◎戦争末期に講談社が発行していた図書
三井甲之著『三条実美伝』(大日本雄弁会講談社)には、初版と第二版とがある。国立国会図書館に架蔵されているのは初版で、今回、私が入手したのは第二版である。
初版と第二版の違いは、発行日および定価の違いのみ。初版のほうの発行日、定価は、奥付によると次の通り。
昭和十九年十一月 十 日 初版印刷
昭和十九年十一月廿五日 初版発行 (五、〇〇〇部)
停 定価 二円五十銭
特別行為税相当額十六銭 合計二円六十六銭
一方、第二版は、初版の発行日と定価を記している部分に紙が貼られていて、そこに次のようにある。
昭和十九年十一月 十 日 初版印刷
昭和十九年十一月廿五日 初版発行
昭和二十年 五 月 五 日 二版印刷
昭和二十年 五 月 十 日 二版発行 (二、〇〇〇部)
許 定価 金二円七十銭
査定番号 一ノ五二四智
『三条実美伝』の巻末には、「大日本雄弁会講談社発行図書」として、次の二十四冊の案内がある。この案内は、初版にも第二版にもあって、両者の内容は、全く同一である。
以下、その二十四冊のタイトル等を紹介する。末尾の漢数字は定価である(円・銭)。案内には、それぞれの図書について、簡単な紹介文が付されていたが、この紹介文は割愛した。
――大日本雄弁会講談社発行図書――
大串兎代夫著 日 本 国 家 論 284頁 一・八〇
湯浅 明著 生 活 の 単 位 258頁 二・〇〇
蒲生俊文著 本居宣長 玉鉾百首論釈 231頁 一・八〇
中川与一著 日 本 文 芸 論 254頁 二・一三
石川宰三郎著 明治大正昭和 日本絵画史 624頁 三・七九
東亜研究所編 異民族の 支那統治史 424頁 二・九九
駒井徳三著 大 陸 小 志 244頁 二・三〇
武藤正行著 勤皇家戸原卯橘 294頁 二・四三
関 不可止著 吉 田 松 陰 442頁 二・八六
望月 茂著 佐 久 良 東 雄 367頁 二・六二
大崎勝澄著 大 国 隆 正 450頁 三・一一
浅野 晃著 橘 曙 覧 376頁 二・五五
吉野有武著 嗚呼乃木将軍 314頁 二・五九
七卿顕彰会編 七 卿 回 天 史 262頁 一・八〇
保田与重郎著 皇 臣 伝 346頁 二・五五
樹下快淳著 慈 雲 尊 者 398頁 二・六七
田崎 仁著 勤労青少年の指導 259頁 二・八〇
富沢喜一著 賃金と労務者指導 306頁 三・二〇
蒲生俊文著 戦時下の産業安全運動 447頁 四・六二
山根省三著 勤労者の創意工夫教育 334頁 四・二二
川瀬一馬著 日本書誌学之研究 2030頁 二五・〇〇
大西友太著 我 が 国 の 國 體 376頁 三・八〇
原田伴彦著 中世における都市の研究 284頁 三・五〇
藤井新一著 帝国憲法と金子伯 774頁 六・五〇
なお、「大日本雄弁会講談社」は、1958年(昭和33)、「株式会社講談社」と改称され、今日にいたっている。