足立直義の丹沢・大山山麓だより

生き物との出会いを楽しみに今日も山麓を歩いています

No1240 ~オナガアゲハ の メカ・パーツ?~

2014年05月31日 | 昆虫

観 察 月 日  2014.5.29 晴 28℃

観 察 場 所  伊勢原市 仁ヶ久保林道

林道傍の草地は ノアザミの最盛期だ。

アゲハの種類が次々にやって来る。

ジャコウアゲハの♀が吸蜜に。

2週間前には見なかった、カラスアゲハの♂がやって来た。 私はそれらをカメラで追う。

オナガアゲハ♀が吸蜜にやって来た。カメラを覗いたその時私は「アッ!」と声を上げた。

鳥の嘴にでも挟まれたのか、翅の傷みがひどすぎる。それでも懸命に蜜を吸う。

左の後翅は根元から千切られている。

「航空機だったら 墜落だ!」私は真面目に呟いた。

どういして こんな事が可能なんだ。

 

 ノアザミの花にアゲハの種類が次々と吸蜜にやって来る。

その光景は二週間前と似ているが、ジャコウアゲハもオナガ

アゲハも♂から♀へと移行している。その♀を見ると、翅が切

れたり鱗粉が剝げたり傷みの激しい個体が目立つ。前回(14日)

来た時には♀は1匹も見なかったので、その後に羽化誕生し

1週間程は過ぎた個体なのだろう。

 アゲハの種類の寿命(羽化してから死ぬまで)は1週間から

10日位だ。その間に相手を見つけ(見つけられ)、交尾をし、

産卵し、遺伝子を次の代へと繋いで行かなければならない。

それには自分のストローに合った花を見付け吸蜜し、活動の

エネルギーを得なくてはならない。

 ノアザミの花に来ているオナガアゲハの♀をレンズで捕え、

ピントを合わせて私は驚いた。右前羽は大きく破れ、左前羽も

傷み、それどころか左後羽は完全に欠損しているのだ。それな

のに左程空気に押される事もなく、飛翔をコントロールしている。

 もしも航空機であったならどうであろうか。かっての日航機の金

属疲労ではないが、大変な事故に繋がる。航空機は多くの部品

で作られ、一つのパーツは対応する機能を持ち、故障時には交

換しなければ飛行は出来ない。ところがアゲハを作り上げている

のは、生命という部品で、一つのパーツが一つの機能を持つので

はなく、互いに協調し、補完し合って、共同作業をしているのだ。

 オナガアゲハ♀の飛翔から、生命のすばらしさを感じる事

出来た。

 

 


No.1239 ~ ヤマトシリアゲ の 求愛  ~

2014年05月27日 | 昆虫

観 察 月 日  2014.5.14 晴 27℃

観 察 場 所  伊勢原市 仁ヶ久保林道

 ミニ観の折、イヌスギナの群落の中でヤマトシリアゲの配偶行動

が見られた。と、するりと書いたのであるが、参加者の人達はその

場所に立ち止まり、イヌスギナが茂る中を覗き込みそれぞれが何

やら呟いている事から、「昆虫の仲間である事は推察しているが、

何がどうしているのか見当がつかない」様子であった。

 チョウとかバッタとか良く見掛ける昆虫ではその体形のイメージは

記憶の中にあるが、シリアゲムシはその範疇からはみ出し想像し難

いのだろう。

 シリアゲムシの雄は腹部末端にハサミ(把握器)を持ちサソリをイメ

ージしてしまうが雄の特徴、(雌は腹部の先は細ばる)何やら餌を抱え

ていたらしく、崩れているがヒメギスの幼虫らしい。シリアゲムシの仲間

には、配偶行動に入る前にはプレゼント(求愛給餌)をする事が見られ

る。雄が餌を抱えているのを雌が見つけてやって来たのか、雌が餌を

持っているのを雄が見つけてやって来たのか、今日の場合は解らない

が、雄が腹部を雌の腹部に絡ませ、雌が餌を食べている所を見ると配

偶行動は成立したのだろう。

 配偶行動は、雌が餌を食べている間に行はれるのが必要用件なので、

今回も雄からのプレゼントと言う方がいいのかも知れない。 

 プレゼントは、シリアゲムシの仲間にとって長い時間の中で獲得した行

動様式となったものであろうが、生き物とは面白く、興味深いものである。

イヌスギナの茂み

ヤマトシリアゲ♂

ヤマトシリアゲ♀

配偶行動 解りにくい

左が♂ 右が♀ V字型の形だ

横から見ると 雌が餌を食べている様子が見える。

この時期 ヒメギスの幼虫が多い。

 


No.1238 ~ ムシヒキアブ の 表情 ~

2014年05月24日 | 昆虫

観 察 月 日  2014.5.14 晴 27℃

観 察 場 所  伊勢原市 仁ヶ久保林道

 

