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『足利義満 消された日本国王』

小島 毅、2008、『足利義満 消された日本国王』、光文社(光文社新書)

本書でなるほどと思えた点は、天皇制が日本に長く根付いているとはいえ、その権威の所在について、対外的な視点で考えてみると、別の見方で見えてくるということであろうか。
本書の場合、中華帝国を中心とする朝貢システムのなかで、周辺国はどのような態度に出ていたかに注目して、そのことを利用して国内覇権も掌握しようとしたのが、足利義満で、今少しのところまできていたが、その死で野望は潰える(本書の著者は、暗殺されたというアイデアを提示する)。さて、外交関係と、国内問題は異なっているということがキーである。江戸時代の朝鮮通信使を接待する、対馬の宗家(朝鮮と日本に両属する)による国書偽造問題が、別の姿であろうか。内外に異なる国書をしまして、宗家の立場を維持しようとする。さらには、義満のように外交関係を利用して、覇権を獲得しようという戦略をとるかである。
本書の著者は中国思想史の専門家で、正閏説をとる朱子学ののべる易姓革命のシステムと天皇位の継承システムの相似性を指摘し、義満は、朱子学を理解して、その手法を利用したという。朱子学は後に幕末明治維新の際に、天皇制復古の思想的背景として利用されたものではあるが、その解釈いかんによっては、簒奪の思想もあり得たことを指摘する。

足利義満のほかには、織田信長がこの辺りのからくりをよく理解していた人物ではあろうし、また、逆に覇権を握ることなく実権を掌握しようとした、秀吉や家康、さらには、明治の元勲らも同じ穴の狢かもしれない。
それと、もう一つ、興味深く思えることは、天皇の権威がどのようなものであったか、明治維新以降の政治教育によって、過去の姿があまりよく見えないが。おそらく、天皇は、庶民にとって、いや、おそらく、武家にとってみても、さほど権威があったものとは思えないという点が、本書で描かれる義満による天皇位の簒奪の背景ということなのではないかという点である。
うちの親戚からきいたはなしでは、関東の天領の住民による明治初年の将軍(公方さま)と天皇(天皇さん)のどちらが偉いのかという実感は、おそらくは、「さま」と「さん」の違いでもわかるように、将軍の方が偉く感じられていたようである。

足利義満 消された日本国王 (光文社新書)
小島 毅
光文社

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2008-07-29 23:49:32 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


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