医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

司馬江漢の美挙6

2007年04月11日 08時39分26秒 | Weblog
 僕は江漢の、静岡県立美術館所有「駿州薩陀山富士遠望図」を初めて知って以来、気になって気になって仕方がありません。

http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/_archive/collection/item/J_93_497_J.html

 この絵での、波の複雑な色合いや、船の帆にわずかに透ける遠景など・・・

 油彩の特性を生かした、抜群の透明感だと思いませんか。

 しかも、絵の具も無い時代です。

 確かにモノマネかもは知れませんが、西洋画の技術にしっかりとした日本画の基礎があるので、新しい独自の微妙なバランスの画力となっているのです。


 しかもこの「駿州薩陀山富士遠望図」には、「Eerste Zonders in Japan Si:」とオランダ語の朱文サインがあって。

 このサインの意味は、「日本最初のユニークな人物」と解されているそうです・・・

 つまり自らをそう称す江漢とは、目立ちたがり屋で自慢しいでありながらシャレを好む、かような人物なのですね。

 ちなみに浮世絵師、鈴木春重と司馬江漢は同一人物です。

 それまでの日本画といえば、狩野派に代表されるように、非常に平面的で、屏風、ふすまに描かれるもので、または中国風の水墨画を掛け軸に・・・

 これはこれで本当は奥が深いのでしょうけれども、僕にはあまり魅力的には映らないことを「伊藤若冲」のコーナーで述べました。

 明治開国時のお雇い外国人教師で、アメリカから哲学を教えに来たフェノロサは、

『次のような点を日本画の特徴として挙げ、優れたところと評価している。

写真のような写実を追わない。

陰影が無い。

鉤勒(こうろく、輪郭線)がある。

色調が濃厚でない。

表現が簡潔である。』(ウィキペディアより)としました。

 これが本当に優れた点なのかどうか・・・難しいところだと思います。

 西洋文化に毒されたためか、僕はどうしても純粋な日本画は不気味で暗いために好きになれませんが、この司馬江漢のものは、色調も美しく、印象派のような独特の柔らかさと透明感があり、好感が持てます。