【社説②・03.29】:山火事の多発 延焼の速さにどう対処するか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・03.29】:山火事の多発 延焼の速さにどう対処するか
雨のおかげもあり、各地で相次いだ大規模な山林火災は終息しつつあるようだが、今後も多発する恐れがある。
いったん発生すると延焼スピードは速く、焼失面積も大きい。厳重な警戒が必要だ。
愛媛県今治市と岡山市で23日、山林火災が発生し、いずれも住民が避難する事態となった。今治市では送電線に不具合が生じ、1万世帯以上が停電した。宮崎市でも25日に山火事が起きている。
今治市では400ヘクタール以上、岡山市とその周辺地域では500ヘクタール以上を焼いた。1か月前には、岩手県大船渡市で2900ヘクタールを焼失する火災も起きている。
山林火災は全国で毎年1000件以上報告されているが、焼失面積は合計で年平均700ヘクタールほどだ。今年の火災の規模がいかに大きいか分かるだろう。
要因として指摘されるのが、極度の乾燥と強風である。
冬から春にかけては、山に落ち葉が積もり、空気も乾くため山火事が起こりやすい。加えて今年は大陸からの季節風が強く、日本海側が大雪となる一方、山を越えて乾いた風が瀬戸内海や太平洋側に流れ込み、乾燥が進んだ。
今治市や岡山市では15メートル近い最大瞬間風速を観測した。強風によって火勢が強まったとみられる。今治市の火事では、わずか1日余りで焼失面積が2倍に達した。
山火事の怖さを見せつけたのが「飛び火」だ。風にあおられた火が、遠く離れた住宅にも燃え移り、被害が拡大した。距離があるからといって安心できない。
過疎地など、消防の体制が不十分な地域も少なくない。広域的な連携で初期消火に全力を挙げ、早期に延焼を食い止めたい。
防衛省は、陸海空の3自衛隊を一体運用する「統合作戦司令部」を新設した。消火活動や住民の救助にあたって陣頭指揮を執り、効果的な活動につなげるべきだ。
大規模な山林火災は世界各地で起きている。1月に米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した大火では多数の死者が出た。
韓国でも山火事が多発し、20人以上が死亡した。消火活動にあたっていたヘリコプターが墜落する被害も出ている。日本でも二次被害に注意しなければならない。
地球温暖化で世界的に気温が高い。地面や空気が乾くと、発火や延焼のリスクが高まる。山林火災の脅威は続くだろう。大船渡では、消えたように見えた火が再燃することもあった。教訓を共有し、今後の消防活動に生かしたい。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月29日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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