたい。
沖縄タイムス [防衛白書]負担増を強いる内容だ 8月3日
「米軍の抑止力」に過度に依存する防衛省の論理は、基地の負担軽減を求める沖縄の声を真っ向から否定するもので、白書には沖縄軽視の姿勢が随所に読みとれる。…白書に色濃くにじむのは、軍事的脅威には軍事力で対抗するという冷戦型の安全保障観である。日米が軍事力の強化を続ければ際限のない軍拡競争に陥り、逆に東アジア地域の緊張感は増すだろう。 かつて、「太平洋の要石」とも形容された沖縄の地理的優位性を日米が強調すればするほど、県民は、沖縄戦で本土防衛の「捨て石」にされた苦い記憶を呼び起こす。 12年版防衛白書には、基地の重圧に苦しみ続けてきた沖縄県民に対する配慮、目配りが全く感じられない。
5.非軍事的・平和対応を強調する。
東京 防衛白書と中国 「ジレンマ」に陥っては 8月1日
動向を注目する必要はあるが、日米側がやみくもに軍事力を強化すれば「安全保障のジレンマ」に陥ってしまう。…日米両政府は軍事力強化ではなく、中国に対し、周辺海域での活動活発化や国防政策の不透明さが地域の懸念事項となっていることを伝え、海洋での航行の自由を守ることが中国の国益にも資すると粘り強く説得する必要がある。…沖縄の地政学的、戦略的な重要性を強調するばかりでは、画竜点睛を欠く。
北海道 防衛白書 中国との対話も大切だ 8月2日
だが中国と周辺国が角突き合わせるだけでは緊張が高まるばかりだ。まず中国は膨れる国防費や軍備の透明性を高め、周辺国との関係を損なう海洋進出を自制するべきだ。一方、日本政府は中国の脅威を強調するだけでなく、停滞気味の防衛対話を再び活性化したい。大臣級や制服幹部間などさまざまなレベルで話し合い、問題解決と信頼醸成の努力を重ねることが必要だ。…領土や権益の問題は、平和的な外交対話で解決を図るよう日中をはじめ各国政府に強く求めたい。
信濃毎日 防衛白書 摩擦を減らす工夫こそ 8月1日
かといって、軍事的な脅威を絶えず強調していればいいというものでもないだろう。逆に中国を刺激し、さらなる軍拡へと向かわせる恐れがある。 不測の衝突や不毛な対立をいかに防ぐかが、日中双方に問われている。外交のパイプを太くし、相互の信頼関係を築くことが、これまで以上に重要になる。互いに腹を割って懸案事項について話し合い、解決へ向けて知恵を絞り合える関係にしたい。…柱は「動的防衛力」の構築である。「専守防衛」を旨とする自衛隊の制約を緩め、活動の幅を広げることを目指している。日本の領域外での米軍との共同行動など、憲法が禁じる集団的自衛権の行使に道を開く恐れがあるものだ。 果たして力には力を、という発想で中国と向き合っていけるのだろうか。日米安全保障条約があるからといって、米国が日本の思惑通りに動く保証はない。中国への対抗策を軍事的な抑止力だけに頼るのは危険である。 急がなくてはならないのは、不測の衝突がエスカレートしないようにする仕組みづくりだ。日中の防衛当局は尖閣諸島を含む東シナ海のトラブル回避に向けたホットラインの開設を目指しているとされる。こうした工夫を積み上げていきたい。双方の指導者が頻繁に顔を合わせ、信頼関係を地道に築くことが欠かせない。
京都 防衛白書 対中政策は外交を軸に 8月01日
方々であつれきが生じている現状を考えれば、中国の行動をけん制することは道理だろう。
ただ、中国をにらんだ防衛力の強化が、中国にいっそうの軍拡を促す恐れもある。対中政策は防衛面を中心とするのではなく、政治や経済、外交を含めて多面的に考えなければならない。…白書が中国の脅威をことさら強調する背景には、日米同盟の意義を国民に訴える狙いもあろう。具体的には、不測の事態を想定した「動的防衛協力」を掲げている。…ただし、日中両国がさまざまなレベルで話し合い不毛な衝突を避けることが肝要だ。中国は日本にとって最大の貿易相手国である。対中関係の緊迫化を未然に防ぐ外交や政治の力こそが問われよう。
日米の懸案についての記述は上っ面でしかない。白書は米軍普天間飛行場の辺野古移設が「唯一の有効な解決策」とするが、現実味がないことは明らかだ。安全性に懸念がある垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備計画も強行しようとしている。白書が普天間の「危険性除去へ全力を尽くす」とするなら、政府は計画見直しを米側にもっと迫っていいはずだ。
神戸 防衛白書/対中国戦略は外交を軸 08/03
大切なのは、冷戦時代の「力の均衡」に戻るのではなく、不毛な衝突を避けるための外交努力だ。沖縄の地理的重要性をことさら強調し、抑止力の向上を図るだけでは、溝は埋まらない。
首脳をはじめ、さまざまなレベルで胸襟を開いて話し合ってこそ、摩擦を減らすことができる。対中国戦略の軸は外交であることを肝に銘じるべきだ。
高知 【防衛白書】中国との交流のパイプも8月2日
だから日米同盟の強化が必要、という白書の言い分が透けて見えるが、対抗策を「力の論理」に頼りすぎると対立のジレンマに陥りかねない。過日、一連の会議を終えた東南アジア諸国連合(ASEAN)は、中国との領有権問題などを話し合いで解決する方法を模索している。日中間でもこうした枠組みづくりが欠かせない。…外なる脅威を語り、内なる備えを説くのは防衛白書の常ながら、日米同盟の強化、ないしは深化が中国側に与える影響も考えておく必要がある。互いの脅威を言い募ることで、対立をエスカレートさせ、地域を不安定化させては元も子もない。ASEANは02年、領有権問題などでの武力行使を禁じる行動宣言に中国とともに署名、現在はこれを法的拘束力のある行動規範に格上げすることを中国に求めている。東南アジアを非核兵器地帯にする構想もある。日中間の本格的な防衛交流は、漁船衝突事件で途絶えている。トラブル回避の連絡体制、防衛トップの相互訪問など交流のパイプも太くしたい。