 クルミハムシの幼虫が発生しているのを期待して、林道を登っ

て来たが、何故か一匹もいなかった。

 時には大発生し、一本の木の葉の殆どが食べ尽くされ、筋だけ

の事もあるが、今年のオニグルミは健康そのもの、実を付け始め

葉は緑々として空間を埋めている。カメラで若い実を写し、レンズ

を目の前の葉に向けると、葉裏に影を落としたムシヒキアブの一種

が止まっていた。

 大きな目が二つ、頭上には触角が二本、太い吻が突き出している。

眺めていると、どこかユーモラスな顔に見えてきた。その訳は?と頭

を廻らすと、秋祭りにお囃子に合わせて踊る“ひよっとこ”の面に辿り

着いた。時折体を揺する様に動かし、頭も振る。その動きも、どこか

踊りのしぐさを思い出させる。下界を離れて“ぼう・・・・”と見入ってい

ると、昆虫も人間も重なってしまう。

 「虫引き虻」とはいつ,誰が、どうして、名付けたのだろうか。この虫

にぴったりとした名前だ。良く見渡せる葉の上や、石の上に止まり、大

きな複眼で、辺り四方を常に見ている。もしも、複眼の中の個眼を横切

る虫の影が映れば、その方向、位置、速度を計算?し、素早く飛び立

ち捕獲し、体節の膜状部分を狙って鋭い口を突き刺し、体液を吸う恐ろ

しいギャング的存在だ。何か近代の戦争の一場面を見ている様な気

もする。

 日本では72種が、神奈川県では37種が収録されているが、種名は

専門家でないと難しい。

林道からオニグルミ観察。

若い幹には、ヒツジの顔模様が。

実が育ち始めている。

葉の裏に影を落として。

ムシヒキアブの一種だ。

体を揺すったり。

顔を傾げたり。

この複眼の視野に入ったら大変だ。

 


No.1237 ~ ノアザミとジャコウアゲハの戦略 ~

2014年05月23日 | 植物

観 察 月 日  2014.5.14 晴 27℃

観 察 場 所  伊勢原市 仁ヶ久保林道

 林道に沿って狭いながらも草地が続き、背の低い草から抜け出

したノアザミが、明るい林道に向け茎を伸ばしその先端にドーム状

の頭花を付ける。

 陽が当たる明るい草原を道沿いにジャコウアゲハが飛び、ノアザ

ミの上近くに差し掛かると、チョウはためらいもなく花に着陸した。

 翅も体も漆黒色で体側と後翅に真紅の紋模様を並べているのは

雄の印だ。雌は蛹の中で羽化する時間を待つ。ジャコウアゲハは

ドーム状の花に降りたが、その時“ドテッ”と降りはしない。翅と体の

重さに対して足がいかにも細く支える構造になっていない。そこで翅

を羽ばたき浮力をつけ足への負担を和らげる。花の上でゆらゆらさ

せるのも花にとって受粉にプラスする。

 ジャコウアゲハがノアザミの花に降りたのは、蜜というエネルギーを

給油するためだ。その点ジャコウアゲハは17mm程の口吻と言うホ

ースを身に付けているので花の中へ差し込めばいいのだ。が、ノアザ

ミはボランティアの給油スタンドではない。

 ノアザミの頭花は、両性の筒状花の集まりだ。その筒の長さは15mm、

チョウは長い口吻で筒を探し、奥にある蜜腺にまで入れて蜜を吸おうと

すると、その刺激で白い花粉が雌蕊に押し上げられ、筒の外へと湧き上

がって来る。ジャコウアゲハの足や頭は花粉の粒に塗される事になる。

蜜の代価は次のノアザミを探し、花粉を運ぶ輸送料と言う事になるの

だろう。

 林道の傍は、日当たりのいい草地になっている。

草の中から ノアザミの花が抜け出す。

ジャコウアゲハが花に降りた。

思い切り筒状花に口吻を突っ込む。

口吻の刺激で 10秒すると白い花粉が湧き上がってくる。

次の筒状花を探して 蜜を吸う

かくして、花粉でいっぱい。

こちらは、違う種類のアゲハのようだ。

オナガアゲハだが、やっぱり雄だ。後翅の付け根の黄色の紋が その印。

ノアザミとアゲハの仲間は 深い関係。


No.1236 ~ ヤマツツジの咲く山道 ~

2014年05月21日 | 植物

観 察 月 日  2014.5.7 晴 22℃

観 察 場 所  藤野町 鷹取山

 中央線藤野駅で降り、駅の裏手に回り林を背にした人家を

過ぎると山道に入る。道の両側の草地にはハルジオンの花が

続き、ウスバシロチョウが緩やかに飛びながら私達を迎えてく

れた。

 2012年5月にも鷹取山に来ているが、再び訪れたのにはわ

けがある。新緑の林の中にヤマツツジの赤褐色の花が浮き出

ていた。ヤマツツジのトンネルも続き、今まで歩いた山の中では

「ヤマツヅジの綺麗な山」の印象が強かった。ところがパソコン

の画面を見るとヤマツツジが、それほどまでに目立たなく少々

落胆した。

 人間の目は、カメラのレンズとは違い、超広角から中望遠真で、

そしてマクロの機能まで使いこなす。その上脳という画像処理エン

ジンで、山道をヤマツツジの赤褐色に染める事も出来るのだ。今

年は、その事を意識しつつヤマツツジを見ようと思ったのだ。

 歩いてみると、こんなにも沢山のヤマツツジの株があったのかと

再認識をさせられた。ヤマツツジの花の当たり年でもあった様だ。

 「コースに起覆があって楽しい」とI君は言う。ピークになった所は

開けていて、アゲハの仲間が次々に吹き上げられて来る。飛翔が

早く落ち着きがなく撮影には向かない。

 ところが、幸運にもヤマツツジの花に来たのは、日本のチョウの中

でも代表する美麗種のミヤマカラスアゲハであった。

山道へ入ると 期待通りのヤマツツジが!

花の間を潜り抜ける。

ジュウニヒトエの群落が!

山道にチゴユリの可憐な花が続く!

急な登山道も苦にならない。そして幾つかのピークへ。

ピークでは、 アゲハの仲間が 次々と吹上られてくる。 

幸運にも ヤマツツジの花に止まった。

翅を震わせ 体の重さをカバーしながら吸蜜する。

世界のチョウの中でも美麗種 ミヤマサラスアゲハだ。

厳しい冬を越してきたタテハチョウの仲間 ヒオドシチョウ。ヤマツツジの上で陽を浴びる。

まだまだヤマツツジの花は続く。

”ヤマツツジ咲く山道” 満喫したでしょうか?