【与党税制大綱】:「最悪の時期」重なった政治資金問題…税制改正、負担増の議論は先送り
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【与党税制大綱】:「最悪の時期」重なった政治資金問題…税制改正、負担増の議論は先送り
2024年度の与党税制改正大綱は、防衛増税の時期や扶養控除の見直しなど、国民の負担増や恩恵の縮小につながる税制の見直しについては、決定先送りや玉虫色の結論になった。岸田文雄首相への「増税メガネ」批判など国民の税に対する視線が厳しさを増す中、急ごしらえで所得税・住民税減税を決めた一方、政治とカネを巡る混乱も拍車をかけ、さらなる批判を呼びかねないテーマには「ふた」をした形だ。<button class="sc-knZlEf hOLzJs" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button><button class="sc-knZlEf hOLzJs" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26">
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国会議事堂
■【画像】2024年度税制改正大綱の主な項目
「増税はそれなりの政権の力がいる。残念ながら昨今の政治状況は自民に厳しい風が吹いている」
自民党の宮沢洋一税制調査会長は14日、大綱決定後の会見に臨み、自身が主張してきた防衛増税の開始時期の明記を見送った理由をこう説明した。
政府は昨年末の大綱で防衛増税を決定した。だが「拙速だ」との党内の反発を抑えるため、増税の実施時期については「24年以降の適切な時期」とあいまいな表現にとどめた。
大蔵省(現財務省)出身の宮沢氏は、財政規律を重視する立場だ。安定財源の確保が先送りになると心配し、今年の税制改正議論が本格化する前の11月上旬には「(増税開始時期は)年内に結論を出したい」と強い意欲を示していた。公明党が「所得税・住民税の定額減税を行う一方で、増税を決定するのは矛盾がある」と反対しても、立場を崩さなかった。
最終的に宮沢氏が折れた背景には、いとこである首相の意向があったという。自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題で党への逆風が強まる中、増税に道筋を付ければさらに批判が高まる恐れがあり、党執行部からも否定的な声が強まった。宮沢氏は「首相は与党や政治状況を考えると、来年決めるのが一番良いとの考えだった」と明かした。
他にも家計が関わるテーマは「あいまい決着」が目立つ。高校生年代(16~18歳)への児童手当支給に伴う扶養控除の扱いは最終盤までもつれ、自民の主張通り縮小を明記したものの、維持を主張する公明に配慮して「25年度の税制改正で適用について結論を得る」との一文を添え、見直しの余地を残した。
宮沢氏が「1年限り」と主張した所得税・住民税の定額減税も、公明の求めで物価状況などにより「家計の支援を継続する」と大綱に盛り込み、延長に含みを持たせた。一方で、定額減税には「年収2千万円」の所得制限を設けた。国会議員の年収に当たる歳費と期末手当は計約2190万円で、対象から国会議員を除外し、批判をかわす意図もあるとみられている。
今年10月にはインボイス(適格請求書)制度が始まり、消費税の課税を免除される免税事業者から課税事業者に転換した事業主は130万を超えたという。交流サイト(SNS)上では政府、与党への批判が飛び交い、首相は増税メガネとやゆされた。自民中堅は「国民が税や負担に敏感な時期に政治資金問題が重なった。議論をする上で最悪なタイミングになってしまった」と肩を落とした。 (井崎圭)
元稿:西日本新聞社 主要ニュース 政治 【政策・与党税制大綱】 2023年12月15日 15:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。