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NPOな人

NPOの現状や日々の雑感などを徒然なるままにお伝えします。

高木敏子「ガラスのうさぎ」

2010年07月28日 | 地域情報・まちづくり
昨日と今日は、戦時中の二宮町を舞台にした小説を二冊、私の友人でアナウンサー・朗読研修講師の原良枝さんの著書「彼女の場合 神奈川・文学のヒロイン紀行(かまくら春秋社)」から紹介しています。

「昭和十九年の八月、敏子さんは東京からここ二宮町に疎開してきた。食べ物も『麦ごはんだったが、そのころにはめずらしく、三度三度たべられたし』疎開先の人もよくしてくれ、学校でもみんな仲良くしてくれたという。しかし、翌年三月十日の東京大空襲で母親と二人の妹を、さらに五月には、二宮駅での機銃掃射で父親を失ってしまった。

(中略)

 幾度も難局を乗り越えていく。その都度『一生けんめい生きていかなけらばならない』『わたくしはどんなことがあっても生きなければ、がんばらなければならない』と呪文のようにこのことばを繰り返し、自らを奮い立たせながら健気に生き抜いていくのである。

(中略)

 しかし子供たちは、『ガラスのうさぎ』に限らず戦争に関する本を読むとかわいそうで哀しくて泣けてくるから嫌だという。自分たちと同じような子供が主人公なので、シンパシーを感じやすいのだろう。ページをめくるうちに、戦争という死と隣り合わせの恐怖を追体験しこわくなる悲しくなって、思わず父や母の手を握ってはそのぬくもりに安心する。子供たちにはこの時あふれ出た熱い涙を忘れないで欲しいと願う。」

戦争で家族を失った少女を描いた高木俊子さんのノンフィクションは、実写映画やテレビドラマ、アニメ映画でも知られていますが、昭和56年に永遠の平和を願う人々の浄財によってガラスのうさぎ像が建てられました。二宮町にお越しの折には、ぜひJR二宮駅の南口に回って文化勲章受章者の彫刻家・圓鍔勝三さんにより製作されたこの像をご覧ください。