足立直義の丹沢・大山山麓だより

生き物との出会いを楽しみに今日も山麓を歩いています

No. 1688 ~ ミニ観 12月 ~

2019年12月31日 | 植物

観察月日  2019.12.15.晴 14℃

観察場所  厚木市 七沢 (県自然環境保全センター)

 今年最後の観察会だ。暖かいとは言え12月だ。木の葉も落ち、

地上の草も枯れた。アメリカ生まれのモミジバフウも葉を落として

いるが、寒空に、ぼんぼり状の可愛い実をふんだんに付けている。

 「イカルの声がしますよ」とRさん。空へ向かって広げた小枝を追

う様にレンズで探すが、カメラでは限界の距離なので、姿は捉えら

れない。

 湿地に目をやると、焦げ茶色の地面を部分的に緑の葉で覆って

いる植物があるのに驚いた。ここの谷戸には普通にあるネコノメソ

ウなのだが、何故か今まで目には見えていても、脳裏に届いてい

なかったのだ。

 藪の中から、小さな桃色の花が小枝の先に揺れている。ウグイス

カグラで、これからが冬に向かうと言うのに、春を先取りして見せて

くれるのは嬉しい事だ。先月白い小さな花を付けて、ミニ観に来た人

を喜ばせてくれたキッコウハグマだが、名残の花を付けていてくれた。

 コケの上に植物世界の“空飛ぶ円盤”が着陸していた。薄い円盤状

の翼、その中心に実、風を動力として何処まで飛行する。テイカカズ

ラの実も軟着陸していた。こちらは、落下傘だ。

 ミニ観終了直後、呼ばれて行くと、ノウサギの糞が、ここにも、あそ

こにもと。青草のいい匂いが。暫く振りで、嬉しくなった

すっかり冬景色のミニ観。

アメリカフウの実が鈴なり。

ネコノメソウの緑。

ウグイスカグラ

キッコウハグマ

ヤマイオイモの実。

テイカカズラ

ノウサギの糞


No. 1687 ~ ベニマシコが来た ~

2019年12月25日 | 野鳥

観察月日  2019.12.13.曇 5℃

観察場所  清川村 宮が瀬

 「ルリビタキの声がするわ」とRさん。双眼鏡で木々の枝先を

探している。私もカメラのレンズを向けて見るが空を覆う雲が

乱反射してまるで墨絵の世界を眺めている様だ。鳥の姿は捉

えたものの黒く潰れて色は見えない。

 「腹の黄色がキレイだったので、ルリビタキの♂だと思うわ」と

双眼鏡で追っていたRさんの呟き。私にはよく解らなかった。

 林道を左から右に、斜めに飛び、ブッシュから突き出たオオイ

タドリの先端近くに止まった。胸の羽毛が黄緑と美しく、暗い茂

みにそこだけ明りを付けた様な、アオジだ。

 山の崩れを止めた石垣の上はオオイタドリが続く。普通は本州

の日本海側を歩くと見掛ける植物で、以前は宮が瀬にはなかっ

た。目立つようになったのは、ダムが出来、沿って走る林道が出

来てからだ。

 アオジは翼の広い種を一枚?づつ摘まみ、時には束ねてくわえ

振り落として食べ、長い時間食事に費やした。

 「このアオジさん、ゆっくり見せてくれて、いい子ね」とは、Rさん

のことば。お陰で私も、ゆっくりカメラに記録する事が出来た。

 10m先に「今日は寒いですね」と親しく挨拶を交わした人がい

て私に手招きをする。そこには、アカマシコの♂と♀が餌を食べて

いるのを教えてくれたのだ。

人は、挨拶一つで、心が通い、友になれる!

