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翻訳家の蔵書

2017年09月11日 | ノンフィクション
博覧強記ぶりはよく伝わってくる一方、なんだか狷介な人物のように思え、
昨年末に読みはじめたものの、ページが進まずやっと最後までたどりつけました。
サンリオSF文庫の結末については、SF文庫が売れなかった末の撤退、というのは曲解であり、
サンリオ本体の収支対策のためにSF文庫だけでなく翻訳部門全部が犠牲になったことから分かるはず、という。

ムアコックの「グローリアーナ」(創元推理文庫)はサンリオSF文庫で出るはずだったとの由。

拙ブログ グローリアーナ

ムアコックでいえば、「アリオッチ」(エルリックの守護神?)は正しくは「アリヨク」であり、
奇天烈な名前のうえに「あまりのひどさに笑えるといわれた翻訳」とまで。
大瀧啓裕がそう思ったわけでなく、誰かがそう評したので立ち読みしたのだそうです、井辻朱美の訳を。
「アリオッチ」はその後「アリオッホ」と書き直されていたと覚えていますが、それも違ったんですね。
カー「曲った蝶番」のオカルト趣味は肩透かしで、
『「ピピンの赤い本」を出していることでモンタギュー・サマーズを読んでいることは分かるが、
この程度では贔屓の引き倒し、』とバッサリ。
カーのオカルト趣味なんてただの味付けですから、マニアから見ればそんな程度なのでしょう。

ターナー「二重の影」が埋もれたままなのも、本人はご不満のようですね。
おもしろい本なので、オネショタ系の麗しい表紙絵で飾れば売れるのでは。
拙ブログ 二重の影

ポール・ウィルスン「黒い風」もこの人の翻訳だったんですね。
第二次世界大戦時の日米オカルト戦という怪作ですが、おもしろいです。

■翻訳家の蔵書 大瀧啓裕 創元キー・ライブラリー
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