大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・010『馬』

2019-03-26 18:38:44 | 小説

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・010

『馬語り手・安倍清美   

 

 

 

  ポリコウの勤務が三か月延びたのは嬉しい。

 

   現場にいることで、家族や友人たちに感じるひけ目が少なくて済む。

 講師を首になったら、ただの就職浪人だよ。当然バイトやって定期収入と言うのを確保しなきゃいけないし。なんだフリーターかっちゅう世間の目にも耐えなきゃならない。

 たとえばよ、コンビニのレジをやったとする。

「いらっしゃいませ~、お弁当は温めますか~」

 とか愛想振りまいて、お客が教え子だったりすると、すっごく気まずい。でしょ!?

 マジ、半年前、講師の契約切れてコンビニのレジやってて、前任校の校長が来た時は困ったわよ。

 コンビニならまだいい、ミニスカ履いてポケティッシュ配って「お願いしま~す」って、渡した相手がスカート短すぎで指導した女子だなんて悪夢でしょ。

 

 アキバのバイトでさ、「お帰りなさいませ、ご主人様~」とか言って、それがポリコウの関係者! ゲシュタルト崩壊してしまうっちゅうの!

 バイトの範疇にアキバのメイドが入ってるのがどうかと思うけど、二年前までは現役のメイドだったし。

 しかし、やったバイトしか浮かんでこないっちゅうのは、二十四歳にして脳みそが縮み始めてるとか?

 ま、そういう心配を三か月はしなくていいというのはラッキーなわけさ。

 

  でもなあ……そのために、受験勉強が疎かになる。いやいや、疎かにする気持ちなんて、これっぱかしもないんだけど、やっぱ、時間も気持ちも仕事に取られてしまうっしょ。

 受験勉強と言うのはね、東京都の教員採用試験なんよ。

 二十五歳までに合格しないと実家に呼び戻される。それだけは、絶対避けねばならぬだ。 うう~二律背反じゃあ。

 

   安倍先生

 

   誰か呼んだ? この声、こないだの……。

 

 目玉だけ動かして声の主を探す。ケロだかケルだかの黒犬は居ない……。

 

「こっちこっち」

 

 目をあげると、なんと太田道灌の銅像の馬が喋っている!

「銅像を見上げていれば、それほど不自然ではないでしょう」

 え、こないだのは不自然? て、誰かに見られた?

「明日、学校で二つの事を依頼されます。必ず引き受けてください。マヂカのためばかりではなく、先生ご自身のためでもあります。よろしいですね、二つの頼まれごとです」

「って、どんな?」

「では、よろしく……」

 

  馬は、一瞬で銅像に戻ってしまった。

 

 えと、喋ってる間も銅像なんだけど、憑りついているケロケロだかが居なくなったことは分かるんだ。

 えと、まあ、そういう体質なんだ💦

 で、頼まれごとってなんだろう……。

 

 

 

 ☆ 主な登場人物

マチカ(マヂカ)     魔法少女としてはマヂカ、日暮里高校2年B組の渡辺真智香として72年ぶりに復活

ユリ  要海友里     マチカのクラスメート

ノンコ 野々村典子    マチカのクラスメート

清美  藤本清美     マチカのクラスメート

安倍晴美         日暮里高校の講師

ケルベロス        魔王の秘書 魔法少女世話係 黒犬の姿だがいろいろ変身して現れる

田中先生 田中実     2年B組の担任

 

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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・11『八尾市立中河内中学校』

2019-03-26 07:02:45 | 小説6

ひょいと自転車に乗って・11 『八尾市立中河内中学校』        
 

 

 ちょっと、あかんがな!
 

