たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

月組『桜嵐記』『Dream Chaser』-東京宝塚劇場公演

2021年07月11日 22時23分40秒 | 宝塚
月組『桜嵐記』『DreamChaser』宝塚大劇場千穐楽-ライブ配信
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/75cca3d036f82031b8b906e2f43b16c1

月組『桜嵐記』『Dream Chaser』-ナウオンステージより
https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/afea52ae83fe01679d3066e6204de80c




 クスノキ音頭の「よっこれ、よっこれ、どっこいせ~♪」(であっているかな?)とタンゴのメロディーがずっと回っています。昨日初日を迎えて、わたしはこれ一回きりですが、生演奏、組子全員そろっての退団公演を見届けました。2階席てっぺん3,500円。リハビリと中敷きのおかげで無事に階段をのぼりおりすることができました。全体がよくみえて芝居もショーも群舞のフォーメンションがすごく美しいと思いました。



『桜嵐記』

 的確に表現できる言葉を持ち合わせていないのが残念ですが、四条畷の合戦の場面で、北朝軍と南朝軍が舞台に斜めの線でまっすぐに並んで対峙するフォーメンションが美しいと思いました。ウエクミ先生のこだわりでしょうか。振付は若央りさん。物語の間ずっと舞台には桜の花びらが舞い落ちているのも、盆周りとせりを存分に使って息継ぎ場面が一切なく、楠三兄弟が勇壮に登場するエピローグが終わると、プロローグの出陣式で楠三兄弟が美しく儚く凛々しく登場するまで拍手のタイミングが全くないのもウエクミ先生らしいと思いました。

 なんどか登場した台詞「貰った時と命をなにに使うか」、楠正行(まさつら)@珠城りょうさんが出した答えは目先のことにはとらわれない「日の本の大きな流れのために使う」でした。

 第11場 勝ち目のない南朝から北朝に寝返って生き延びろと誘う足利尊氏@風間柚乃くんに対する楠正行は「家名でも忠義でもなく、もっと大きなもののために命を使うのだと決心し、苦しむ民を見捨てるわけにはいかないと尊氏の誘いを撥ねつける。正行は弟たちに好きな道を選べばよいと言うが、正時も正儀も最後まで兄と共に戦うことをのぞむのだった。」

 父、楠木正成は本当は南朝に殺されたのではないか、楠木家はなんのために戦っているのかと疑問を呈していた楠木正儀(まさのり)@月城かなとさんも、妻、百合@海乃美月ちゃんの父親、大田祐則@春海ゆうさんが北朝に寝返ったことで、百合から泣きつかれて揺れた楠木正時@鳳月杏さんも、大将である兄についていくことを決意するのに、これほど説得力のある言葉はないでしょう。正時は百合の命を救うため涙をのんで離縁を言い渡します。その百合が自害したと四条畷の合戦で刃を交わした大田祐則から聞かされた正時は「百合ー!」と叫びながら義理の父親である大田祐則と義理の弟を討ち果たすと、自身もまた討たれます。百合が待つ三途の川へお先にと正時が命果てると、正行は正時の刀を手に取り二刀流で戦うところも、ナウオンステージで話が出ているので確認しました。正時と百合の夫婦愛も美しい。

 満身創痍となった正行は、最期の時を弁内侍@美園さくらちゃんを思いながら命果てていきます。この時舞台の左手花道に登場した父、楠木正成@輝月ゆうまさんが、「よっこれ、よっこれ、どっこいせ~♪」とクスノキ音頭をうたっているところがまた、なんとも言えない哀しみが宿る美しさよ。京の都へ返り咲きたい後醍醐天皇@一樹千尋さんのために戦い続けた正成と同じ道を歩んだ正行の、儚くも燃え立つような短い一生にふさわしいエンディング。

 第14場 「民が作った米を食べて生きる自分たちは、貰った時と力を何のために使うのかー。戦いに疲労困憊する兄弟たちの脳裏に、幼い頃の父との思い出がよぎる。
正時が倒れ、正行も息絶えようとする時、かつて助けた北朝の雑兵たちが加勢に現れた。正行は、正儀にその援軍を与え、いずれ和睦の工作をして口を一つにすることを託す。兄の最期を見届けたいと願う正儀だったが、正行は、一人の女に残りの命を与えたいと願う。」

 クスノキ音頭が歌われたのは第5場、北朝軍との戦いに勝った正行が北朝の雑兵を助けた夜でした、「北朝の兵を助けるなどあり得ないと弁内侍は異議を唱えるが、貧しさゆえに小銭で雇われた雑兵に何の罪があるのかと正行に問われて口をつむぐ。公家、武士、百姓、敵の捕虜たち・・・みんなで一つの焚火を囲んで温かな食事をするうちに、復讐のみを生きる支えとしてきた弁内侍の心もほぐれてゆく。」歌っているのは、たまきちさくらちゃんと退団同期の颯希有翔(はやきゆうと)さんと大劇場千穐楽で紹介されました。「東京公演もがんばります」と。

 たまたま弁内侍が乗る輿を運んだに過ぎなかったジンベエ@千海華蘭さんが、正行の人柄にほれ込んで40年後も弁内侍に仕え続けていたというのも素敵でした。現在をストップモーションして回想場面を同時に舞台でみせるというのもウエクミ先生らしい演出と思いました。

「この混沌の世界、日本、ある落日の時代に、己も人々も、強く激しく生きることができますよう。」(公演プログラムの上田久美子先生のメッセージより)

 ここに書くことではないかもしれませんが、「貰った時と命を日の本の流れのために使う」という正行の言葉を、今この日本で、目先のことしかない、やっている感を出したいために飲食店しめあげて銀行から脅しをかけさせようとする大臣とか責任のなすりあいしている大臣とか、作文棒読みだけで言葉になにもこもっていないエライ人とかにきいてほしいと心から思ったのでした。権力を手にしてしまうと大会社のエライ人たちも権力にしがみつくばかりでしたが、わたしたちの行く末を左右する国のエライ人たちがそれではダメでしょうが・・・。



『Dream Chaser』,

 デュエットダンスの場面が、楠木正行と弁内侍が心の中で会話を交わしながら静かにおどっているように見えました。正行亡きあとも生き続けた晩年の弁内侍が、束の間、正行と再会した夢をみているような。

 ミロンガ(タンゴの舞踏会)と和太鼓の音が使われていたようにきこえたDawn(暁)の場面が特にかっこよかったり、「Hymn of life」(生命の讃歌)の歌がとっても素敵だったりなどは、長くなってきたので、また後日書ければと思います。







終演後は晴れて蒸し暑かったのに、シャンテでちゃんぽん食べたり、写真を撮ったりしたあと外に出ようとするとどしゃ降りと雷でびっくり。東日本大震災のあとこんな天候が多くなりました。
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