浅田次郎/講談社文庫
「中原の虹」の続編。日本人なら誰でも知っているはずの張作霖爆殺事件の詳細を追う。
高校の日本史の教科書でも、この事件は必ず載っているものの、書いてあるのは半ページ以下。張作霖がどういう人で、どういう力を持っていたのか、陰謀はどのようにして行われたのか等は何も書かれていない。
もちろん今だにわかっていないことは多いはずなのだが、ある程度わかっていることを、架空の人物なども織り交ぜながら小説に仕立てている。
張作霖の天命は東北の王となることであったが、中国全体の皇帝となろうとして長城を越えてしまった。だが結局国民党と妥協してその夢を諦め、東北に帰ろうとしたところをやられてしまったのだ。
無論、張作霖も陰謀の危険を恐れて、囮列車を仕立てたり、非常にゆっくり走って時間通りに着かないようにしたり、本来の自分の居場所とされたところとは違う場所に乗ったり、防御策は講じていたのだが、終点で自分を歓迎するために待っている人たちもいることから、到着直前に本来の居場所に戻ったところをやられたのだ。鉄道そのものより、満鉄の下をくぐるところで満鉄側の橋を爆破して張作霖の乗った車両を直撃するといった方法が取られたようだ。
張作霖が乗った車両は西太后が乗ったお召し列車という曰く付きの車両だった。周囲の人物で、途中下車したり、逆に一つ前の囮列車に乗り換えたり、一つ後の列車に乗り換えた者もおり、そうした人たちは陰謀を知っていた可能性がある。
またアヘン中毒の人たちを騙しておびき寄せ、刺し殺して犯人に見せかけたりする偽装工作も行われた。
この物語はまだまだ続くので、ますます生臭い話が待っていることであろう。