増え続ける児童虐待に適切に対処し、痛ましい虐待死などを食い止めるには、関係機関の幅広い連携が欠かせない。
全国の児童相談所が2023年度に対応した児童虐待件数が、過去最多の22万件超に達した。10年間で3倍以上に増えている。
児童相談所の職員研修会で、虐待事案で家庭訪問する際の対応などを議論する児童福祉司ら=東京新宿区で2023年12月19日、内藤絵美撮影
加害者の9割は親で、言葉による脅しなどの「心理的虐待」が約6割を占める。虐待死は22年度で72人に上った。
国は児相の体制強化を進めてきた。対応に当たる児童福祉司は17年度の3240人から5年間で約1・8倍に増えたが、人手不足が解消されたわけではない。人口当たりでは米国の半数にも届かず、英国の約2割にとどまる。
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児童虐待相談対応件数の推移と内訳
しかも現場では急な増員により経験の浅い職員が増え、不慣れなまま親との面談などで難しい判断を迫られるケースが少なくない。
児相が問題を把握しながら、家庭への介入が不十分で虐待死を防げなかった事例が繰り返されてきた。時間をかけて丁寧に対応することが求められるが、現状の体制では追いつかない。関係機関との役割分担が必要だ。
こども家庭庁は、虐待が増えている背景に親の孤独があるとみている。虐待死は0歳の時に最も起きやすく、妊娠段階から相談に乗るなど子育て世帯に身近な存在である市町村が防止に果たす役割は大きい。
22年の児童福祉法改正で、子育てを支援する「こども家庭センター」の設置が市町村の努力義務となった。昨年5月時点で半数の自治体に置かれ、児童虐待の相談や通告も受ける。23年度には約16万件の虐待に市町村が対応した。
児相と市町村の連携を進めるのが東京都だ。緊急性に応じて担当を振り分けるルールを設けている。児相がリスクの高い事案に注力できるよう、夫婦げんかや子どもの泣き声といった通報への対応は原則、センターに移管する。
とはいえ、小さい自治体が専門の職員を確保するのは容易ではない。国と都道府県は財政援助や人事交流を進めるとともに、福祉分野の人材育成を急ぐべきだ。
医療機関や警察、学校、NPOなどによるネットワークの構築も重要になる。地域全体で子どもを守る仕組みが求められている。
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