
「1992年5月13日(水) 晴れ
ヒースロー空港からUnder ground(地下鉄)でVictoria stationへ行くつもりが、乗り換え駅のGreen parkで降りてしまったからさあ大変。重い荷物を抱えたまま宮殿あたりをうろつき、どうやらピカデリーサーカスあたりを迷っていたようなのだが、今St.James Parkにいる。時差ボケはあまりない。
飛行機の中でちょくちょく眠っていたので、ロンドンの時刻で11時ぐらいまで起きていて、今朝は6時ぐらいには目ざめてしまった。2度ほどトイレに立ったが熟睡できたので、まあまあ疲れがとれたと思う。
つたない英語で今のところなんとかなっている。
地下鉄の中で、道で、Cafeで、紳士だなと思う。
宮殿で衛兵の行進と交代なのかなあ、よくわかんないけれど儀式をみて伝統を感じて、今はぼうっとしている。
昼下がりの公園、風は心なしか涼しい。チェアにねそべってのんびりしている人々が多い。
ゆとりを感じる。
日光浴や読書を楽しんでいるこの人々はどんな職業なのかなあ。
不思議だ、遠い異国に来ているのに、今のところあまり違和感がなくてぼんやりしている。
さていちばんの問題は今夜泊まるところである。そろそろさがさなくちゃと思いながら、もうしばらくぼんやりしていたい。
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ロンドンに着いて2日目。
そうそう要領よくいくはずがないよね。
バッキンガム宮殿の前を通り過ぎてやっとVictoria stationへ行く。インフォメーションでホテルを紹介してもらったのだが、ウロウロ迷っているわたしにとっとと行きなさいという感じで実際最寄り駅に行ってみるのだがどうも気に入らない。どういっていいのかもわからず、ずいぶんと迷った。TELの使い方もわからない。どうしよう、時刻はどんどんおそくなっていく。
『地球の歩き方』を信じて、South Kensingtonに来てみる。いきなり行ってみようとするが当然のことながら道がわからない。きけそうな人もいない。どうしよう、TELもやっぱりかけられない。今にも泣き出しそうな顔をしていると、小柄な東洋人らしきおじさまが助けてくれた。ホテルにTELを入れ、場所まで連れて行ってくれた。
そう今このノートを開いているところだ。15ポンド、最低に近い部屋だけど安心していられそうなのがいい。一応清潔だし、もう一泊しようかなー。
重い荷物を抱え、英語はカタコト、道がわからない。疲れた一日だった。ホテルをさがすことすら大変だ。でもこうして無事にいる。
食事もままならず、おなかがすいて下手にお金を使ったりするだけだったけれど、迷うこともまた楽しだ。日本でだと当然のようにできているということが精一杯のことになる。
旅をしているのだ、異国の地に。
ひとりぼっちでUKの空気の中にいるのだ。」

