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殺人鬼 浜尾四郎

2024年06月06日 | ミステリ
■浜尾四郎の「殺人鬼」をビブリオバトルのときの参考書として引っ張り出したので、
50年ぶりに再読してみたんだ。他に読む本もあるのにねえ。
★戦前の本格ミステリとしては「黒死館殺人事件」とあわせて二大長編ですから。
■昔読んだときは、申しわけないけど詰まらない、という感想しかなかったことを思い出したんだが、
今読んでみてもそれは変わらんねえ。
★ちょっと本格ものを読み慣れてる人だったら、70ページあたりでプロットを見抜いちゃうでしょう。
■「黒死館~」が昭和9年(1934年)の発表にたいして、「殺人鬼」は昭和6年(1931年)に新聞連載だったそうだが、
その年にはクリスティ「シタフォードの謎」、クイーンは3冊目「オランダ靴の謎」、
カーは2冊目の「絞首台の謎」3冊目の「髑髏城」を発表している。
★欧米と比べても、遅いわけでもないんですね。
■とはいっても手本はヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」で、
文中に何度もなく引き合いにだされているし、あまつさえ犯人さえ暴露されているのは注意がいるね。
「グリーン家~」を一種のミスディレクションに使うという趣向なんだろうな。
★「殺人鬼」を読む人なら、「グリーン家~」なんて既読でしょうに。
■そうかもな。しかし文体が古くさいのは時代だから仕方ないか。
★著者の本業は検事ですし、小説は副業でしたからそのあたりは割り引いて読むほうがフェアですよ。
■だから警察側の描写はリアルなのか。
「鼻もちならない」探偵、という設定はヴァン・ダイン直系なんだな。
にしても5年後(昭和11年 1936年)の横溝正史「真珠郎」は
今読んでもそんなに古いとは思えないんだがなあ。
★浜尾四郎は文体に明治を引き摺っちゃっている感じがしますよね。
■最後の探偵による謎解きが長いのは、丁寧とみるか冗長ととるか。
★ちゃんと伏線の箇所を示してあるのは、プロットに自信があるんですね。
■アリバイ証言で、片方のアリバイを証明するとみせてもう片方のアリバイをも担保させているのは、うまい。
たぶん中で一番モダンなヒネリじゃないか。
★それ、クリスティかカーにありましたね。
■著者は落語や講談にも造詣が深い、とかプロフィールにあったけれど、
新聞連載なので著者なりにくだけた文章なんだろう。
「ダアとなる」「プカリプカリ」とあると背中がカユくなる。
★連載は名古屋新聞だったんですね。
■とはいっても名古屋的なものはいっさい無い。そこは惜しいな。
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