やっと カメラで捕まえた ルリビタキ。

「いい子ね」のアオジ。

束をくわえる。

手招き されたそこには。

ナガバノヤブマオの種を 啄ばむ♂。

ベニマシコ ♀。

ツグミ キハダの実を啄ばむ。


No. 1686 ~ 玄倉だより12月 ~

2019年12月23日 | 野生動物

観察月日  2019.12.8.快晴 5℃

観察場所  山北町 玄倉

 朝から雲一つない日本晴れ、元ビジターセンターの温度計は

2℃を指す。主の居なくなった大木には“ケヤキ”と記した樹名

板が付けられている。

 「何か昆虫がいる様ですよ」とRさん。幹と板の間を覗くと、黒

い平たい昆虫が重なり合っているのが見えた。約20匹程のヨ

コズナサシガメの幼虫だ。成長の過程を見守って行きたい。

 台風が大雨をもたらしてから2カ月になろうとするのに、ダム

の水面の色は黄土色だ。ヒドリガモの一群が対岸近くを泳い

でいるのが肉眼でも見える。

 「ダムの奥の水面にオシドリの群れが」誰かが呟いた。「どの

方向なの」の声と共に、皆の双眼鏡の向きが揃った。私もその

姿を捕えようとカメラのレンズを向けて見たが、800mmでは

無理の距離であった。

 その時、遠くで蹄の音が聞えたかと思うと、急に大きくなり、次

の瞬間私の背を掠めた。とっさに振り向くと若いメスジカが走り

去っていた。猟犬に追われているんだ。「可愛そうに」消える様

な声が流れ、それに、私の心も微かに共鳴した。「なぜだろう?」

 橋の中程で、紅葉した山腹をクマタカが勇壮に飛び抜けた。

西丹沢玄倉は、自然の姿を見せ、考えさせる課題を与える所だ。

ケヤキの幹に樹名板。

ヨコズナサシガメ

ダム

若ジカ が追われて駆け抜けた。

クマタカが勇壮に飛び抜けた。

ヒドリガモ。

今日の仲間。


No. 1685 ~ 平年より遅い紅葉 ~

2019年12月17日 | 植物

観察月日  2019.12.3.晴 10℃

観察場所  厚木市 不動尻

 「今年は各地の紅葉が1週間程遅れている」と言われているので、

「山の神沢を行く林道の終点〝不動尻“でも紅葉が見られるのでは

ないか」と急遽入ってみる事にした。

 広沢寺の駐車場に車を止め、林道を行くと、マス釣り場があり川岸

から伸びているイロハモミジは真赤に色付いている。やがて弁天の

森への道と別れ進むと、女性だけの山岳会“エーデルワイス・クラブ

”を創立した坂倉登喜子さんの本「関東周辺、山と地酒の旅」の中に

ある、“鐘が岳を背景に建つ茅葺き屋根の小屋”の写真が、風景とし

て広がっている。ただし、過ぎた時間は埋める事は出来ず屋根はトタ

ンに変わっているが。

 山の神隧道前で以前を思い起しながら、“とらや”の羊羹を食べて小

休止。隧道を潜り抜けると尚も視界は広がり、川筋は谷太郎川となり、

遥か底から川音が聞こえて来る。

 目の前は三峰山が造る広大な壁、赤と黄金の色で塗り潰されている。

赤はイロハモミジ、では黄金色は?あたりを探すとコナラが黄金に輝い

ていた。

 「緑が何かと思ったら、カントウミヤマカタバミだわ、12月なのに、元気

だわ」とRさんがしゃがみ込んだ。高木の枝を絡めて降りて来る長い蔓に

大きめの赤い実、アズマイバラを避けながら、帰路を急いだ。

不動尻の紅葉を見たい。

三峰山の山は 紅葉真盛り。

 

赤は イロハモミジ。

黄金は コナラ。

台風の被害。

ミヤマカタバミ。

アズマイバラ。

ほおじろ 。


No.1684 ~ ウリノキの冬芽 ~

2019年12月14日 | 植物

観察月日  2019.12. 3. 晴 10℃

観察場所  厚木市 不動尻

 「この木、“ウリノキ”ですよね」先を歩いていたRさんが立ち止

まって待っていた。

そこは、不動尻を少し下った所で、遥か下から山の神沢の渓流

の音が昇って来る。崩れ落ちそうな林道の脇に、なよなよとした

幹が何本か立ち、幹から水平方向に、何本もの枝がくねくねと四

方に張り出している。

“ウリノキ”の名前の由来の様に、枝先や脇にウリの形をした大きく

、薄い、葉を付けていれば、何の迷いもなく“ウリノキ”と解るのだ

が、葉を落とした今になっては周囲の中小木に混ざって目立たない。  

 山の神沢沿いの林道は幾度も歩いているが、2016年6月10日

に歩いた時は、木からは考え難い、清楚で、寂しげな花をつけてい

た。その印象は私の頭の中の記憶に焼き付いている。

 だが、Rさんが「この木“ウリノキ”ですか」と疑問を投じたのは、枝

先の冬芽の形が特徴的であった事から来ている事は、私にはすぐ

解った。

 「きっと、冬芽が出来るまで、葉柄の付け根が包む様にして守って

いるんだよ」と私が言うと、Rさんは足元の落葉の中から“ウリノキ”の

葉を拾い上げ、葉柄の元を冬芽に被せて見せた。

 日本に自生しないスズカケノキ科の植物、遠く離れた“ウリノキ”が

似た冬芽の造りを持っている。自然は、どこか不思議なものを私達

の前に見せる。

「ウリノキ ですよね」

2016.6.10.のウリノキ。

花。

枝先の 冬芽。

葉柄の付け根。

枝先に残った 葉一枚。