【天風録】:東芝混迷「同じ香りがする」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:東芝混迷「同じ香りがする」
〈さつきまつ花たちばなの香をかげば昔の人の袖の香ぞする〉。昔愛した人の、袖の香りをふと思い出すのは誰だろう。古今和歌集から「よみ人しらず」の夏歌一つ引いてみる▲「同じ香りがする」と、おとといの東芝の株主総会で声が上がった。こちらはマスクの上から鼻を覆いたくなる。一部の株主に圧力をかけたという今回の問題は、6年前の不正会計と同じ香りがすると指弾したのである。「光る光る東芝」と誇った巨大企業の迷走が信じられない▲株主総会では永山治取締役会議長に「不信任」が突きつけられた。東芝には大誤算だろう。「物言う株主」以外の人たちも敵に回してしまったようだ▲この問題では経産省が東芝を特別扱いして画策したことも波紋を呼んだ。英米の新聞は「日本株式会社」と、古めかしい言葉まで持ち出して厳しく論評する。片や経産省は「経済安全保障」を盾に、何ら問題はないと説明も拒んでいるが、いいのか▲折しもキャリア官僚がコロナ対策を巡る給付金詐欺の疑いで逮捕された。こちらは捜査に全面協力し、厳正に処するという。東芝とは違う話かもしれないが、国家公務員のモラルという話なら同じ香りがしないか。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2021年06月27日 06:44:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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