中越大震災「医療活動の記録」
長谷川さんは記録誌部門賞
県内在住者の執筆による自費出版図書を顕彰する「第5回新潟出版文化賞」が20日に発表され、小千谷市魚沼市川口町医師会が出版した「新潟県中越大震災 小千谷市魚沼市川口町医師会の医療活動の記録」が大賞を受賞、魚沼市堀之内の長谷川勝義さんの「藪神衆の苦悩と誇り 魚沼の戦国事情」が記録誌部門賞を受賞した。
今回の新潟出版文化賞には記録誌部門77作品、文芸部門81作品の合計158作品の応募があった。
大賞に輝いた「小千谷市魚沼市川口町医師会の医療活動の記録」は、中越地震の経験を記録に残し、今後の震災予防医療活動に少しでも役立ててもらえれば」と出版されたもの。全295ページの大作は各医療機関の被害と医療活動からはじまり、外部からの医療支援、心のケア、透析患者への対応、インフルエンザ対策、車中泊者のエコノミークラス症候群などについてレポートされており、震災後に開いた災害医療検証シンポジウムの内容も詳細に紹介。会員の投稿、講演会・シンポジウム参加記録や随想なども収められている。同賞では「単なる活動の記録にとどまることなく、震災時における医療機関の住民への対応や心のケア、医療活動の事後検証にいたるまで細かく網羅されており、災害時のマニュアルともなる」と評価されて大賞に選ばれた。
同書出版時の医師会長で出版にあたった庭山昌明氏は「まだ地震の傷跡も生々しい時期に、被災者でもある会員が一生懸命にまとめた生の記録なので、受賞は
うれしい。日頃から一体感のある小さな医師会だからできたこと。この記録集が今後、災害時の医療活動に役立てばと願っている」と話していた。
記録誌部門賞を受賞した長谷川さんの「藪神衆の苦悩と誇り」は、薮神の武将たちは、どこから来てどこへ行ったのか、そしてどのような選択によって乱世を生き抜いてきたのかなどを中心に、苦悩するその足跡を追っているほか、神社の縁起や神事の年中行事、塚の諸相と伝説など魚沼の信仰と風俗も紹介している。選考では「筆者は魚沼の山容・地形を熟知し、その思いを中世の復原に務めてきた。しかも、多くの文献を網羅的に考察し、現地調査を徹底した姿勢は努力賞もの」と認められての受賞。長谷川さんは「今まで集めた資料を、自分自身の記録としてまとめた自己満足の結果が書籍となったもの。受賞など思ってもいなかった」と話していた。
表彰式は選考委員長の荒井満氏を迎えて12月9日、新潟市の万代シルバーホテルで開かれる。