 自転車の手入れしていたら、畑中のオバチャンの大きな声がした。  

 畑中さんちは、外環沿いに並ぶうちのお隣りさん。

 大きな植木屋さんをやっていて、敷地はうちよりも広い。  

 ゲート(うちは門ではなくゲートという)を出てみると、オバチャンが『畑中植木店』と荷台に書かれた軽トラの前で仁王立ちになっていた。運転席には悪戯を見つけられた子どものような顔をしたオッチャンがハンドルを握っている。
 

「どうかしたんですか!?」
 

 お隣りさんの一大事に、わたしは頭のてっぺんから声が出た。

「みっちゃん聞いてよ、うちのオッサンが車の運転するて言いよんねん!」

「は、はあ」

 植木屋さんなんだから、車にだって乗るだろう……困惑していると、オバチャンのもっともな怒りの声が続いた。

 「先月免許返納したとこやねんよ!」
 

 脳みそがスパークした。
 

 運転免許を返納するのは、お年寄りだ。それも、ブレーキとアクセルを踏み間違ったりのリスクが大きいチョーお年寄り。  畑中さんのオッチャンもオバチャンも、まだそんな歳じゃないと思っていた。  

 でも、いまの言葉を聞いて、二人をマジマジと見ると、意外に歳を取っているようにも見えてきた。  

 たとえばディズニーのCGなどで、キャラが一気に老けてしまうような感じ。

「オッチャン、そんなお歳なんですか?」

 「はいな、天皇陛下の一個うえ」

「え、八十四!?」  

 せいぜい六十代の真ん中くらいに思っていた。二人とも威勢がいいので見誤っていたんだ。

「中河内中学、ほんそこやで!」

「遠い近いの問題やない!」  

 オバチャンの言う通りだ、無免許では一メートルだって走っちゃいけない。
 

 冷静になって訳を聞くと、こういうことだった。
 

 朝、職人さんたちが中河内中学の植え込みの仕事に行ったんだけど、お弁当を忘れてしまった。 それで、オッチャンが使い慣れた軽トラで届けようとしてトラブっているのだった。

「あ、あのー、だったら、わたしが届けましょうか?」  

 中学だから、ごく近所だと思って手を上げた。

「え、でも、ちょっとあるよ……」
 

 ナビで見た限りは遠くなかった。
 

 ナビでは二次元の距離しか分からない。  

 外環の信号を渡るといきなり上り坂。そう、中河内中学は、いつかは行ってみようと思っていた外環状の東側なのだ。  

 いつかというのはいつかなんで、今日のことではない。でも、引き受けたんだから行くっきゃない。  

 四人分のお弁当は重くはない、ペダルの重さは自分の体重。  

 二百メートルほど行くと交差点。ナビは直進しろと言っているけど、北に曲がる。
 

 東高野街道だ……!
 

 大坂夏の陣では、この道を北から徳川の軍勢が攻め上ってきて、八尾一帯で合戦になっている。真田丸の最終回で言っていた。  

 そーだ、ここから西に向いたら大正飛行場の府道21号線で、その南に木村重成のお墓があるんだ。

 数少ない八尾の地理的知識が3Dになっていく。  

 信貴線の低いガードを潜ると、田畑が目立つ。よく見ると目立つってほどじゃないんだけど、珍しいので目立つと感じてしまう。 ミキハウスの本社が近所にあるみたい。でも、うっかり立ち寄ったら、肝心の目的地に戻れる自信が無い。 中河内中学は、もうすぐだ。
 

 え……ないよ。
 

 大きな高校の建物は見えるんだけど、中学校らしきものが見えない。  

 公立学校というのは、どこでも似たような建物と規模で、近くにくれば分かるもんだ。 わたしは地図に弱い方だけど、こんなにトチ狂ってしまうことはない。 わたしは高校を中心にグルグル回った。
 

 パオーン!
 

 クラクションに脅かされて道路脇に寄った。  

 幸い、なにかの入り口になっていて、幅四メートルほどの門扉の前は五坪ほどの車寄せで、身を寄せるには十分だ。
 え?
 何気に看板を見てビックリした。
 八尾市立中河内中学 と黒地に金文字が光っている。
 

 え~~~~~ここぉ?
 

