大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲・ノラ バーチャルからの旅立ち・4

2019-04-23 19:46:32 | 戯曲
連載戯曲
ノラ バーチャルからの旅立ち・4
 

※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください。


時      百年後
所      関西州と名を改めた大阪

登場人物
好子     十七歳くらい
ロボット   うだつの上がらない青年風
まり子    好子の友人
所長     ロボットアーカイブスの女性所長
里香子    アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ    アシスタントディレクター



好子: その電柱の脇に積んであるダミーのゴミ袋なんか、中味までちゃんとその時代のゴミが入ってんのよ。 はみ出してる割り箸とか、カップ麺のカップとか、このためにわざわざ作ったんだって。             
ロボ: ソコマデシテ残サナケレバナラナイモノ?            
好子: ぬくもりがいるのよ人間には……。
ロボ: ヌクモリ?
好子: たとえば……使い古したカバンを捨てずに残したり。
 こわれた人形や、片方しかないピアスをとっといたりするじゃない。
 そういうものって一見無駄なんだけど、自分のアイデンティティーを持ち続けるためには必要なのよ。
ロボ: ソウナンダ。デモ、ココ、モウジキ閉鎖サレルンダヨネ。
好子: うん、去年の事業仕分けで決まっちゃった。
ロボ: デモ、イボジ、キレジ、ダッコウ、ダッコウ……(壊れたレコードのようにバグるロボ。好子、ロボの頭をたたき回復)ハナヂ、アカジ、赤字ナンダロ、ココ。
好子: 赤字でも、残さなきゃならないものだってあるよ。
ロボ: ソウナノカイ?
好子: ロボットだってそうでしょ。ほんとうは歩いたり、しゃべったり、それにふさわしい機能さえあればいいのに、ことさら人間風に皮膚をつけたり髪の毛つけたりして、疑似感情まで持たせてアンドロイドにしたじゃん。それは、その方がぬくもりがあって安心……どうしたの?

 ロボ、身をよじるようなバグ、キューキューと悲しげな音がする。

ロボ: コレジャ、ヌクモリモ安心モ感ジナイヨネ(自分のボディーを示す)
好子: そんなことないよ。そんなこと!
ロボ: ジョーダン、ジョーダン。チョットスネテミセタダケ。
好子: もう!
ロボ: チョット、ソンナニ速ク歩ケナイッテバ。
好子: だって、ロボットでしょ!
ロボ: ポンコツナノ。
好子: ポンコツだってロボットでしょ!
ロボ: アノネ……。
好子: わたし、すねたり、弱音はいたりするやつだいっきらい! 人でもロボットでも!
ロボ: 好子ォ……。
好子: くやしかったら、わたしを追いこしてみなさいよ!(駆けだす)
ロボ: チョ、チョット、好子!
好子: ポンコツの意気地なしロボット!
ロボ: 好子!
好子: あいた!(転んで膝をすりむく)
ロボ: 一人で起きられる?
好子: 子どもじゃないわよ……アタタ。
ロボ: ジャ、先イソゴウカ。
好子: ちょっと、そんなに早く歩けないってば……。
ロボ: ハハハ、ドウダ、サッキトサカサマ。
好子: ハハハ、ほんとだ。ここ、地道のままだから、石ころなんかむきだしなのよね。
ロボ: 道のセイニシテル。
好子: じゃ、なんのせい?
ロボ: 重心ガアガッタセイジャナイ?
好子: 重心……?
ロボ: 足の裏ノ単位面積アタリニカカル重量ノ増加トイウカ……。
好子: 失礼ね。太ってなんかないわよ。わたしってば……このごろ、なんでもないとこでつまづいたりするのよね。
ロボ: それって……。
好子: ヘヘ、わたしって悩める乙女だもんね。
ロボ: 悩メルオカメ……。
好子: こいつ!
ロボ: 好子怒ッタ!
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高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・018『江ノ島・1』

2019-04-23 14:54:24 | 小説

魔法少女マヂカ・018  

『江ノ島・1語り手・友里 

 

 

 残念な顔をするのに苦労した。

 

 お父さんの仕事の都合で日帰り旅行に変更になったんだ。ほんとうは鬼怒川に一泊二日の予定だった。泊りで、ずっといい子にしているのは気が重かったから、言われたとたんにフッと胸が軽くなる。

「いいよ、これからもずっと家族なんだし、旅行なんていつでも行けるよ」

 言ってからしまったと思う――これからもずっと家族なんだし――という言い方は、なんだか家族であろうとすることが意識的すぎて、家族であろうとすることが重荷になっているような響きがある。でも、返事するのに間が空くよりはよかった。

