【主張②・12.28】:最高検の検証 未来に資する深き反省を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・12.28】:最高検の検証 未来に資する深き反省を
静岡県一家4人殺害事件で袴田巌さんの再審無罪が確定したことを受け、最高検と静岡県警が当時の捜査やその後の裁判に関する検証結果を公表した。
最高検の報告書は冒頭で「無罪の結論を否定するものではない」「検察は袴田さんを犯人視していない」と記しながら、再審無罪判決への反論に終始した印象が強い。
最高検が入る建物=2017年、東京都千代田区
静岡地裁判決が犯行着衣とした衣類などを捜査機関が捏造(ねつぞう)したと認定したことについて最高検は「明らかな事実誤認を前提とした認定」と批判した。
捏造をうかがわせる、またはなかったことを明らかにする具体的な事実や証言も得られなかったとして判断を留保した静岡県警の検証より、明らかに踏み込む強い否定だった。
最高検は、苛烈な取り調べについての県警の問題は多岐にわたると批判しながら、「検察官がこうした実態を十分に把握していたとは言えない」などと、自らを従的な立場に置いた。
再審手続きの長期化についても、約27年を要した第1次請求審では審理の頻度が少なかったことなどを指摘し、裁判所側に一義的な責任があるとの認識を示唆した。
大阪地検の証拠改竄(かいざん)事件の反省を受け、平成23年に定めた「検察の理念」はその基本姿勢について、こう示している。
「有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない」
「我々(われわれ)が目指すのは、事案の真相に見合った、国民の良識にかなう、相応の処分、相応の科刑の実現である」
今回の最高検の検証結果は自らの面子(めんつ)に偏重した自己弁護としか読めず、「理念」にかなう検証姿勢ともいえない。
今後の対応策についても、今年1月に最高検に設けた再審担当サポート室の体制強化や、高検にも同様の組織を設置するなどの課題を掲げたが、それはあくまで検察内部の問題だ。
急ぐべきは、証拠開示のルールを明文化し、再審開始の適否を決める請求審と再審公判を統合するなど、再審への門扉を広げる法整備である。
法曹界を挙げてこの問題に取り組まなくてはならない。法務検察は事件への重く深く真摯(しんし)な反省を胸に、法整備をリードすべきである。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月28日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。