琉球新報 軍事衝突回避 日米中の戦略的対話を7月30日 防衛白書ではない
尖閣諸島の領有権や東シナ海のガス田開発をめぐる対立が続く一方で、日中双方で「領土ナショナリズム」も高まっている。こうした中、両国は万が一にも、種々の対立を武力によって決着するという誘惑に駆られてはならない。…尖閣問題で米国が日本を支援するとかしないとかいう議論がかまびすしいが、石垣市に帰属する尖閣諸島はわが国の領土であり、県民を度外視して尖閣を「火の海にすることも辞さず」といった議論にくみするわけにはいかない。国連憲章に照らしても、あらゆる争いは平和的手段による解決を図るべきだ。
期待したいのは「日米中戦略対話」だ。野田佳彦首相が海洋や経済をめぐるルールづくりを念頭に米中両国に提案した。日本政府はこれを実現し、戦略的対話を通じて国益と東アジアの平和を両立させる外交の真価を発揮してほしい。
今日は特別に二つの記事を書いてみた。それほど怒りが湧いてきたのだ!
以下の二つの記事を良くお読みいただきたい。
7月31日、国会でどのような恥の象徴的質疑が行われていたか、記録しておこうと思う。マスコミはこうした質疑はほとんど報道しないから、政府がどんな馬鹿げたことをやっても平気でいられるのだ!
沖縄の基地依存を許し、国内全土の米軍基地化を許すものとして、マスコミに抗議しなければならない。
と思ったら、共同通信がオスプレイを「空飛ぶ恥」としてアメリカでは報道されていることを紹介している。これにはアッパレを送ろう。この記事を読めば、森本防衛大臣の発言が、デタラメを通り越して、政府がアメリカの情報を何も調べていないことが判る。いや判っていても知らぬふりをしていたのかもしれない。
殺人のための兵器をミサゴとふ渡りたりけり人間の恥
オスプレイの自動回転機能 飛行訓練せず模擬のみ 赤嶺議員に防衛相2012年8月1日(水)
(写真)質問する赤嶺政賢議員=7月31日、衆院安保委
森本敏防衛相は31日の衆院安全保障委員会で、垂直離着陸機オスプレイのオートローテーション(自動回転)機能について、部品の欠損や機体損傷の可能性をあげて、「実際の飛行機を使って訓練するのではなく、シミュレーション(模擬訓練)で体験することを通じて練度を高めるシステムになっている」と語りました。オスプレイの自動回転機能は、危険すぎて実証できないことを事実上認めたものです。日本共産党の赤嶺政賢議員の追及に答えました。
赤嶺氏は「オスプレイは現実の市街地を飛び、シミュレーションの世界を飛ぶのではない」と厳しく批判しました。
さらに赤嶺氏は、このシミュレーション訓練を行うためのコンテナが、オスプレイ配備が狙われる米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)に搬入されているのではないかと追及。米軍が作成した環境審査(レビュー)で示されているコンテナ型シミュレーター(模擬操縦装置)の設置場所に類似した建造物が設置されているとの報道を示して迫りました。
森本氏は「確認していない」としつつも、「シミュレーターがすえつけられるのは、飛行の安全に全体として寄与する」「パイロットの練度を一定にするためにごく自然の措置」などと居直りました。
赤嶺氏は「米兵の練度向上が沖縄では事件・事故につながってきた。日米安保と県民の命とどっちを大事にするのか、二者択一だ」と指摘。安全が確認できるまで飛ばさないとしながら、なし崩し的な配備に向けた動きを厳しく批判しました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-08-01/2012080104_01_1.html
オスプレイ普天間配備「理解できぬ」 開発関与の元米高官/「空飛ぶ恥」と有力誌 2012/08/01 17:02
米軍岩国基地でプロペラを回転させるオスプレイ。米海兵隊の整備員やパイロットが見守る=7月、山口県岩国市(米軍提供)
【ワシントン共同=上西川原淳】1980年代、米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイの開発計画に国防次官補として関わったローレンス・コーブ氏が1日までに共同通信の取材に応じ、オスプレイの安全性は以前より向上したが、危険であることに変わりはなく、人口密集地に隣接する米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)配備は「危険を伴い、理解できない」と強い懸念を示した。
米国防総省はオスプレイの安全性を強調しているが、専門家や元米軍幹部らから多くの疑念が指摘されている。開発計画に関わった当時の国防総省高官も不安視していることが裏付けられた形だ。
81~85年に国防次官補を務め、現在は米シンクタンク、アメリカ進歩センター上級研究員のコーブ氏は、オスプレイは「製造されるべきではなかった」と明言した。
同氏によると、父親のブッシュ政権当時のチェイニー国防長官はオスプレイに関し、あまりに高額だとして開発を中止しようとした。