 行先は江の島だ。

 これは素直に喜べた。子どものころから何度も行っている。遠足で二度ほど、家族でも数回行っている。

「お弁当持っていこう!」

 お母さんの一言で、小田急で行くことに決まる。

 電車的には江ノ電に乗っていきたいんだけど、江ノ島でお弁当を食べるなら、水族館前の海辺と決まっている。

 水族館は小田急江ノ島駅が最寄りの駅だからだ。

 夏場は海の家が一杯並ぶ湘南の代表的海水浴場。この季節は、うち同様にお弁当を広げる家族連れのメッカになる。

 江ノ島水族館と言っても江ノ島にあるわけじゃない。江ノ島の対岸、江ノ島弁天橋を左に据えて江ノ島と湘南の海岸がパノラマみたく臨める場所だ。

 水族館と砂浜の間、大階段になったところでお弁当を広げる。

 死んだお母さんとお弁当食べたは砂浜だった。お父さん、微妙に場所をズラしている……ま、当たり前だよね。

 

 お弁当は、夕べ作った。シェフはお母さんだけど、わたしも妹と一緒に手伝う。

 お母さんのお弁当は真智香が「美味しい!」と叫ぶほど出来がいい。あのお弁当があったから真智香と友だちに成れた。

 いわば来福のお弁当。

 それを広げて、お父さんに「ここはお母さん、そこが友里で、こっちが茜里(妹)が作ったんだよ」と解説する。

「腹ごなしに走るぞ!」

 茜里に声を掛ける。

 姉妹で犬ころのように砂浜を駆ける。大階段ではお父さんとお母さんが砂浜のわたしたちを見ている。背景は湘南の海と江ノ島と青い海! 家族を感じるには絶好のロケーションだろう。

 走り疲れて、砂浜で大の字になる。茜里は貝殻を拾っている。

 潮騒が心地よく、いつの間にかウツラウツラしてくる……これくらいの距離感がいい……両親の視界の中で自由にしていられて、妹の茜里が近くで遊んでいる。不器用なわたしには、これくらいの距離感が……。

 ふいに、誰かが前に立った気配がした。

 お母さん?……待って、いま笑顔になるから。

 目を開けて顔をあげると……ほとんど裸の女の人が立っている。

 すぐ近くには茜里がストップモーションになっている……いや、視界に入る人たちや、空のトンビさえフリーズしている。ただ、波だけが規則正しく打ち寄せている。

 女の人は青い髪をお団子に結って、薄衣をなびかせ、手には琵琶を抱えている……肌は抜けるように白く、優し気に微笑んでいる。どこかで会ったことがある……。

 

 この人は……江ノ島の弁天様だ。

 

 思い至ると、弁天様は微笑みのレベルを上げて、ポロロ~ンと琵琶をかき鳴らした。 

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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・010『風雲赤坂城!』

2019-04-23 06:36:43 | ノベル2

時空戦艦カワチ・010

『風雲赤坂城!』          

 

 

 要は人なんや

 そう言うと、正成は喜一を本丸の櫓に連れ出した。
 

「これは……」  

 眼下の風景に驚いて身を乗り出した。 外から見た限りでは、城中に人の気配は希薄だった。 季節的にも農繁期の真っ盛りなの秋なのだからと納得していた。 喜一は幹部自衛官だったので、防衛大学で一通りは日本の戦史については学んでいる。

 それが、外からは窺い知れないところで兵どもが立ち働いているのである。 

 織田信長が職業軍人として足軽部隊を組織するまで、日本の戦は農閑期に行われていた。戦場で棟梁とか御屋形様と呼ばれる武士の親玉が活動できるのは、日ごろは畑や田んぼで地を這っている百姓たちが居るからだ。だから百姓たちが忙しい秋には戦は行われない、行われたとしても、ごく小規模なものに終わる。
 

 だから、この季節に百姓たちが城に籠って戦支度をしているのは常識に反する。 赤坂城の外からは窺い知れないが、城中は煮立った鍋の中のような活気なのだ。
 

「稲刈りなどはどうしているんですか?」

「人を雇うてる」  常識じゃないかというような顔で正成は答える。

 喜一の知識と感覚では、日本の百姓が人を雇って稲刈りをさせることは考えられない。 稲刈りは百姓の本業であり、一年の農作業の総仕上げであるのだ。
 

「稲刈りは誰でもでける。せやけど、城の守りは気心が知れて息の合う家人や郎党やないとでけへん。普通この時期に止む無く戦するときは、人を借りるか雇うかや。借りても雇うても銭がいるし、そういう者は気心が知れん。せやから、稲刈りにこそ人を雇うて、百姓を城に入れるんや」

「なるほど……」  目から鱗の喜一である。

「艦長、あそこの郭見てみい」  正成は、城の外郭を指さした。

「あ、あれが二重の城壁……」

「せや、外の城壁に敵が食らいつくのを待って縄を切るんや」

「城壁ごと敵は麓に真っ逆さま……この戦法はわたしの時代にも伝わっていますよ」

「それは嬉しいのう……せやけど、あれを思いついたんは馬借の若いもんや。任せてみたら三日で仕上げよった。ああいうことは雇うた奴は言わへん、我が領民ならこそや」
 

 おやかたーーーー!
 

