大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルベスト『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・2』

2016-10-30 07:00:00 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
『俺の従妹がこんなに可愛いわけがない・2』


 従妹の由香里はブサイクだった。

 だった……に力が籠もる。過去形なんだ。いや、過去完了だ。ベテランのMCに質問される由香里は、まっすぐにMCに顔を向け、笑顔を絶やさず、考えるときは少し首をかしげる。まったくもって可愛い。

 俺の知っている由香里は、下ぶくれの不細工な輪郭の中で目だけが大きく、その目は、いつも怯えて涙で潤んでいた。ちょっと失敗すると大泣きになり、涙の他に水ばなとヨダレがいっしょになり、俺は、いつもティッシュで拭いてやったもんだ。そして話をするときに人の顔が見られず、いつも俯いてばかりいた。
「いいか由香里、そんなんじゃ学校行っても友達もできないでいじめられっ子になっちまうよ。人と話すときは、キチンと相手の顔を見て、少しニッコリするぐらいでやるの。いい、こんなふうにね」
 俺は、そのころ好きだったMを想像し、Mに話しかけるように言った。

「お早う、どう、昨日の宿題できた? ボク、最後の問題がとけなくってさ。出来てるんだったら……あ、答を教えてほしいんじゃないの。ヒント聞かせてもらったら自分でやるから……あ、そう。どうもありがとう。そうか、これは距離から考えちゃダメなんだ。時間なんだね。うん考える!」

 てな感じで、Mをエアー友達にして、由香里に見せてやった。
「すごい、薫ねえちゃん、ほんとに人がいるみたいに話すんだ。由香里もやってみた~い!」
 で、由香里はやってみるんだけど、目の前に人がいると思っただけで、顔が真っ赤になり、声がしょぼくなってしまう。ま、そんな子だった。

「由香里さんは、子どもの頃はとてもはにかみやさんだったってうかがいましたけど」
 MCが聞く。
「はい。自分に自信のない子だったんで、あ、今も自信なんてないんですけどね」
「やっぱ、AKRできたえられたんですか?」
「はい、それもありますけど、従姉のお姉ちゃんに鍛えられたってか、憧れてて、真似してばかりいたんです。とってもマニッシュでかっこいい美人のお姉ちゃんで、あ、今度の撮影H県のホール使ってやるんで、久方ぶりにお姉ちゃんのところに泊まって、撮影の現場に通おうかと思ってるんです」

 ゲ……由香里のやつがうちに泊まるって!

「で、今度は初の映画出演で張り切ってるのよね?」
「ええ、まだ研究生に毛の生えたようなものなんですけど、プロディユーさんが『由香里クンみたいなのが、ひねくれたら、どんな感じになるか。そのイメチェンぶりに期待』とおっしゃって。あたしも芸の幅をひろげるためにアタックです!」

 と、いうわけで、由香里が家に泊まることになった。

「すごい。由香里ちゃんが来るんだ!」
 オカンは舞い上がって叔母さんちに電話。

 俺は悩んだ。いったいどんな風に接したらいいんだ!?

 とりあえず由香里が出る映画が『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』というタイトルで、由香里の役は、ラスト寸前まで主人公のはるかをいじめる東亜美という役ということを知り、駅前の書店に原作本を買いにいった……。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・78『2GUNS』

2016-10-30 06:34:33 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・78
『2GUNS』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ

これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


本来 昨日、これと“42”を見る予定でしたが、朝っぱらから大頭痛、今日に延ばして“42”は堪忍してもらいました。
 体調万全とは行かないものの、これ以上ワガママ(本来、この2本プラス“パーシー・ジャクソン2”“SPEC”をオファーされとりましたが、どちらも蹴ってますもんで)は、なんぼなんでも言えません〓