しかし、ブッシュ氏の後任となったクリントン大統領が前政権との違いを出すために、軍産複合体と一緒になり開発継続を決定。海兵隊の将校は、悪い情報を報告しないよう試験飛行部隊に伝えていたという。
コーブ氏は、全エンジン停止の際、機体降下で生じる空気抵抗で回転翼を回して安全に着陸する「オートローテーション」機能を備えているかどうか「疑念を持っている」と述べた。その上で、オスプレイの普天間配備は「必要のないリスクを冒している」と指摘した。(共同通信)
◎ 「空飛ぶ恥」と有力誌 米国内でも安全論争
【ワシントン共同】米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイは開発段階で犠牲者を伴う墜落事故が相次ぎ、米有力誌タイムが「空飛ぶ恥」と題する記事を掲載するなど、米国内でも安全性をめぐる論議が交わされた。
米議会調査局報告書などによると、オスプレイは開発段階の1991年、92年、2000年に計4回の墜落事故を起こし、死者数は計30人に上った。
タイム誌は07年の記事で「30人という死者数は(人類初の月への有人宇宙飛行計画となった)アポロ計画の犠牲者の10倍に上る」と批判。開発コストも問題視した。
米軍はこうした中で量産に踏み切り、07年以降、戦時下のイラクやアフガニスタンに実戦投入した。
海兵隊は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備するオスプレイの事故率について、海兵隊の航空機全体の平均より低く「良好な安全飛行記録を持つ」(リトル国防総省報道官)と強調している。
しかし、10年4月には空軍のオスプレイがアフガンで墜落、4人が死亡した。今年に入ってからも、モロッコ(4月)や米フロリダ州(6月)で海兵隊や空軍のオスプレイが墜落し、死傷者が出ている。(共同通信)
http://www.47news.jp/47topics/e/232881.php
共同通信が配信した記事をみた。共産党・社民党・みんなの党が共同して提出する内閣不信任案を突きつけられる首相が「回避」するため?の行動に出そうだ。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-08-03/2012080301_02_1.html
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-08-03/2012080301_03_1.html
この共同提案で政治が動くかもしれない!まさに決められない政治が国民の力によって決められるようになるということだ!以下記事をみてみよう。
【首相、脱原発の代表と面会へ】抗議行動拡大で危機感 再稼働に理解要請/脱原発のうねりに焦り2012/08/02 12:03
脱原発を訴え、キャンドルを手に国会議事堂(中央奥)前で抗議行動する参加者=7月29日
野田佳彦首相は、脱原発を求めて毎週金曜夕に官邸前で抗議行動を呼び掛けている「首都圏反原発連合」を代表するメンバーと会う意向を固めた。来週の方向で調整する。これまで面会には消極的だったが、「脱原発デモ」の広がりに危機感を強め姿勢の転換を余儀なくされた。ただ関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の再稼働など原発政策の政府方針は変えず、理解を要請する考えだ。政府関係者が1日、明らかにした。
首相はメンバーから原発再稼働に反対する意見を聞いた上で、再稼働の経緯や安全確保策を説明する。再生可能エネルギー推進など脱原発依存に向けた政権の取り組みを強調し、今後の原発政策をめぐっても意見交換するとみられる。
首都圏反原発連合と、菅直人前首相ら脱原発を目指す国会議員は7月31日に衆院議員会館で対話集会を開催。メンバーから、全原発の再稼働に反対する方針を首相に直接申し入れできるよう協力を求める声が出ていた。
首相は7月12日の衆院予算委員会で、官邸前の抗議行動参加者との面会に関し「国民にさまざまな声があるのは承知している。ただ前例がないし、そういうやり方が望ましいかどうかは別だ」と述べ、否定的な考えを示していた。
官邸前での脱原発を求める抗議行動は3月に始まり、インターネットの短文投稿サイトのツイッターやフェイスブックなどを通じて参加者が増えた。大飯原発の再稼働問題が本格化した6月には週ごとに急増し、6月29日には主催者発表で約20万人(警視庁発表2万人弱)に上った。
7月29日は脱原発を訴えるため、キャンドルを手に国会議事堂を取り囲む抗議行動が行われ、 主催者発表で20万人(同1万数千人)が詰め掛けた。(共同通信)
◎脱原発のうねりに焦り 抗議説得は困難か
野田佳彦首相が脱原発の抗議行動を主催する首都圏反原発連合メンバーと面会する意向を固めた背景には、放置すれば大きなうねりとなって政権基盤を揺るがしかねないとの焦りがある。ただ、関西電力大飯原発(福井県)の再稼働を「決断する政治」の象徴とアピールしており、重い腰を上げて説得に乗り出すものの、理解を得られるのは難しそうだ。
当初、首相は「官邸周辺のデモはこのテーマ以外にもよくある」(7月12日の国会答弁)と高をくくっていた節がある。ただ、毎週金曜に恒例となり、インターネットを通じて参加者が拡大。政権と距離を置く与野党国会議員が加わるようになり、首相攻撃の材料と化した。
7月20日には鳩山由紀夫元首相が参加者に対してハンドマイクで「政治の流れを変える役割を果たす」と訴え、首相がデモ参加者と面会するよう求めた。