 なんか常識を超えている。 四メートル幅の門の向こうは、その幅のまま七十メートルほどの下り坂。下り坂の突き当りが……さっきの高校の校舎の横っ面。
 

 おずおずと自転車を押して坂を下る。  

 校舎の横っ面の向こう、植え込みの中で、見覚えのある植木職人さんたちが仕事をしている。 ミッションコンプリートだ。
 

 職人さんたちに聞いて分かった。  

 中河内中学は、中河内小学校と合併になり小中一貫校になって、この春に開校したばかり。  

 元々は、ここにあった府立高校の敷地と校舎をそのまま使っているので、並の中学校を思い浮かべるとビックリする。  

 おそらく日本中にここだけだろう、長細くて下り坂になってる入り口は、府立高校として建てられた時、正門と考えていた土地が買収できなかったために、変則的な形になってしまったということらしい。  

 だけど、高安山を仰ぎ見るロケーションは、なんだか奈良の郊外みたいで、探検のし甲斐がありそう。
 

 ちょっとワクワクしてきたよ。 

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・11(促成魔女初級講座・実戦編・1)

2019-03-26 06:40:37 | 小説4

秘録エロイムエッサイム・11 (促成魔女初級講座・実戦編・1)
 

 

 気づくと、真っ青な空があった。
 

 真由は、どこかで見たことがある空だと思った。東京にはない、真っ青で密度の高い光に満ちた空。

「体の軸線が90度ずれてる。直して」  

 清明の声が斜めから聞こえてきた。ゲーム機のコントローラーが一瞬頭に浮かび、R3のグリグリを1/4回転させた。 目の前にでっかいシーサーの顔があった。
 

 思い出した。中学の修学旅行で来た沖縄は那覇の国際通りだ。
 

「瞬間移動には、すぐに慣れるよ。移動の直前に移動する場所のイメージが浮かぶようになる。ボクが手助けしたけど、初めての瞬間移動にしては上出来だ」

「どうして、那覇なんですか?」  

 国際通りの歩道を歩きながら、真由は清明に聞いた。

「実戦訓練には、ちょうどいいからさ。まあ、全部歩いても一マイル。歩いて馴染んでみようか」

「武蔵さんと、ハチは?」

「武蔵さんは、基本的には自分が行ったところにしか現れることができない。沖縄には来たことがないからね。連れてこようと思ったら『五輪書』を持っていなければできない。それに初級の実戦だから、ボクでも十分だ。ハチは君が見たシーサーに化けている。邪魔が入らないようにね」
 

 三十分ほどかけて、国際通りの端から端まで歩いてみた。真由はすっかり旅行気分になっていた。
 

「なにか気づいたかい?」

「え、あ、すっかり旅行気分になっちゃって……すみません」

「ハハ、それぐらいでいいよ。武蔵さんの座っている姿でも気づいただろう。本当の剣客は、普段はごく普通の姿勢がいいだけのオジサンだ。いつも殺気立っているのは初心者だよ……言った尻から緊張する。リラックス、リラックス」

 そう言われると、真由はすぐにリラックスした。国際通りが素晴らしいのか、真由の才能なのかはよくわからない。

「で、気づいた?」

 清明は、ニヤニヤしながら、もう一度聞いた。はた目には兄妹か若いアベックの旅行者にしか見えない。二人は完全に国際通りの風景の中に溶け込んでいた。

「えと……よくわかんないです」

「正直でけっこう。通行人の人たちをよく見てごらん。微妙に色の薄い人たちがいるだろう……」  

 真由はウィンドウショッピングの感じで見渡した。

「分かりました、あの学生風のグループなんか、発色の悪いプリンターで印刷したみたいです」

「よし、それが分かったら裏世界に変換。R3ボタンを押し込んで」

 コントローラーをイメージしたのは、ほんの一瞬だった。

「どうだい、なにか変っただろう?」

「……通行人が減っちゃった」

「それでいい。ボクも真由も、あいつらといっしょに裏世界に入り込めた」

「裏世界って……?」

「現実と変わらない世界なんだけど、その道の者だけで戦うダンジョンみたいなもの。現実の人間は、みんな排除してある。きっかけが来たと思ったら、ポケットの中の式神をまき散らして」
 

 きっかけは、直ぐにやってきた。さっきの学生風たちが、違和感を感じてキョロキョロし始めた。
 

「今だ!」  

 清明に言われると同時に、真由は、ポケットの中の紙屑のようなものをまき散らした……!