 重い頭を支えながら映画館に入ったのですが……ゲンキンなもんです、映画が面白かったので重い頭も軽くなって、現状 頭痛の再発も無し……いやはや、我ながら……〓
 さて、今作 ド派手なクライム・アクションです。原作小説があるかと思っていたのですが、またもやグラフィック・ノベル(漫画)が原作でした。
 アメコミと言えば派手なコスチュームヒーロー物しか無いイメージが強いのですが、現在 極少数ながら純然たる犯罪スリラーも存在するようです。
 元々、20世紀初頭から50年代に猖獗を極めたパルプフィクション(安物の探偵小説やSF、ポルノ)の影響下で誕生していますから、かつては様々なジャンルの作品が有りました。第二次大戦後 一気に広がったのですが、60年代に入る直前、「子供に悪影響を与える」ってんで焚書され、以降 勧善懲悪以外のコミックは一掃されてしまいました。
 これは、当のアメリカ人も認めていますが、アメリカンの単純お馬鹿の証明です。なんせ、中世ヨーロッパで焼かれた魔女容疑者よりも近代から現在に至るアメリカで魔女狩りに会った犠牲者の方が圧倒的に多いのですから、何をか言わんやであります。
 それはさておき、現在のアメコミに復活し始めたサスペンス/スリラー物は、かなり上質な作品が多いらしく(全く読んでません、なんせ1冊 高いっすから)同種の小説に引けを取らないそうであります。本作も小学館から2千円ほどで発刊されてるそうですから、興味のある向きはお手にしてみて下さい……尚、購入されたら是非ご一報を、貸してね〓

 漸く映画です。本作の目玉は、入り組んだ人間/組織関係の クンズホズレツストーリーですが、デンゼル・ワシントンがこの所定期的に取り組む悪役(トレーニングデイ/デンジャラスラン)と マーク・ウォールバークが取り組むコメディタッチ(アザーガイズ/テッド)が組み合わさっているってのが最大目玉です。面白い映画ってのは、脚本の出来、編集の巧みさなんかと同じように 何らかの“化学変化”が起きています。本作の化学変化は、まさに主役の二人が引き起こしているのです。  フリーランスの悪党ボビー(ワシントン)とスティグ(ウォールバーク)は最近コンビを組んだ。メキシコの麻薬ディーラー/パピ(E・J・オルモス/ブレードランナーでデッカードを連れにくる刑事……あの時はスリムだったのに)に偽造パスポートと引き換えにコークを貰う予定が現金を渡される、しかも もう一人組んでいた悪党は殺されて首に成っている。腹いせに(?)パピの貸金庫の300万$を狙って銀行強盗、犯行は見事に成功するが、金庫にあったのはなんと4300万$!! この金を巡ってDEA/CIA/NAVY/マフィアが絡んで二転三転、一体誰の金なのか、信じられるのは誰? 元々ボビーもスティグも何者? 謎は少しずつ明かされていくが、誰が信頼出来るのか、全貌を知る者は誰なのか、こいつが全く解らない。解らなきゃ全部集めてガラガラポンてなもんで大乱闘になる訳ですが、はて 誰が生き残って大金を手にするのか。
 ラスト、さすがの大迫力なのですが……これって、どこかで見たような……と思ったら「マチェーテ/R・ロドリゲス監督、来年2がある)」のラストにムードがそっくり。まぁ、本作の方がスマートですがね。
 他の共演者も多彩で、P・パットン(Mi:I)B・パクストン(楽しそうに悪役やってます)分かりにくいのがジェームス・マースデン、この人「Xメン」でサイクロップスをやっていた俳優さん、準主役なのにサングラスをしているか目をつぶっているか、さもなきゃ目から光線を発しているかで素顔が判らなかった、漸くメジャー作品で素顔オープン、なかなかのハンドサムであります。
 なかなか容赦の無い殺人シーンの連続で 「カタルシス」ってのとはちがいますが、これもアメリカ映画の一つのスタイル、子供に悪影響……なんぞと思うなら、大人だけで見に行って、くれぐれもスクリーンに放火などなさいませんように。お願い申し上げます。

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