消費税増税をめぐり首相と対立し民主党を除名された小沢一郎代表も新党の政策で原発廃止方針を鮮明にし“離党予備軍”に秋波を送る。
首相サイドは増税や原発再稼働といった難題に向き合う姿勢を見せて世論の理解を獲得する戦略を描いている。だが、官邸前での抗議行動の盛り上がりや内閣支持率の低迷は思惑外れを映し出しているといえる。
こうした状況を踏まえ、消費税増税法案の成立を優先する野田政権は、原発政策で党内や世論への刺激を避けるためにも、8月中に予定していた新たなエネルギー・環境戦略の決定の先送りを検討している。(共同通信)
http://www.47news.jp/47topics/e/233007.php
共同が伝えた31日の衆議院議員会館の対話集会は事実を正確に報道していない。これは、以下の「朝日」の社説も同じだ。
市民と政治―分断か対話か瀬戸際だ2012年8月2日(木)付
官邸や国会の壁を隔てて対峙(たいじ)してきた政治と市民の間に、小さな窓が開いたように思う。
衆院議員会館で一昨日夕、開かれた対話の場のことだ。
原発再稼働をめぐり、首相官邸前の抗議行動や国会包囲を主催する市民グループと、菅直人前首相ら超党派の脱原発派国会議員、計20人余りが参加した。
労組などに組織されない市民と、政治の壁がいかに厚かったか。象徴的な場面があった。
市民側は、野田首相と直接話し合えるよう、議員らに助力を求めた。民主党の平岡秀夫元法相が「みなさんが何かの組織の代表なら会える」というと、批判が相次いだ。
「私たちは組織じゃない。そんな状況自体、間接民主主義が機能していない」
経団連や連合――つまり票も金も動かせる組織の代表なら、首相に会える。なのに組織されない抗議は何万に膨らんでも、直接伝えられないのか。
菅前首相は「話を聞くのはやぶさかではない」という野田首相の言葉を伝えた。早急に実現し、民主主義への絶望感を広げないようにすべきだ。
不信は深い。同じ脱原発派でも、一刻も早くと求める市民側と、一定の時間が要ると考える議員には溝がある。市民が議員を詰問する場面もあった。
それでも対話の糸口は見えた。議員と市民の双方から、大切な指摘が聞かれた。
まず、民主党の辻元清美氏。
「日本を生まれ変わらせるエネルギーが官邸前にある。一緒に変えていく方向に、政治が動き出せるかどうかだ。いままで『要求する側』と『される側』だったが、一緒に悩み苦しまないと、問題を解決できない」
原発がなくても困らない社会をどうつくるか。ともに悩む関係を築けるか否かが先行きをわける。不信と分断に陥るのを避け、信頼と対話につなげられるかの瀬戸際だ。
「エネルギーシフトパレード」呼びかけ人の鈴木幸一さんは取材にこう語った。「首相の指導力で突破せよという声もあるが、民主主義の基本はスーパーマンに頼らないこと。物事を変えるのは『民意』だ」
民意が熟し、実るかぎは「場づくり」だ。一例として、抗議行動の際、官邸前を車道まで開放すれば、市民と議員が対話しやすくなると提案する。
2人の思いに共感する。
敵だ味方だと壁をつくらず、対話しよう。
自民党などの原発推進派も臆せずに、抗議の市民と同じテーブルに着いてはどうか。
http://www.asahi.com/paper/editorial20120802.html#Edit1
だが、「赤旗」は別の視点から、この対話集会を報道した。以下みてみよう。
反原連と「原発ゼロの会」対話 首相は直接声を聞け笠井議員2012年8月1日(水)
(写真)「首都圏反原発連合と脱原発をめざす国会議員との対話のテーブル」。発言するのは笠井亮衆院員(左)=31日、衆院第1議員会館
原発再稼働に抗議する首相官邸前での抗議行動や「国会大包囲」などに取り組んできた首都圏反原発連合(反原連)と超党派の「原発ゼロの会」、民主党議員らの「脱原発ロードマップを考える会」との「対話のテーブル」が31日、国会内で開かれました。
反原連のミサオ・レッドウルフさんが、福島原発事故の収束も賠償もされていない中で大飯原発が再稼働されてしまったことに怒りを表明。大飯原発の稼働を直ちに中止し、すべての原発の再稼働はやめるべきだと野田佳彦首相に直接訴えたいと語りました。
「原発ゼロの会」世話人として参加した日本共産党の笠井亮衆院議員は、再稼働反対を求める人たちが誰でも参加できる非暴力の運動がすばらしい力を発揮しているとして、「(首相が)従来の発想を打ち破り、直接声を聞くのかが問われている」「新しい運動をどう受け止めるのかが政党、議員の役割だ」と表明。福島原発事故を受け、原発ゼロに向けて政治的決断をすることが求められていると強調しました。
組織の代表者として首相に面会を申し入れるべきだとの一部の民主党議員の発言に対して、反原連のメンバーは「絶望に近い悲しみ」と率直に語りました。新設される原子力規制委員会の人事案に「原子力ムラ」関係者が含まれていることに批判が相次ぎました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-08-01/2012080102_03_1.html
対話集会を企画したのは、
「赤旗」は、超党派の「原発ゼロの会」、民主党議員らの「脱原発ロードマップを考える会」との「対話のテーブル」
「共同」は、菅直人前首相ら脱原発を目指す国会議員
「朝日」は、菅直人前首相ら超党派の脱原発派国会議員
となっている。マスコミの意図的報道が判る。
ところで超党派の「原発ゼロの会」は、「超党派議員でつくる、原発ゼロの会、政策提言骨子 2012年6月27日版を公開」している。
