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時の地図


 フェリクス・J・パルマ 宮崎真紀訳      早川書房

 19世紀のイギリスはロンドンで、人々の人気を呼んでいる旅行社がある。マリー時間旅行社。この旅行社は時間を航行する乗物を持っており、西暦2000年に連れて行ってくれる。今まで、2回ツアーが出発したが、2回とも大人気。また、ちょうど時を同じくして、H・G・ウェルズという作家が「タイムマシン」という時間旅行をテーマにした小説を発表。ウェルズの小説人気もあいまって、時間旅行はロンドンでちょっとしたブームになった。
 19世紀にタイムマシンは実在した。人々は時間旅行を楽しむことができた。と、まあ、時間モノSFであると思って読んでいただきたい。もちろんタイムパラドックスもある。それをどう解決しているのかが、SFもんとしては興味を引かれることだと思うが、決してハードSF的な解決はしていない。これを肩すかしと怒るか、なるほど、こりゃあお父さん一本取られた、とカカと笑うかは人さまざまだが、小生は喜んだ。ジェフリー・ディーバーのファンなら喜ぶだろう。おっとこれ以上いうとネタばれになるから、いえないが、もう一つヒントを、この本の表紙および背中をよっくご覧あれ。
 三つのお話で構成されているが、登場人物も共通しているし、長編のパート1パート2パート3といっていいだろう。この三つの話をつなげる串となる人物が二人いる。まず、作家のH・G・ウェルズ。そうあのSFの父ウェルズだ。世界で初めて時間旅行をテーマとした「タイムマシン」の作者として責任を取らされる。なんとウェルズ先生、ベッドシーンまで披露して大活躍。もう一人がギリアム・マリー。マリー時間旅行社の社長。この会社のツアーで行ける場所は一ヶ所だけ。西暦2000年5月20日。ついこの前だ。ちょっと日記を見ればどんな日かお判りになるだろう。
 人類は自動人形に支配されていた。この自動人形に敢然と立ち向かったのが、人類軍の総司令官、英雄デレク・シャクルトン将軍。2000年5月20日とは、シャクルトン将軍と自動人形の帝王ソロモンの一騎打ちがあった日なのだ。
 このシャクルトン将軍にひとめぼれしたセレブなお嬢さんがいたり、将軍自身も深い悩みをかかえているのだ。

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