《社説②・03.13》:再び連結器外れ 新幹線への信頼が揺らぐ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・03.13》:再び連結器外れ 新幹線への信頼が揺らぐ
原因の徹底究明と恒久的な安全対策を急がねばならない。
東京都内を走行中の東北新幹線はやぶさ・こまちの連結が外れ、緊急停止した問題だ。
JRは、異なる編成同士の連結運転をトラブルが起きてから1週間見合わせてきた。それをあすから再開する。金具で連結器を固定する対策を施すという。
ただし、あくまで応急的な対応である。連結器がどう外れたかは分かったにしても、なぜ外れたのか、原因が分かっていない。
走行中の新幹線が分離するトラブルは昨年9月にもあった。連結運転が始まって30年余にして初めての事態だった。半年たたずの再発である。新幹線システムへの信頼を揺るがす重大事だ。
今回のトラブルは、東北に向け上野駅を出て間もなく起きた。時速約60キロで走っていて突然分離し、自動ブレーキにより8メートルほど離れてそれぞれ停車した。事後処理に伴い、東北、上越、北陸の各新幹線が全線で約3時間、運転を休止している。
通常、車両の分離は運転手がボタンを押し、シリンダーの圧縮空気で連結器を作動させる。ところがトラブル直後に係員が現場で確認したところ、ボタンも押していないのに、こまち側の連結器が分離動作を続けていた。開業以来初めての現象で、何らかの電気的な異常が考えられるという。
当面の対策として、圧縮空気をシリンダーに送る開閉レバーが勝手に動かないよう、新たに製作した金具で固定する。全編成に適用し、連結、分離のたびに手作業で行うという。
JR東日本は金具の強度は確認済みとしている。だが、原因が分からないなかでの再開に不安を覚える人もいるだろう。
昨年9月の分離トラブルでは、小さな金属片が電気的な誤作動を引き起こしたとし、配線を取り外すなどの対策が取られたばかりだった。原因分析、対策は妥当だったのか見直すべきだ。
新幹線を巡るトラブルは各地で続いている。昨年1月に東北新幹線で架線を張る重りが破損して停電。7月には東海道新幹線で保守用車両同士が衝突、脱線した。安全運行に対する認識、態勢は十分か、疑念が拭えない。
JR各社は人手不足を補う自動運転を新幹線に導入しようとしている。いかに高度なシステムでも安全に絶対はない。新幹線は列島各地を結ぶ大動脈である。安全最優先の大原則にあらためて立ち返る必要がある。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月13日 09:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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