 下の郭からのだみ声は恩地左近だ。

「なんじゃ!? おのれがオヤカタ言うと親方に聞こえる、様を付けろ言うてるやろ、御屋形様と!」

 気にもしないで左近は続ける。

「ユルフン一丁では親方じゃ。百姓の女房どもが押しかけてきとりますぞ、どないしまんのんじゃ!」

「わいが集めたんじゃ! 作事も一段落、今夜は宴会じゃ!」

 なるほど、さっきのフンドシ信号は女房どもに召集をかけたものであるようだ。
 

「人というのはこういうもんやと思う。アンドロイドは優秀やろけど、やっぱりブレーンには人間を集めた方がええと思うで」
「痛み入ります」

 喜一は答えを得たと思った。一礼して櫓を下りようとしたら正成が付けたした。

「千早のこと頼んます。なんの因果か時空なんたらもんを超えて企みの多い娘やが、託してみてもええだけのもんは持っとる女子や、よろしゅうにな」
 

 秋風になぶらせている正成の横顔は寂しげにも人を食ったようにも見えた……。  

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高校ライトノベル・時かける少女・77 『スタートラック・17・三丁目の星・5』

2019-04-23 06:24:09 | 時かける少女

時かける少女・77 

『スタートラック・17・三丁目の星・5』        
 

 

☆……三丁目の星・5
 

 ミーシャが狙撃されてしまった……!
 

 ミーシャは、ソ連のスナイパーによって心臓近くの動脈を撃たれ、即死状態だった。

「コスモス、ナノリペア! バルスはスナイパーを追え! ただし殺したらあかんど……」 マーク船長は河内弁で怒鳴った。            

 即死でも、脳は数分間は生きている。マーク船長は、ミーシャの胸に直接電子注射でナノリペアを注入した。それも周りの人間には気づかれずに。

「……マーク船長、ミーシャの鼓動が戻ってきた!」

「オレの処置は内緒にな。この三丁目星の医療技術じゃ治されへん傷やったからな」
 

 ミーシャは病院に搬送され、奇跡的に命を取り留めた……ということになった。
 

 スナイパーの方は、ロイド犬のポチが先導し、バルスが人間離れした能力で(もともとアンドロイドである)追いつめ、腕をへし折り、奥歯に仕掛けた自殺用の毒薬を奥歯ごと抜いて掴まえた。 「殺されるより、痛い!」  スナイパーは泣き言を言った。
 

「モロゾフ君。君の仲間は何人ぐらい日本に潜伏してんねん?」 「……!?」 「名前当てたんで、びっくりしてるんか。おれはな、顔見ただけで、お見通しなんや……メンバーは……分かった」

 マーク船長は、アナライザーで、スナイパーの心を読み取ると、コスモスのCPUを通して日本中にいるアンドロイド、ガイノイドに指令した。

――全ての工作員を確保し、後楽園の会場まで連行せよ―― ――腕の一本ぐらい、へし折ってもいいか?―― ――あかん、無傷で連れてこい――

 そして、十時間をかけて(なんせ、新幹線も無い時代である)米ソ中の工作員三百名あまりが後楽園に集められた。所持しているピストルはモデルガンに、ナイフはゴムに変えられていた。むろん歯に仕込んだ毒薬は龍角散に、所持している毒薬はグラニュー糖に変えてある。

 では、ミーシャを狙撃したモロゾフが、なぜ、腕をへし折られたか?

 バルスは「急を要したので」とシラっと言ったが、バルスがミーシャをオシメンにしていることは明らかだった。
 

 そうして、連行された工作員と米ソの大使(なぜか、その日のスケジュールをSJK観覧に変えられていた。中国は、まだ国交がないので工作員のボス)同席の中、SJKのコンサートが行われた。

 むろん一般席も一人百円という格安で、一般客に開放され、数万人がひしめいた。
 

 その日は、特別に米ソ中の国歌から始まり、それぞれの民族音楽を含め、二十曲余りの曲を歌いあげた。

「ほら、みなさん、こんなに良い笑顔をなさっています。わたしたちは、難しい政治のことは分かりません。でもみなさんは音楽を通じて、こんなに一つになりました。ステキです。ありがとうございました!」

 後楽園球場は満場の拍手になった……。
 

 それからJポップは世界中に広がり、派生系を生んだ。ロック風、コサック風、京劇風、さまざまなものが生まれ、人々の心は、世界的規模で多様化しながら一つになった。

 そして、二年後には核兵器が廃絶され、冷戦は終わり、銀河連邦でもまれに見る平和な惑星になった。
 

「ほんなら、あとは、あんたらで上手にやりぃや」

 そう一言残し、ファルコン・Zのメンバーは三丁目星を後にした。
 

 むろん、ミナコとミナホの卒業公演は世界中三十カ所で盛大に行われ、数千万の人々が直接に、数十億人の人がラジオやテレビ、レコードで、それを聞いた。

「あとは、陽子。あなたに頼んだよ!」

 陽子とミナコ、ミナホが抱き合う像はお台場に高さ三十メートルの像になって『友愛の三天使』の名を付けられた。

 除幕式は、元内閣総理大臣鳩山一郎がテープを切った。
 

「まあ、鳩ぽっぽで幕がしめられたんだ。ちょっと緩いけど、めでたいこっちゃ」
 

 ファルコン・Zは、次の星をめざした……。

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