Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

菊池寛「新今昔物語」

2023-01-25 06:49:41 | 読書

文藝春秋 (文庫 1988/10).

書棚から発掘.全 13 篇のうち「好色成道」「竜」の2篇は読んだ覚えがあると思ったら,春風亭小朝が「菊池寛が落語になる日菊池寛が落語になる日で取り上げていたのだった.やはり落語になりそうなのを選んでいる !

この文庫本には解説がない.また Wikipedia の菊池寛の著作リストには,この「新今昔物語」はないが,単行本は 1948 (昭和 23) 年で,著者はこの年に,公職追放のうちに亡くなっている.

今昔物語は平安時代の説話集だが,「新今昔物語」のネタは,「今は昔」で文章が始まるのは今昔物語からと思われるものの,江戸時代にまで及んでいる.
「大雀天皇」は古事記ネタでそのイントロは「敗戦によって天皇が初めて人間になられたように説かれている」が,「古事記には歴代の天皇はみな人間であることが赤裸々に書かれて」いて,「古事記は人間天皇の恋愛史であり愛欲史であり天皇情史である」に始まる.

「六宮姫君」は今昔物語から芥川龍之介が 1922 年に作品としている.菊池版はほとんど原点通りなのに対し,芥川版 (青空文庫にある) はかなり脚色されているようだ.
この菊池版は「今は昔,六の宮という処に宮腹の子に兵部の大輔という人が住んでいた」と始まるすぐ次の文に「宮腹の子というのは...」と,説明が挿入されたりする.この種の説明がこの本では随所にあり,長すぎず短すぎず,なかなかうまい.

「六宮...」のはほぼ原典通りらしいが,江戸時代を舞台とする「竜」「狐を斬る」あたりはストーリーが現代的で,もしかしたら著者の創作じゃないの,と思わせる.文学部の卒論テーマにこの「新今昔物語」の原点探し,なんてどうだろう.

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