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天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ


  小川一水              早川書房

 西暦2803年。人類が植民星メニー・メニー・シープに入植して300年たった。惑星連合に加盟しているとはいえ、自給自足の独立した星としてやってきた。
 メニー・メニー・シープには化石燃料はない。エネルギー源は地下に埋まっている、巨大宇宙船から供給される電力に頼っている。この宇宙船は、300年前に入植者が乗ってきた宇宙船だ。この宇宙船の乗組員の役職がそのまま、メニー・メニー・シープの末裔に受け継がれている。艦長、航海長、甲板長。艦長と航海長の末裔は「海の一統」という勢力を形成している。そして甲板長は・・・。
 メニー・メニー・シープを統治しているのは臨時総督。今はユレイン・クリューゲル3世という少年が務めている。惑星連合中央から任命されているが、それは形式だけで、惑星連合はノータッチ。実質世襲で、住民からは「領主」と呼ばれる独裁者である。地下の巨大宇宙船シェパード号を独占管理し、電力の供給を意のままに行っているのが臨時総督だ。また総督はこの惑星の天候もコントロールしている。なぜこういうことが出きるのか。総督はシェパード号のある役職の末裔だからだ。
 このメニー・メニー・シープで動乱が起こった。「海の一統」「恋人たち(ラバーズ)」といった勢力が総督府に反旗をひるがえした。そして臨時革命政権は女性植民地議会議員エランカ・キドゥルーを大統領に選任して、ユレイン3世を追う。そして革命が成し遂げられようとした時、謎の勢力が出現して、メニー・メニー・シープに大変動が起きる。
 後半は今年に起きた「中東の春」を思わせる民主化運動が描かれているが、ユレイン3世はカダフィほどしぶとくない。
 全10巻の大長編のオープニングだが、スペースオペラとして読めば充分に楽しめる。ただ、SFとしてのびっくりするようなアイデアはあまりない。例えば、後半に出てくる謎の勢力、ま、ベムといえばベムだが、これなどは、小生はダン・シモンズ「ハイペリオン」のシュライクを思い起こすのだが。
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