http://ameblo.jp/greenpost-jp/entry-11289601408.html
何故、この会のことを取り上げず、「民主党」の議員のみを取り上げるのか、非常に意図的だ。
事実を正確に国民に伝えないマスコミの腐敗が、この「対話のテーブル」にも示されたと言える。
こうしたマスコミの報道姿勢が自民党の長期政権を許してきたし、国民のための政権を誕生させなかった最大の要因といわなければならない。
この事実を変革するための行動をどのように起こしていくか、検討が必要だろう。さもなければ、解散・総選挙になったとしても、国民のエネルギーが歪曲され、新自由クラブ・日本新党・小泉劇場型選挙・政権交代劇の二の舞になることは必至だろう。
マスゴミを護美の器に塵(ゴミ)入れて民の幸せ皆と呼び込まむ
増税と社会保障改悪を推進するために自民党化した野田政権が自公と手を組んで財界の意向を実現しようとした3党合意が、ここにきて国民の反撃を受け、混迷している。
「消費税増税は社会保障のため」といい続けてきた野田政権だったが、「日本再生戦略」・自民党の「強靭化法案」などに見るように、ウソが明らかになり、国民の批判が巻き起こってきたことが自民党に反映してきたのだ。
マスコミもこうした事実を正確に伝えることもせず、政局報道に終始している。国民の運動をしっかり報道しろ!と言いたい。
6月22日の衆議院の社会保障・税特別委員会のやりとりをみれば、自民党は恥ずかしくないのか!と言いたくなるような「直訴」事件と言える。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-06-23/2012062303_01_1.html
増税を民主党野田政権にやらせる自公旧政権勢力と自民党化して政権延命を図る民主党野田政権、どちらも財界の利益擁護、アメリカの代弁者として国民生活を破壊する点では一致しているのに一致できずに、対立を装って政権を奪取しようとする自公勢力の混迷は面白いといったら語弊があるが、別の角度から見れば、本当の意味で国民的政権をつくるチャンス到来だ。
民主もダメ、自公もダメ、ならば維新か?維新も民自公路線の延長線上にあるから、同じ穴のムジナ!ただマスコミがこの事実を隠し、応援団になっているので、もしかすると、維新が係わる政権ができるかもしれない。
こうした状況を突破するためには、民自公路線とは別の政権構想をどこが早く打ち出すか!ここに歴史の前進がかかっているだろう。
原発再稼動をしない政権、脱原発政権、放射能汚染に正面から取り組む政権
オスプレイに見るようにアメリカにノーと言える政権、中国の尖閣問題を正せる政権
憲法9条と25条を具体化する政権
日本の農業を守り、食糧安保を大事にする政権
勿論消費税に頼るのではなく、大儲けをしている人や会社に応分の負担を、先ず求める政権
社会保障を公共事業として位置づけ発展させる政権
こんな政権構想を打ち出し、この指とまれ!と国民に呼びかける!政権構想や政党間だけの一致ではなくても政治は動く!これは再稼動反対行動で証明された!
今日のところは、時間がないので、これにてオワリとする。
「3党合意を破棄せよ」小泉ジュニアら若手有志が総裁に直訴2012.8.1 19:26 [自民党]
記者会見する自民党の小泉進次郎青年局長=1日午後、東京・永田町の党本部
自民党の小泉進次郎青年局長ら若手議員有志7人は1日、党本部で谷垣禎一総裁と面会し、社会保障・税一体改革関連法案をめぐる民主、自民、公明3党の修正合意に対する政府・民主党の言動は不誠実だとして、合意を破棄し、法案を否決して衆院解散・総選挙に追い込むよう求める緊急声明を提出した。谷垣氏は「重く受け止める」と述べるにとどめた。
声明に名を連ねたのは11人。3党合意後も最低保障年金制度創設などマニフェスト(政権公約)破綻を認めていないことなどを批判し、合意の前提は崩れたと指摘。その上で「3党合意を速やかに破棄し解散・総選挙に向けて進むべきだ」とした。
小泉氏は面会後の記者会見で、内閣不信任決議案や首相問責決議案では解散に追い込むのは難しいとの見方を示し、「民主党政権が続けば国益が損なわれる。早くけじめをつけるのは法案の否決だ。自民党が本気にならないと解散には持ち込めない」と強調した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120801/elc12080119290000-n1.htm
自民:若手に谷垣氏板挟み 小泉氏ら3党合意破棄迫る毎日新聞 2012年08月01日 21時16分
自民党の小泉進次郎青年局長ら若手衆院議員7人は1日、谷垣禎一総裁と党本部で会い、参院で審議中の税と社会保障の一体改革関連法案について、民主、公明両党との3党合意を破棄し、法案を参院で否決すべきだとの「緊急声明」を提出した。野田政権を今国会中に衆院解散に追い込むための覚悟を党執行部に迫るものだが、谷垣氏は「重く受け止める」と述べるにとどめた。
小泉氏はその後、記者会見し、民主党内で法案採決を先延ばしする動きがあることについて「政府・与党には3党合意と異なる態度が目立ち、合意の基盤は崩れた」と指摘。その上で「内閣不信任案は(提出しても)民主党内から乗る保証はなく、空振りもある。自民党が本気になった姿を見せないと到底解散に持ち込めない」と強調した。
自民党の若手・中堅議員らの間には、早期解散への道筋を立てられない谷垣氏に対し、法案成立だけ先食いされる恐れがあることへの不満が強まっており、緊急声明には小泉氏ら11人が賛同した。【佐藤丈一】
