たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『遠野物語』より‐69オシラサマ

2023年08月21日 23時04分26秒 | 本あれこれ

「今の土淵村には大同(だいどう)という家二軒あり。山口の大同は投手を大洞万之丞(おおほらまんのじょう)という。この人の義母名はお秀、八十を超えて今も達者なり。佐々木氏の祖母の姉なり。魔法に長じたり。まじないにて蛇を殺しないにて蛇を殺し、木に止れる鳥を落しなどするを佐々木君はよく見せてもらいたり。昨年の旧暦正月十五日に、この老女の語りしには、昔あるところに貧しき百姓あり。妻はなくて美しき娘あり。また一匹の馬を養う。娘この馬を愛して夜になれば厩舎(うまや)に行きて寝(い)ね、ついに馬と夫婦になれり。或るy夜父はこの事を知りて、その次の日に娘には知らせず、馬を連れ出して桑野様木につり下げて殺したり。その夜娘は馬のおらぬより父に尋ねてこの事を知り、驚き悲しみ手桑の木の下に行き、死したる馬の首に縋(すが)りて泣きいたりしを、父はこれを悪(にく)みて斧をもって後より馬の首を切り落とせしに、たちまち娘はその首に乗りたるまま天に昇り去れり。オシラサマというはこの時より成りたる神なり。馬をつり下げたる桑の枝にてその神の像を作る。その像三つありき。本(もと)にて作りしは山口の大同にあり。これを姉神とす。中にて作りしは山崎の在家権十郎(ざいけごんじゅうろう)という人の家にあり。佐々木氏の伯母が縁づきたる家なるが、今は家絶えて神の行方を知らず。末にて作りし姉神の像は今附馬牛村にありといえり。」

(45-46頁)

 

 


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