【社説①】:温暖化報告書 対策の遅れ許されない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:温暖化報告書 対策の遅れ許されない
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、温暖化の影響で広範囲な被害が発生している、との報告書を公表した。
途上国を中心に世界の33億~36億人が水害や高温などの被害を受けやすい状況にあるという。
自然災害だけでなく、食料や水の確保など人類の生存条件、さらに多様な生態系が回復不能な状況に陥ることも懸念される。
過去の報告書より危機感は強まっている。今後10年間の対応が決定的に重要になるとも指摘した。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で国際社会の分断は深まった。世界の英知を結集するべき温暖化対策に暗雲が垂れこめる。人類共通の危機克服に向けて協調を取り戻すことが急がれる。
報告書は気候変動の影響を広く検討するIPCC第2作業部会がまとめた。自然環境や生活に与える影響、その被害の軽減などがテーマとなった。
昨年8月に公表された第1作業部会報告書は、人間の活動が温暖化の原因なのは「疑う余地がない」と断定した。産業革命前からの気温上昇幅が2040年までに1・5度に達すると予測する。
今回は、上昇幅が1・5度超になった場合、多くの人々が洪水や海面上昇、干ばつ、飢餓などのリスクに直面すると警告を発した。
見過ごせないのは気候変動が食料生産に与える影響だ。このまま温暖化が進めば農業や水産業への影響は避けられず、世界的な食料危機を招きかねない。
将来のリスクを軽減するため、品種改良や資源保護などの対策が欠かせない。水害対策などのインフラ整備、経済基盤の弱い途上国への資金援助や医療支援を進めることも極めて重要になる。
気温上昇を1・5度未満に抑えるパリ協定の目標達成へ、各国が温室効果ガス削減に努めるべきなのは言うまでもない。生態系保全の重要性も忘れてはならない。
ロシアの軍事侵攻は国際的なエネルギー危機を招いた。化石燃料の価格が高騰し、採掘時に環境負荷の大きいシェールガスの増産や原発回帰の流れが生じている。
だが化石燃料の使用は温室効果ガスの排出を増やし、脱炭素の流れに逆行する。原発攻撃というロシアの蛮行も原子力利用がはらむ危険性を明白に示した。
人類が取るべき道は再生可能エネルギーの推進以外にない。
戦争のない世界の実現こそが、温暖化という地球規模の課題を解決する大前提となる。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年03月15日 05:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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