http://mainichi.jp/select/news/20120802k0000m010075000c.html
「無敵艦隊勝利」を今度は日米で!日米合同委員会開催はチャンスだが、マスコミこそ対米従属の極致!(7月29日)を踏まえて
オスプレイ配備に伴う地方紙の論調をみてみると、日米同盟(日米安保)体制是認論を前提とした論調が際立っている。
日米軍事同盟がギクシャクすると、日米関係が悪化すると考えているのだ。だがそうだろうか。対等な関係を構築してこそ、真の平和と友好の関係が築けるのではないのか。マスコミに欠けている視点は、ここにある。
日米安保条約は軍事同盟であり、対等平等の軍事同盟ではないのだ。これは歴史が示している。東京の社説を見れば明瞭だ。だが、従属軍事同盟とは言わないのだ。しかも、日米関係はあたかも対等であるかのように錯覚しているのだ。いやゴマカシているのだ。日米対等神話とでも言っておこう。
「米国に追従する政治は、もう終わりにしなければなりません」(東京)というのであれば、日米安保条約は第10条に基づいて廃棄を通告しなければならない。悪性のガン細胞を早期に発見して取り除く手術をしなければ、転移し、最終的には死に至らしめることを忘れてはならない。
同時に対等平等の日米平和友好条約を締結しなければない。日本は文字どおり、どこの国とも平和的友好的関係を宣言するのだ。その基本は日本国憲法と非核三原則の立法化だ。あの戦争の惨禍を反省した平和宣言を行うのだ。
この条約・宣言案については、別途掲示してみたい。基本は明治の農民たちが実践した私擬憲法づくりを参考にしたものだ。
国体を地方(ぢかた)で固むる時来たり民権掲ぐる農民まねて
それでは、以下各紙の論調を掲示しておこう。
北海道新聞 オスプレイ 米国に「ノー」と伝えよ 7月18日
気になるのは日米関係への影響である。地元の反発を置き去りにして配備を強行すれば、普天間飛行場移設問題でぎくしゃくしている日米関係がさらにこじれかねない。
民主党の前原誠司政調会長は配備計画を再検討すべきだとの考えを表明した。自民党も配備見直しを政府に申し入れた。ともに日米関係の悪化を恐れての動きだ。
配備計画は米国のものでも、国民の懸念を伝えることはできるはずだ。首相が先頭となり、米政府に日本の立場を強く主張してほしい。
北海道新聞オスプレイ 米国は配備計画撤回を 7月25日
米政府は配備の前に事故原因の調査結果を日本側に示す方針だ。しかし米方針を追認してきた日本政府が異を唱えられるのか疑問だ。米国任せの「安全確認」は認められない。両政府はあす日米合同委員会を開く。日米関係がこれ以上ぎくしゃくしないよう日本の民意に基づいた安全保障政策を構築してもらいたい
東奥日報 国民守る覚悟足りぬ首相/オスプレイ搬入 7月23日
オスプレイは老朽化した輸送ヘリの更新機材で、米側はアジア周辺海域での中国の軍事的台頭を念頭に沖縄配備を急ぐようだ。安保面では日本の利益につながることでもある。
しかし、国民置き去りで配備を強行し万が一事故が起きれば日米同盟に深刻な打撃を与えかねない。政府の対応には、日米関係を重視する前原誠司民主党政調会長ら与党内からも批判が上がり、配備計画再検討を求める声が出ている。岩国搬入後でも遅くはない。両国政府に再考を求めたい。
秋田さきかげ社説 オスプレイ配備 反米感情高めるだけだ 7月10日
県外移転どころか普天間固定化への懸念すら強まる中、オスプレイ配備に対して沖縄県の仲井真弘多知事が「事故が起きたら誰が責任を取るのか」と計画撤回を強く求めたことを日米両政府は厳しく受け止めなければならない。…森本敏防衛相は今月下旬にも米国を訪問し、国防長官と会談する。オスプレイ配備が強行されれば日米関係にも大きな亀裂が入りかねないだけに、計画見直しを軸に毅然(きぜん)とした態度で協議に臨んでもらいたい。
河北新報 オスプレイ上陸/「飛行ありき」は認められぬ 7月25日
軍事技術や軍事情報に関する判断には、高度な専門性が要求される。機密性も高く、軍事や安保に関する議論は「プロの仕事」とされがちだ。 だからといって、軍事や安全保障の議論から民意を排除していいということにはならない。むしろ、判断が専門的ならば、それを国民に分かりやすい形で説明することが大切だ。 米軍のアジア戦略、老朽ヘリ代替の必要性、住宅地が近い普天間配備と責任の所在、全国での超低空訓練-。政治が説明すべきことは山積している。 文民統制の基本原則は政治と軍事の分離であり、さらに軍事に対する政治の優位を確保することと定義される。「日米のプロの判断だから」と、政治が判断停止することは許されない。 オスプレイはなぜ必要か-。根源的な説明さえなされないまま、危険な輸送機が日本上空を飛行することは認められない。
岩手日報 オスプレイ配備計画 国民の安全はどうする 7月22日
オスプレイ問題で沖縄タイムスが6月から7月にかけて行った全国知事アンケートでは、回答した41知事のうち普天間配備に明確に反対したのは6知事にとどまる一方、賛成はゼロ。本県知事を含め、政府の説明不足などを理由に批判的な見解が目立つ。
原発事故は、国策が、ある時は国民の日常を奪い去ることを知らしめた。過ちを繰り返すわけにはいかない。安全性の見極めすら米側の言いなりという日米同盟の現状を改め、政府が、その責任で調査し証明できない限り、オスプレイの国内配備と訓練実施を認めるべきではない。