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高校ライトノベル・時かける少女・49『女子高生怪盗ミナコ・15』

2019-03-26 06:18:41 | 時かける少女

 

時かける少女・49  『女子高生怪盗ミナコ・15』  

 「大和発進ヨーイ!」爺ちゃんの沖田艦長のような声が響いた……。
 

「各開口部、ハッチ閉鎖完了……出力100。乾ドック注水」  水の無かったドックにナイアガラの滝を思わせるような勢いで注水が始まった。五分ほどで大和は、艦橋の最上部まで水に漬かった。 「ロック外せ。ドック隔壁解放、微速前進、ヨーソロ……」
 

 大和は、かつて在りし日の姿のまま、浦安の海底ドッグから浮上すると、東京湾を15ノットの速度で羽田沖を目指した。  行き交う船や、沿岸の人々が驚異の眼差しで、見つめる中、大和は羽田沖に近づいた。
 

「取り舵30度、主砲左舷90度、仰角40度祝砲ヨーイ!」

 3000トンもある主砲三基九門が音もなく旋回し仰角をかけていく。

「主砲、打ち方ヨーシ!」  

 副長のフサコが、祝砲の準備完了を伝える。

「祝砲、撃ち方、始め!」
 

 轟々と三基九門の主砲から、21発の祝砲が放たれ、その筒音は東京中に、響き渡った。
 

「水上走行止め、方位そのまま、上昇角15、微速飛行20ノット。発進!」

 大和は、アニメのヤマトのようにロケット噴射をすることもなく、ただ艦体から大量の海水をしたたらせ、四つのスクリューをブーンと唸らせて、銀座通りの上空をゆるゆると15度の上昇角で飛行、一丁目上空で上昇角を30度にし、亜音速で成層圏を目指した。
 

 ミナコは、放心状態になった。無意識の奥底で、ミナコの本来の湊子の意識が疼いたのだ。しかし、それは、ほんの瞬間で、ミナコはミナコとしての疑問を祖父にぶつけた。
 

「それで、この大和は、何をしにいくの?」
 

 艦橋にいた全員がズッコケた。

「艦長、この子達には、まだ説明されていなかったのですか?」  

 副長のフサコが、いささか呆れた顔で言った。

「いずれ分かるだろうと思ってな……わしたちは、ミナコたちがオッサン達のクレジットカードのスキャニングをやったのと似たようなことをやりに行くんだ」
「やっぱり、あくまでもドロボー稼業の延長なんですのね!?」
 ミナミが、素直に喜んだ。

「でも、この大がかりでドハデな出発は、並の仕事じゃないね……」

「今に分かる。それより、二人には、この船の仕事に慣れてもらおう。ミナコは右舷の緑のシートに、ミナミは左舷の赤いシートに座りなさい」
 

 言われたように座ると、上から32インチほどのモニターが降りてきて、前からは、プレステのコントローラーに似た管制機が出てきた。

「セレクトボタンを押すと、高角砲と機銃に切り替わる。三回押せば高角砲と機銃の同時操作になる。モニターに赤やら、薄いピンクの▽が出ているだろう。それが、敵のマークだ。照準はオートだが、左右の第三ボタンでマニュアル操作もできる。慣れてくれば、その方が臨機応変な対応ができる。一応チュートリアルをやっておく」
 モニターの▽が▼に変わった。
「戦闘モードだ、照準の合った敵から撃っていけ。副長、マニュアル最大戦速!」  

 目まぐるしく▼が現れては後方に流れていく。ミナコもミナミも最初からマニュアルで、▼を消滅させていった。発射が○ボタンであることは説明をうけずとも分かった。40分ほどかけて、地球を一周する間に▼マークの全てを撃破した。
 

「ヤッター!」

「でも、艦長、今の▼はなんでしたの?」

「世界中の軍事衛星と、機能を停止した衛星。つまり宇宙のゴミ掃除だ。で、敵を呼び寄せるデモンストレーションでもある」 「艦長、敵の通信です。メインモニターに出します」  

 フサコ副長が言うと、砲手用モニターの間に、50インチほどのメインモニターが現れた。

――蟹江さん。またお会いすることになりましたね――

 モニターに現れたのは、ブロンドの長い髪の美しい女性だった……。

 

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