映画館で観れなかった作品をＤＶＤで観るシリーズ。今回は実際の事件を基に作られた作品「フルートベール駅で」です。
この作品は、22歳の青年が警察官により不当に殺害される事件を題材にした作品です。映画の巻頭で実際の現場が携帯やビデオにより撮影された映像が流れ、物語はスタートします。
麻薬売買で服役した青年が、出所後に妻と幼い子供のために足を洗い新しい人生を歩もうとした大晦日から新年までの幸せな一夜の中で、ある諍いをきっかけに起こった警官の発砲事件により命を失ったフルートベール事件の一部始終を描いています。
常々、社会事件を取り上げた実話に基ずく作品は、中立的な立場で描き観る人の判断に委ねてこそ本当の意味での社会正義となると思っています。その意味でこの作品はたいへんすぐれていると感じました。
人種差別による死として全米で抗議集会が起きるなどセンセーショナルな部分にスポットを当てるのではなく、未熟な若者が犯した罪や家族に対する愛情、社会とのかかわりなどをつぶさに描き、更に、一人の人間の非業の死が、いかにして起こったのかを詳細にしめしたことで、法権力を行使するときに必要な冷静な判断がいかに大切かを知ることができます。
こうした手法により、家族の深い悲しみと命の重さをが伝わり、観る者の心を揺り動かす作品となっています。