千葉日報 国は毅然とした態度で対応を オスプレイ配備問題2012年07月09日 13:31
国民の生命、財産を守ることが国の果たすべき第一の使命。政府は肝に銘じ、ごり押しともいえる配備に、毅然(きぜん)とした態度で米国と対峙(たいじ)しなくてはならない。
京都新聞 オスプレイ搬入 安保のあり方考えたい 7月25日
オスプレイの沖縄配備を強行すれば対米感情の悪化は避けられまい。もし事故が起きれば、日米安保体制の土台さえ揺るがしかねない。それでは元も子もなかろう。沖縄配備を見合わせるほうが長い目で見て日米双方にメリットがあるはずだ。米国にも、軍の都合ではなく、日米関係の大局に立った判断を求めたい。
神戸新聞 オスプレイ/安全の見極めを徹底せよ 7月25日
オスプレイの沖縄配備計画は、普天間飛行場移設方針を打ち出した1996年の日米特別行動委員会の草案に明記された。ところが、沖縄の反発を予想して最終段階で削除された経緯がある。 住民の命に関わる問題で、「米国追随」が前面に立つようなら政治不信は極まる。全国知事会も受け入れ反対の緊急決議を採択しており、政府はこうした国内の動向を軽く見てはならない。 オスプレイの安全管理を協議する日米合同委員会が、あす東京で開かれる。米側が安全性を実証的に示さない限り、配備は困難であるとの強い姿勢で、政府は交渉に臨まねばならない。
中国新聞 オスプレイ岩国へ 強まる憤り受け止めよ 7月21日
日本国内の不安の声に耳を傾けないようでは到底、「対等の同盟国」とはいえまい。
さすがに対米関係を重んじる立場からも異論が出ている。とりわけ日米安保に精通する民主党の前原誠司政調会長は首相を公然と批判し、米側との再交渉を求めた。「米国に物を言えないなら日米同盟はおかしくなる」との指摘はもっともだ。
日米政府は重く受け止め、配備計画を根本から見直してもらいたい。オスプレイは従来の輸送ヘリより速度も航続距離も格段にアップする。ならば自国領のグアムに置いたとしても、役割は果たせるのではないか。
岩国にはあさって、全国の目が注がれる。市も県も安易な妥協は許されまい。「ノー」を言い続ける覚悟が求められる。
徳島新聞 オスプレイ 強行配備は許されない 7月25日
事故への懸念があるものの海兵隊にとってオスプレイは欠かせない存在だ。現役のCH46中型ヘリコプターと比べると搭載量、最高時速、航続距離で大きく上回る。安全保障上のメリットに加え、大量・高速輸送により大震災や豪雨災害などの緊急時の対応にも役立つだろう。 しかし、安全性はもとより、必要性や利点について政府は住民に丁寧に説明してこなかった。説明責任を果たさない、不誠実な対応が不信感につながっていることをあらためて認識すべきである。 ここにきて、沖縄配備後の離着陸に当たっては可能な限り海上ルートを飛ぶよう米側に要請。安全確保策をめぐり日米間の新たな協議機関の設置も検討するとした。ただ、低空飛行訓練のルート見直しは困難との認識で、「日本全体が演習場になるのでは」との不安は消えない。 民意を無視した進め方は、今後の日米同盟に大きな影響を及ぼす。国民の理解を得るためにどうすべきか。両政府がじっくりと話し合い、ともに努力することが必要だ。
西日本新聞 オスプレイ 地方の反対に耳を傾けよ 7月24日
日本政府は、配備や訓練が実施される地方の声に耳を傾け、その不安を受け止めて、米国に配備計画の再検討を求めるべきだ。もし現行の日米安保の運用上、日本側から反対できないというのなら、運用のルールを改めるのが筋だろう。
民意を無視した配備強行は、日米安保への国民の信頼を低下させ、結果的に両国関係を損なう。日米関係を大事に思うのなら、政府は国民の側に立つべきだ。
熊本日日 オスプレイ陸揚げ 安全性検証を儀式とするな 7月24日
野田政権は「日米安全保障条約に基づく事前協議の対象ではなく、見直しを求める権限はない」との立場だが、国民の不信感を置き去りにしたまま配備を強行すれば、今後の日米同盟に深刻な影響を与えることになりかねない。仮に、配備した後で事故が起きれば、ダメージは決定的となろう。両国政府はオスプレイの扱いを慎重に運ぶべきだ。
佐賀新聞 オスプレイ陸揚げ 国民の不安を軽視するな 7月25日
前原誠司政調会長も「見通しが甘い」と述べるなど、民主党内からも批判が飛び出している。これでは日米は対等の関係とは呼べないのではないか。 事故が起きてからでは遅い。米側の言い分をうのみにしていいわけはないし、日本の国民の声を反映させる努力を続けるべきだ。 野田首相は「決められない政治からの脱却」を掲げているが、原発の再稼働にしても国民不在のままで決断に踏み込んだ印象だ。鳩山政権の普天間基地移設といい、今回のオスプレイ配備といい、国民への背信行為ではないか。もの言えぬ日本から脱却し、国民の不安にきちんと向き合うよう求めたい。
宮崎日日 オスプレイ搬入 07月21日
「オスプレイ配備は『装備の変更』。日米安全保障条約に基づく事前協議の対象ではなく、見直しを求める権限はない」というのが野田政権の立場。だが条約や法令は最低限のルールを定めたものにすぎないのだ。 抵触しなければ何でもできるわけではなく、事案によってより丁寧な対応をするのは当然のこと。現に与党内からも、計画の再検討を求める厳しい声が出ている。 オスプレイ配備は、安全保障面では日本の利益につながるかもしれない。しかし国民を置き去りにした配備の強行は、長期的な日米同盟に深刻なダメージを与えかねないし、配備後に事故が起きればそれは決定的になることを両国政府は肝に銘じるべきだ。
