【社説①】:警察と個人情報 野放図な収集は危うい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:警察と個人情報 野放図な収集は危うい
岐阜県警大垣署の署員が、収集した市民の個人情報を外部に提供したことに対し、岐阜地裁は「提供は違法」と判断した。情報収集自体については「違法とまではいえない」とし、合法とは断じなかった。「捜査のため」を大義名分とした個人情報収集には慎重であるべきだとのメッセージが込められたともいえる。
裁判の原告は、岐阜県西濃地域に建設が計画された風力発電施設に関し、勉強会を開くなどしていた反対派の住民四人。
判決などによると、四人は経歴や病歴、市民運動の参加歴などを署員に集められ、同施設の事業者の中部電力子会社に提供されたのは違法だとして、国と県に損害賠償を求めた。署員は四人について「頭もいいし、喋(しゃべ)りも上手」「やっかい」とも発言していた。
争点は大きく二つだった。
まずは個人情報の提供。違法だとする原告側に対し、県などは「住民が自ら発信した情報で秘匿性が高くない」と反論したが、判決は「プライバシー情報を積極的、意図的に提供した」と断じた。
二つ目は、情報の収集。原告側は「法的根拠がない」と訴え、県などは「警察法に基づいている」と主張。判決は「県警の情報収集の必要性はそれほど高くはなかったが、収集の手段は任意で、違法とまではいえない」と退けた。
警察の情報収集を巡っては、警視庁の国際テロ捜査文書がインターネット上に流出、個人情報が公になったイスラム教徒らが東京都などに損害賠償を請求した。東京地裁は流出の過失を認めた半面、収集の違法性は退け、最高裁で確定した。今回の岐阜地裁判決はこの流れを受けたともいえる。
一方で「秘密裏の捜査」への司法の批判もある。裁判所の令状なしに捜査対象車両に衛星利用測位システム(GPS)発信機を取り付ける捜査手法に対しては、最高裁が違法判断を下し、確定した。
私たちは、自分たちの個人情報を警察権力がどれだけ収集し、どんな形で第三者に提供されているかをほとんど知らない。テロ関連の情報などは別としても、「捜査のため」の名の下に野放図な個人情報収集が許されれば、市民の「監視」につながりかねない。
各県公安委員会などは、捜査当局による個人情報収集がブラックボックス化せぬよう、何らかの手だてを講じるべきではないか。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年02月22日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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