後藤和弘のブログ

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福島原発事故直後にこのブログに掲載した記事の誤りの訂正(1)爆発現象の解説記事

2011年12月15日 | 日記・エッセイ・コラム

以下は福島原発が爆発した直後の3月13日に掲載した記事です。爆発直後で勉強不足もあり現場の情報も非常に限られていた時点でしたので幾つかの間違いが書いてあります。爆発事故から9ケ月が経過して原子炉も冷温停止状態になったので、自分で書いた記事を冷静に読みなおして、その誤りを訂正して置きたいと思います。

福島原発の爆発直後には皆様はどのようなことをお考えだったでしょうか?思い出しながらお読み頂ければ嬉しく存じます。

まず記事の内容の誤りを訂正致します。

(1)説明に用いた図面は加圧水型の原子力発電装置でしたが、日本の原発の大部分は加圧をしていない沸騰水型軽水炉なのでこの図面は適切ではありません。

説明文の中で日本でよく使われている加圧型・・・の部分は沸騰水型軽水炉と訂正すべきです。しかしどちらも同じような構造図になるので、その下の説明文は訂正する必要はありません。

(2)図面の下の説明文で、冷却水の止まった状態で核燃料棒の中で核連鎖反応が起き・・・・という記述は厳密ではありません。

緊急スルラム装置が作動し、核連鎖反応は停止しますが、核燃料棒の自然崩壊熱で・・・・と訂正すべきです。3月13日の時点では「自然崩壊熱が巨大で、燃料棒を加熱、熔解するという情報がまだマスコミに広く報道されてなかったのです。またその事を明快に主張した原子力科学者が居なかったのです。その事が科学者のために残念至極でした。

(3)、記事の中の(1)で提起した緊急スクラム装置の作動の問題は、その後のマスコミ報道から正常に作動していたことが分かりました。従ってこの項目は削除いたします。

以上の3つの訂正をした上で、もう一度この記事を読みなおして見ます。

すると(2)、(3)、(4)、(5)の問題は現在でも東京電力から明快な答えの出ていない重大な問題と信じています。

残った50基の原子力発電所の安全操業の指針にもなるような問題提起です。

過ぎ去った事は忘れるのではなく根気良く検証を続行して、原発の安全を万全にすべきと信じています。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。

後藤和弘(藤山杜人)

今回の原子力発電の炉心熔融と爆発には人間的ミスは無かったか?

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昨日起きた炉心熔融とその結果の建屋の爆発を理解する為には、まず、原子力発電の仕組みを大凡理解する必要があると思います。この図は日本でよく使われている加圧型の原子力発電の仕組みを簡略に説明しています。

左の部分で原子核反応で発生した熱を冷却材を循環して取り出します。この高温の冷却材で水蒸気を作り、それを右の方の発電用のタービンへ送っています。タービンで発電機を回転させれば電気が得られるのです。

昨日の「炉心熔融」は炉心を冷やす冷却材か、「水ー水蒸気」の循環系統が止まったことにそもそも、の原因があります。

冷却が止まった状態で、数多くのウラン酸化物を主にした燃料棒の内部で核連鎖反応が起きれば、発熱し、炉心の温度が上がります。すると燃料棒を包んでいた「超耐熱性の金属(ジルコニュームを主成分とするジルカアロイという名前の合金)」のチューブが熔解します。ウラン酸化物、UO2も熔解します。その一方残存していた水蒸気が燃料棒を覆っているジルカロイという合金を酸化して、水素ガスを発生します。

この高圧の水素は格納容器から放出され、福島1号炉を覆っていた建屋内に溜まり、引火して爆発したのです。しかし、格納容器は大変ぶ厚い特殊鋼とコンクリートで出来ていて大砲の弾があっても壊れないと言われています。

ですから、格納容器はまだ融けていません。しかし最悪の場合は熔融して、核燃料が高圧蒸気とともに一挙に空中に飛散し、半径20km位の範囲に降る可能性があります。(原発には起爆装置がないので、原子爆弾のように強大な破壊力で爆発することはありません)

そこで昨夜から高温になりつつある格納容器を海水で冷やして、熔融を防止しようと、現在も努力しています。

上の一連の現象には技術者の人間的ミスが重なって起きてた可能性が想定されます。

(1)大地震で核連鎖反応を停めるため瞬間的に減速材棒を挿入する緊急スクラム停止装置があります。それが正常に作動しなかった可能性があります。巨大な地震で減速材棒が曲がって動かなくなった可能性もあります。

動かなくなった減速材棒でも無理に押しこんで緊急停止装置を作動させる訓練をして居たのでしょうか?減速材棒が入らない時は多量のホー酸液を注入して核反応を停めます。それに失敗したとしたら訓練不足です。

(2)炉心冷却材を循環させるポンプを動かす為の、「緊急用ジーゼルエンジン」が始動しなかったのです。地震の振動で始動しなくなったとしたらエンジンの設計上でのミスです。日頃の整備もちゃんとしていたでしょうか?

(3)冷却材循環の為のポンプが動かないので、別系統の「緊急冷却水循環システム」(ECCS)が正常に作動していたそうです。それなのに間違ってそのECCSを止めてしまったのです。停めたのは下請け会社の職員であり、現場にまともな技術者が居なかったのを伺わせます。常日頃の緊急事態のための訓練を充分にしていなかったのです。

(4)海水注入で格納容器内部を冷却するためのポンプやモーターが充分でなく、名古屋の小牧空港から自衛隊機で昨夜運んでいます。大津波でポンプが流されてとしたら津波へ対する想定上のミスの可能性があります。

海水注入の訓練をして居たのでしょうか?

(5)炉心熔融の可能性は専門家なら早くから想定出来たことです。早く決断して海水注入を始めれば建屋が爆発することも無かったはずです。

決断の責任を取りたくないので、決定が遅れに、遅れたとしたら、これも人間的なミスです。

以上、事実が判明しだい訂正して行きますが、大筋において間違いが無いと思っています。皆様は如何なご意見でしょうか?

========終り====3月13日========