南日本新聞 [オスプレイ搬入] 国民無視の強行許すな( 7/24 付 )
反対の声は両県だけでなく、全国に広がっている。沖縄から奄美・トカラに至るルートをはじめ、九州、四国、本州各地で低空飛行訓練が計画されているからだ。全国知事会議は先週、配備や訓練に反対する緊急決議を採択した。
こうした反対を無視して、搬入が強行されたことは許し難い。米政府と、米側に「もの言えぬ」日本政府に強く抗議したい。… 米政府が沖縄配備を急ぐのは、アジア周辺海域で軍備を強化する中国に対処する狙いがある。日本の安全保障の利益にもなると、政府は考えているのだろう。
しかし、日本国民の不信を置き去りにした配備強行は、長期的な日米同盟に不利益となりかねない。もし配備後に事故が起きれば、決定的なダメージになることを日米政府は肝に銘じるべきだ。
【東京社説】週のはじめに考える 米との事前協議見直せ2012年7月29日
米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが「配備反対」の大合唱の中、日本に上陸しました。米国との事前協議は何のためにあるのでしょうか。
十二機のオスプレイは輸送船に載せられ、山口県の岩国基地に運ばれました。今年四月と六月に起きた墜落事故の分析が終わり、安全性が確認されたのちに飛行開始の運びとされています。米政府は沖縄県の普天間飛行場で十月から本格運用を始める考えを変えておらず、はじめから配備ありきの姿勢です。
◆「出撃」を「移動」扱い
野田佳彦首相は「米政府が決めることで、どうこういえる話じゃない」とまるで人ごと。米国の政策が最優先で、国民の安全は二の次といわんばかりです。
日米安保条約第六条は米軍による基地利用を認めていますが、一方的な行動をとらないよう安保改定時の一九六〇年、交換公文で「部隊配置の重要な変更」「装備の重要な変更」「戦闘作戦行動のための基地使用」の三項目について事前協議を義務づけています。
在日米軍の行動をみると「戦闘作戦行動のための基地使用」があったように思えてなりません。例えばベトナム戦争で、東京にある横田基地が大型輸送機の拠点となり、戦車や兵士を空輸していたのは公然の秘密です。新しいところでは、二〇〇四年十月、沖縄から第三一海兵遠征隊がイラク戦争に派遣されました。
それでも事前協議は、一度も行われていないのです。米軍は戦闘作戦行動をとったのではなく、日本から移動したにすぎないというのが日本政府の見解です。
第三一海兵遠征隊は五カ月後、五十人が戦死、二百二十一人が負傷して沖縄に戻りました。どうみても戦闘作戦行動であり、出撃先ははるか離れた中東です。日本や極東の平和と安全のための基地利用という安保条約を踏み越えていないでしょうか。
◆危険なオスプレイ配備
さて、オスプレイです。これも事前協議には該当しないというのが政府見解です。事前協議が必要なのは「核弾頭および中・長距離ミサイルの持ち込みとそれらの基地の建設」のみというのです。
非核三原則を堅持するわが国において、核兵器や核の運搬手段であるミサイルの持ち込みは拒否しかありません。そこで核搭載艦の寄港・通過は事前協議の対象外とする「核密約」が結ばれました。「装備の重要な変更」をめぐる事前協議は空文化したのです。
神奈川県の横須賀基地を事実上の母港とする通常型空母「キティホーク」が原子力空母「ジョージ・ワシントン」に交代した際も、事前協議は行われませんでした。通常型空母が三日に一回の割合で燃料補給が必要なのに対し、原子力空母は二十年に一回の燃料棒交換で済みます。
燃料補給がいらず、しかも燃料タンクが消えたスペースに弾薬や武器を搭載できるため戦闘力が大幅に向上した原子力空母の配備も、政府見解では「装備の重要な変更」には当たらないのです。
オスプレイは交代するCH46ヘリコプターと比べ、速度で二倍、搭載量で三倍、航続距離で四倍という性能アップと引き換えに、安全性を犠牲にした特殊な航空機とされています。米国は四百五十八機調達する予定で、既に海兵隊には百四十機が配備されています。
近くに住宅地があるカリフォルニア州のミラマー基地にも四十二機が置かれました。離着陸には住宅地を避けて飛行していますが、普天間飛行場ではそうはいきません。基地を囲むようにして九万人もの宜野湾市民が生活しており、どの方向に飛ぼうとも住宅地を避けることはできないからです。
米政府からすれば、日本政府には沖縄特別行動委員会(SACO)があった一九九六年に沖縄配備を伝えたのに、いまさら何の騒ぎか、との思いでしょう。国民への説明を先送りしてきた自民党政権と民主党政権の責任は極めて重大です。だからといって、わたしたちが政治の怠慢のツケを払わされたのではたまったものではありません。
政府は事前協議の「例示」にないことを理由に、米国にオスプレイ配備の見直しや延期を求めないつもりでしょうか。沖縄や低空飛行訓練ルートを抱える自治体に文字通り、命懸けの我慢を強いるつもりでしょうか。
◆対米追従はやめろ
配備を強行して、事故が起きた場合、日米安保体制そのものが揺らぐおそれがあります。真の友人なら罵倒されても、言うべきことは言う。事前協議とは本来、そういう性質のものだし、そうでないなら見直す必要があります。米国に追従する政治は、もう終わりにしなければなりません。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012072902000104.html