【社説①・03.30】:【児童虐待】:支援が確実に届く体制を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.30】:【児童虐待】:支援が確実に届く体制を
全国の児童相談所が2023年度に虐待相談として対応した件数が22万5509件に上った。前年度から1万件余り増え、33年連続で最多を更新した。厚生労働省とこども家庭庁のまとめで分かった。
高知県も448件と、高止まりの状況が続いている。
命に関わる深刻な事件が後を絶たない。虐待を減らすには予防と早期発見が欠かせない。苦しむ子どもに支援が確実に届くよう、体制整備が急がれる。
児童虐待は、身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待、心理的虐待の4種類に分けられる。
暴言などで心を傷つける心理的虐待が最も多く、件数の約6割を占める。子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV」もこれに含まれ、警察から児相に連絡するケースが目立つという。
児童虐待の背景には配偶者間のDVがあることも多い。過去の虐待死の事件では、夫のDVの影響で妻が子どもへの虐待に加担していた。
児童虐待もDVも家庭内の暴力として一体的に対応することが重要だ。児相と関係機関の密接な連携が求められる。
また、性的虐待への対応も強化する必要がある。件数では全体の約1%だが、「氷山の一角」と言われる。子どもは性的虐待を受けても、性被害と認識できなかったり、加害者から口止めされたりして被害を訴えないことがある。被害が潜在化、深刻化しやすい。子どもの変化に敏感になり、早期の対応につなげなければならない。
児童虐待が増え続ける中、支援が必要な子どもと親を支える児相の重要性は高まる一方だ。しかし、現場の体制は追いついていない。
虐待通告があった場合、原則48時間以内に安全確認する。政府はこのルールの徹底を児相に求めている。ただ、対応件数の増加で業務負荷が増しており、児童福祉司らの疲弊が進む。
国は、児童虐待防止の総合強化プランに基づき、全国の児相で児童福祉司の増員を進めている。こども家庭庁によると、23年度は全国で約600人を採用したが、退職者も270人いた。うち8割以上は定年以外の理由で「心身の不調」「業務内容・量への悩みや不満」が目立った。
専門家は「全件に児相が対応すべきかどうか再考する必要がある」と指摘する。深刻な事例に集中できるよう、役割分担を進めることも必要ではないか。市区町村や民間団体との連携を進め、児相の負担軽減に努めることが重要だ。
政府は、昨年4月に施行された改正児童福祉法に基づき、母子保健と児童福祉に関する相談支援を一体運営する「こども家庭センター」を26年度までに全国で整備する目標を掲げている。だが、設置状況は昨年5月時点で全国の市区町村の約5割、県内では約2割にとどまる。
孤立した子育て環境は虐待のリスクを高める。悩みや問題を抱える親への支援を充実させたい。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月30日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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